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Mがパルワールドにハマっている。わたしと一緒にやっているが、そろそろプレイ時間は30時間に到達する。これは異例の事件だ。Mはいままで流行りのゲームに手を出しつつ、すぐに投げ出すということを繰り返してきた。
どうもMは自由度の高いゲームにはフレーム問題を起こすらしく、オープンワールドは特にあいいれないようだった。
そこでなぜパルワールドはこんなに続いたのか聞いたところ、Mはこんなふうに語った。


「わたしは疲れているし、ゲームがそんなに得意じゃない。ポケモンはコマンド式対戦の何が楽しいか分からないし、複雑な戦略に興味がない。ポケモンの数も多すぎて途方にくれてしまう。

アルセウスはオープンワールドに放り出されると何をしていいか分からない。ひとりで移動すると無限に道に迷ってしまう。

ゼルダは操作が複雑で、進行が難しかった。特殊技能が多く、慣れるのに時間が必要。自由度が高い分、思考が必要(日常で疲れ切ってるのにゲームでまで思考したくない) 。

マインクラフトはオープンワールド&マルチプレイという点で優れているが、集合体恐怖症は見るだけで背筋が凍るような見た目をしている(人によってはキャッチーというのはわかる)。

エルデンリングはとても楽しかった。ただ純粋にひとりでやりきるのは難しかったのと道に迷うので、完全マルチプレイ要素があったらなと思ってた。それがパルワールドで叶った」

わたしはエルデンリングをPS4で、Mはパソコンで買った。エルデンリングにはクロスプラットフォームがなく、マルチプレイができなかった。当時Mはひたすらレナラと戦い、倒してゲームクリアとなった。わたしはそばで応援していたが、ひとりで(ときにわたしのうざいアドバイスを聞きながら)戦わなければならなかったMの孤独を思った。

「パルワールドが楽しいと思う点はいくつかある。
オープンワールドは、1人では道に迷うが、マルチなので得意な人に頼ったり任せたりできる。
クラフト要素については、木を切ったり拾ったり、素材を使ってクラフトしたりの要素はゼルダと近いけど、とにかく簡単でチュートリアルも必要がないほどだからよかった。
戦闘は基本殴る、パルが自動で戦う程度で思考も戦略もいらないため疲れていても気軽にできるのがよかった。さらにパルによって多種多様なモーションがあるため見てるだけでも楽しい。
それとパルがある。集めるだけでなく、クラフトを自動で(指示しなくてもAIが近くの作業を把握して動いてくれる)手伝ってくれたり、拠点をパルと一緒に守ったり、乗ったり飛んだり楽しい。

疲れた大人やゲームが苦手な人、またゼルダやポケモン、マインクラフトが合わなかった人にこそおすすめしたいゲームだと思う」

なるほど、と思った。マルチプレイと、煩雑な作業やアクションの救済措置と、パルのキャッチーさ、それらが一体となった設計はよくできている。

「あとめっちゃポケモンでモヤモヤしてた点があって、それはポケモンワールドでのポケモンの立ち位置なんだよね。明らかに使役してるし洗脳してるのに、友達だ!と言い切るのが不自然だし、ポケモン以外の動物が出てこないのにステーキ食べてるのはどうして?と思うし 子供向けコンテンツだからこそ、あえて描写しない、あえて人のエゴに関して問題提起をしない戦略をとってるのは理解できるけど、大人から見たらすごく不自然で残酷な世界じゃん。
モンスターボールに入れて、メイン戦力にならないやつはそれっきり孤独に閉じこめたままで、それでも主人を愛するように洗脳されて…行き場のない放置されたポケモンたち。 ポケモンボールから出してもらえても、戦わせられて瀕死にさせられて… 全てが人のエゴでしかないのに「友達」って言葉で表現されてるのは違和感があったよ。

パルワールドのパルは、人間世界でいう「生き物」すべてに当たるのがリアリティがあって、ペットとして眺めるもよし、働き手として、福利厚生を整える楽しみもあり、時には食べたり殺したり、盾にしたりと人間世界のエゴとリアルを見せてくれるよね…。
大人になると、そのほうが受け入れやすいよ。
私がいろんなゲームに抱えてたしんどさを取り除いて、たのしいところだけを抽出してプラスアルファしてるのと、スッと入ってくる世界観にかわいいパルたち…。

たのしいに決まってるよ」

これは新鮮な視点だった。世間ではパルはポケモンのキャラクターをぱくってることや、ポケモンが育てた世界観を茶化すようなシステムに賛否両論がある。わたしがそれまでに見た議論では、パルワールドを養護する声はあっても、ポケモンを批判する話はなかった。ポケモン世界は、ゲームシステムにいろいろと理由をつけたせいで違和感のある部分も多い。
Mは最近パルたちを屠殺し、内臓を売っている。
でもそれも、ブラックジョークというわけでもなく、現実ではいまこの瞬間にもうしやぶたが殺されているのだ。そのことを考えると、ポケモンとパルワールドを比べたときに感じる生理的嫌悪感は、自分が差別意識に落としていた蓋を剥がされたことによるものなのかもしれない、と思う。

Mはうつ病や胃潰瘍になったパルのケアもよくしている。病気になったパルたちを治すより、新しいパルを捕まえてきたほうが早いよ、と言ってもきかない。ゲームのポケモンは病気にならない。ずっときれいなまま、ひんしになったりなおされたりして、われわれのために戦ってくれる。そんなきれいな世界と、汚れたエゴが見える世界……。
われわれは今一度、動物たちとともだちになることや、彼らを使役することとはいったいどういうことなのか、考え直さなければいけない。

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