M12023みたよ

12/24、リアタイでみた。

・ダンビラムーチョ>くらげ>真空ジェシカくらいで笑った。
カベポスターも好きだった。

笑えるかどうかはこちらのコンディションしだいだ。問答無用で笑いの世界にもってくネタも存在するが、そんなネタはそれほどないため、漫才師の演技や視聴者のコンディションの噛み合いで笑えるかどうかが決まる。酔っぱらっているときはしょうもないネタで笑えるし、疲れているときは考えなければいけないネタでは笑えない。

さらにいえば出場順もおおいに影響する。ネタを見続けるうちに、視聴者のコンディションが変化するからだ。前の組のネタや場のあたたまり具合に対応して臨機応変にネタを変えられるのがいちばんいいとショーハショーテンにも書いてある。そのもろもろのコンディションがわたしともっとも噛みあったのがダンビラムーチョとくらげだった。

今年のM1は疲れるネタが多かった。トップバッターの令和ロマンから、曲がり角でぶつかるふたりの学校はどこにあるのか、なぜぶつかったのかという謎を起点に話がすすめられる。カベポスターは短編小説だ。物語のゆくすえを読者は考えてしまう。さや香もヤーレンズも、真剣に見て話を追うという行動を強いる。真空ジェシカも「川北の行動はなんなのか?」という疑問にガクが答えをだす形が多い。
いっぽう、わたしは現代社会を生き、謎を考えたり、話を聞いたりすることに疲れていた。謎なんて考えたくないし、もう人の話も聞きたくないよ……。それがわたしのコンディションだった。

・そんなわがままにパーフェクトに答えてくれたのがダンビラムーチョだった。「アイドル」の伴奏を再現する。そのために費やしたふたりの練習時間や、すべての芸人があこがれるM1で宴会芸のようなネタを披露していること。そのくだらなさの奥行きが、わたしにその日いちばんの笑いをもたらした。なにより何も考えなくても見れる歌は疲れた脳に心地がよかった。

・くらげのネタは31アイスの種類やサンリオキャラの羅列だが、順番がよく考えられていた。定番のベリーベリーストロベリーからはじまり、弾のストックがつきてちょっと考えたときに出てくるナッツトゥユー。こいつらはかんぜんに31をわかっている。それにネタこそ31だが、もっと普遍的な、相手の忘れたものを探るときのあるあるを描くことに成功していた。単語の羅列だけで、かけひきや物語を描くことに成功していた。右の人の表情豊かさに対して、無の表情で「違う」と言い続ける左のギャップもよかった。サンリオキャラや口紅に関してはよくわからなかったが、演技がよかったのでよかった。

・令和ロマンは安心感があった。それが優勝につながったと思う。ユーチューブでは高比良がよくメガネをしていない姿でネタをしていたが、メガネをすることでいい雰囲気がでていたと思う。おもしろいかどうかはさておき、初手から観客を巻き込み、興味をひき、おもしろいことをしそうなオーラを出すことに成功していた。このオーラを出せるとおもしろくなくてもおもしろいことをしてそうに見えるので、勝負に勝てる。ショーハショーテンにもそう書いてある。逆に安心感がなかったのがシシガシラやその他もろもろだった。よく知らない組だと、急に差別的なことを言い出さないか不安だ。ハゲいじりや女性役の危険性はそこにある。令和ロマンは若く、かしこい。ポリコレにも理解がありそう……。その安心感が期待につながった。

・さや香の見せ算は一日、三日と時間が経てば経つほどじわじわとおもしろいネタだった。わたしはこれから足し算や引き算をするたびに見せ算を思い出してしまうだろう。一本目のホームステイも、新山がブラジルに呼びかけるとき、本気でブラジルに呼びかけている感じがよかった。漫才にはマイクと舞台とふたつの体だけで様々な世界を表現する演劇的な側面もある。ホームステイは、舞台に何もないからこそ地球の裏側が見えるネタで、あの瞬間さや香は地球、つまり空間を支配していた。みせ算は四則計算の過去を塗り替え、我々の未来を支配し続けるネタだった。さや香は優勝こそ逃したが、空間と時間を手に入れた。

・いちばん好きなボケはエンジン式スマホだった

グッドボタン!(チャンネル登録もよろしくね)