不確定日記(ほんとうに不確定な日記)
日記を書かなかった日のことは何も覚えていない。本当に何もしていなかった可能性もある。書けば嘘でもその記憶が残るかもしれない。実際、夢日記を細かくつけていたらどの景色が本当の記憶かわからなくなり、夢で見たエスカレーターが本当にあるような気がして駅の中で迷ったことがある。
夜21時時点で覚えている今日したことは、ヨーグルトレーズンを食べすぎたことくらいだ。いくらなんでも食物繊維の摂りすぎだと思う。あとは低気圧の具合でフラフラしていた。
春は行事が多いので明確な古い記憶がよみがえりやすい。沈丁花の香りがすると、高校の入学式に向かう途中で新調したバッグのショルダーの継ぎ目がキイキイ鳴るのが気になったことを、革のにおいで小学校の入学式で着たグレーのワンピースと昇降口前の池の鯉が見たかったのに言い出せなかったことを思い出す。手から甘いにおいがして、美術予備校に漂っていた食パンと炭と石鹸のにおいも思い出す。春の緊張感は、暖かさのせいか、よい思い出としてある。浪人した時も、初日を楽しみにしていた。
思い出すのは初日の緊張感ばかりで、卒業や別れのことはそんなに思わない。私が別れに淡白なのも確かだが、まだ誰も知り合いがいない時のほうが、あたりを観察する余裕があるからかもしれない。夜見た夢も、目覚めてすぐに考えることがあると忘れてしまう。1人でぼんやりしないと覚えていられないものはある。夢、現実、嘘にかかわらず。
そんな奇特な