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「郵政腐敗 日本型組織の失敗学」藤田知也(著)

・倫理が通用しない職場

 世の中にブラック企業は数多あるのだろうが、この本は旧国営産業である日本郵政が民営化されきらなかった結果苦難に陥り結果としてとんでもない悪疫を組織と顧客にばらまいていたことを告発する憤りなしには読めない一冊だ。

著者の熱量の多さがそうさせるのか私には少々理解に時間のかかるような飛んだ説明もあったが、内容自体は日本郵政内の問題点を幅広く網羅し読者にその腐敗の実態を余すことなく感じさせてくれる。

 日本郵政の失態はどんどんあふれ出ており、これだけの失態をかませば普通の企業であれば倒産ものだが、日本郵政は結局政府系の企業であるがゆえにそれに至らない。だからと言って胡坐をかいている連中が社内にいることは大きな問題だ。

官僚に民間の常識が通用しないことは直近の西村経済再生担当大臣の発言からも明らかだが、これが個人ではなく組織でとなるとその弊害は想像を絶する。

日本郵政の顧客は平気な顔でカモにされ、それを経営陣は隠そうとした例がいくつも紹介されている。民間のブラック企業とは少し毛色の違う庇護されているブラック企業。まさにここに北朝鮮が存在しているといっても過言ではないだろう。

 私はこの本を読むまで日本郵政は小泉政権の方向性のまま民営化されたと勝手に思い込んでいた。なぜならそれがあの当時の選挙で表明された世論であったからだ。

しかし、民主党政権、亀井静香氏の下でその方向は覆っていた。民営化したと思っていた組織はほぼ国営に戻されていたのだ。

結果として官僚色の強い民間企業の常識が通用しない会社となってしまい、間違いは認めない、企業倫理の崩壊といった悪質な環境になってしまった。

題名には「日本型組織の失敗学」とあるが、これはまさにそうで官僚組織は民間経営ができないということをはっきりと日本郵政は日本社会に示したのだ。

日本郵政が誠実な民間企業へと変貌を遂げようと協力した西川善文氏の仕事をよってたかって潰した政治関係者たちこそ今日に至る不名誉な日本を構成している原因なのだろう。

彼らに一市民の気持ちはわからないだろうし、聞く気もない。だから国民は常識では考えられないような政府のわがままに付き合わされるのだ。

・官僚体質を疑え

 無責任な経営陣、自分主義の官僚組織、これが民間企業の顔をしているのが日本郵政であり、その弊害、悪質な行為、顧客無視の非民間企業的姿勢をこの本はあらゆる事件を例にして読者に教えてくれる。読者はここから政府を疑うことを学ばなければいけない。

政府というと議員ばかりに目がいくかもしれないが、結局のところで官僚も加担者だ。なんなら議員に政治の勉強を教えているのが官僚というパターンもある。

権力者は権力を握れるのであれば意地でもそれを手放そうとはしない。なぜならおいしいからだ。国民は彼らのおいしい思いのために犠牲にされてしまう。「ROCK IN JAPAN」は中止だが、医師会は「ゴルフコンペ」をやるそうだ。

まさに権力者の傲慢である。国民にこのような問題点を教示してくれる本は幾多もあるが、まずは日本郵政という悪質な組織から権力者やそれに群がる悪漢共の実態を学び、そして彼らの言葉を疑い、そして抵抗するようになってほしい。


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