先に手を出せ! ー 最後は「科学」と「合理性」
東京ドームにおけるボクシング興行はあのマイクタイソン戦以来実に34年振りという。それもこれも井上選手というスターが出てきたからで、日本ボクシング界も随分苦労してきた。久々に生中継を見たが良い試合だった
派手な逆転KOシーンに目が行きがちだが、筆者が最も感銘を受けたのが1回に逆にダウンを取られたシーン。試合後井上選手が:
今まで一度もダウンを喫した事がなかったのにカウント8まで片膝をついて ”休んでいた” 。まさに "真のプロ" 。咄嗟に出来る事ではない
これは1手で50手先まで読むといわれる将棋の棋士や9回の試合の組み立てを考えるプロ野球の監督にも同じ事が言える。様々なケースを想定して「準備」しておく事が肝要。サッカーでも選手が怪我をしたりレッドカードで退場者が出たり "不測の事態" は起こりうる。1年間の優勝を考えれば ”大きな絵” を描いておく必要もあろう
さて、これを同じ "プロ" の土俵に乗るマーケットに当てはめてみよう
残念。これを3ヶ月前に発信していてくれたら…。果たして総裁は "イメージトレーニング" 出来ていただろうか?
この「はい」が「円安容認」と受け取られ、ドル円が@160円まで突っ走るきっかけとなった。ボクシングに例えれば不用意に出したパンチの死角から強烈なカウンターパンチが飛んで来てダウンを奪われたようなもの。今になって発言が2転3転するのは、冷静に8カウントまで "休む" 事も出来ず慌てて立ち上がってフラフラしている感じ。明らかに「準備不足」
もう「失敗」できない日銀。|損切丸 (note.com) で政治家が怖いのも理解できる。筆者は "リアタイ" でそういう日銀をずっと見てきたが、厳しい事を言えば「準備不足」で金融政策運営に "太い幹" がなかったから。棋士に準えれば、自ら打った1手に対しマーケットがどういう手を打ち返してくるか、 "先を読む力" が問われる
ファンドもトレーダーも "プロ" として「生活」をかけて挑んでくる。「将来価値」を取引しているのだから、起った事態への「事後対処」だけでは市場を制御出来ない。その点は100%確定した事実しか書けないメディアや事件が起きて人が死んだりしないと動かない警察とは全く異なる
プロスポーツもマーケットも "結果" を出すためには重要な3要素がある:
実は日銀も①シナリオ想定はしているのかもしれない。だがそれを実行・決断出来ないのは過去に "結果" を出せなかった事に尽きる。「損切り」ばかりのトレーダーの言う事など誰も聞きはしない。その状況をひっくり返すには "先に手を出せ!" 。どうせやるなら早い方がいいし、待っているだけでは同じ事の繰り返しになる
そして②相手の手口・心理も大事。向こうが「円安」=ドル円を買いたくてウズウズしているのに「はい」はあまりにも不用意。選手交代を間違えて攻め込まれてから「介入」を繰り出しても挽回は難しい。市場心理を考えれば、先に5/8の発言をしてその後「介入」を合わせるのが効果的。それで相手に ”恐怖” を植え付けることが出来る
そして最も大事なのは③科学的分析・合理性。筆者が "太い幹" と指摘したのはこの部分で、特に「AI」市場では様々なデータがプログラムに打ち込まれる。「変数」を変えるには「言葉」ではなく「国債買取減額」「利上げ」等「物理的変化」が必要。 ”ヤルヤル詐欺” は通用しない
大谷選手が凄いホームランをかっ飛ばしているが、そのベースにあるのは科学的トレーニングと精緻なデータ分析。かつての "根性論" だけでは成し得ない領域だ。筆者が野球部在籍中に言われた「練習中に水を飲んではいけない」なんていうのはまさに不合理の塊。極めて「昭和的」だ
*「量」の分析の事は 続・FXの「需給」ー「円買介入」も「利上げ」「テーパリング」も市場の「円」を吸収する効果は同じ|損切丸 (note.com) でも書いたが、「ドル不足」vs 「円余り」の差は圧倒的で、例えば「国債買取」をどこまで減らせば "均衡" に向かうのか、等々精緻な分析が有効
60代の首相と70代の総裁が繰り出す財政・金融政策が「昭和的」なのは仕方がないとしても、もっと "費用対効果" 等「合理性」を示さないと「AI」は説得できない。野球やサッカー、ボクシングがこれだけ国際舞台で成功しているのだから、政治・経済もスポーツのノウハウに学ぶべき点が多々あるのではないか。もう "根性論" だけではやっていけない
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