遂に「ドル売り」転換? ー 怖いのは日銀の "心変わり" (再び)
注目の4月米CPI。指標発表前に既にユーロドルを中心に「ドル売り」に転じていたが、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアベースで前月比の伸びが6カ月ぶりに鈍化。NY FED指数も悪化し恰好の材料となった
これで米国債は短期ゾーンを中心に急伸(金利は低下)。「利下げ」開始時期は9月、ターミナルレート(政策金利の到達点)は@4%まで低下した。 金利の ”着地点” と「中立金利」|損切丸 (note.com) に沿った動きである
こうなると気になるのは "積み上がっているモノ" は何か? -「金利」との比較|損切丸 (note.com) やはり最大のポジションは「キャリートレード」。ドル円 ↓ はもちろん対スイスフランでも「ドル買い」を積み上げていたようなので( ↑ 標題USD/CHF3ヶ月チャート)これらが一斉に解消に動いた可能性がある
財務省の「ドル売介入」で8兆円もの「ドル」を追加で買わされ、「キャリートレード」が積み上がり過ぎてさすがに警戒感も高まってきた。何より日銀が予想より早く「国債買取」を減額し「利上げ」に動きそうな気配。一旦手仕舞いに動いてもおかしくない。FRBに先行してECBも6月に▼0.25%「利下げ」が確実視されており、BoE(英国中銀)も続きそうだ
買われた「ドル」はS&Pやナスダック、あるいはビットコイン(BTC)やWTI(NY原油先物)に流れていたと推定され、その中には当然日本からの「新NISA」「オルカン」(オールカントリーファンド)も含まれる
さて、これらのリスク資産がどう動いてくるか
米国では大統領選の年に株は落ちないと認識されており、今回のFRBによる「利下げ」も選挙対策の一環。まずはNYダウもナスダックも「金利低下」「ドル安」を好感して上げている。BTCも同様だ
ただ「ドル売り」転換が "本筋" なら資金フローは変わってくる
このところ上げ幅が大きかった「独DAX」や「英FT」は「ドル」から「ユーロ」「ポンド」へのフローの変化を想起させる。「円高」になれば「日経平均」に「お金」が戻ってくるかもしれない
「イールドスプレッド」≓ 株配当利回りー10年米国債金利がほぼゼロになってずっと「割高感」が指摘されてきた米国株。それを支えてきたのが「新NISA」でもあり、仮に「円高」転換した時はその動向が注目される
懸念と言えばもう1つ。せっかく「利上げ」気運が高まった日銀が「ドル売り」転換と共に "心変わり" してしまう事。昨年末の「チャレンジ」発言でドル円が@140円まで落ちた時も植田総裁は途端にトーンダウン。結局この一貫性のなさが@160円までの「円安」を生んでしまった
財務省も日銀も出来るなら「利上げ」などしたくない。マーケットは常にこの ”本音” を値踏みする。だから一旦収まった「円売り」も油断するとまた「キャリートレード」がぶり返す。「植田日銀」はずっとこの繰り返し。FRB、ECB同様、「中立金利」≓ @2.0~2.5%に戻す作業に徹して欲しい
「新NISA」といい日銀といい、まさに マーケットは「円」を中心に回っている?|損切丸 (note.com) 。 "過剰流動性の城” 日銀の果たす役割はかつてなく大きい。「量」の面で言えば日銀が保有する600兆円ものJGBをどうやってマーケットに戻すのか。「平時」に戻すなら▼400兆円の圧縮が必要で「円安」是正にも決定的な役割を果たす。もちろん相応に金利は上がる
仮に「円安」→「株安」あるいは「円高」→「株高」が続くなら日銀にとっては「金融正常化」千載一遇のチャンス。人口動態に基づく「人手不足」で世界的「インフレ」が続く中、日本も早く”普通の経済” に戻る必要がある
JGBの暴落を防ぐ意味でも "マグマ" が溜まる前に早め早めの「利上げ」「QT」(量的引締)がベター。年内に+1%「利上げ」、「国債買取」年40兆円程度への減額(←現在年70兆円程度)が望ましい
繰り返しになるが対応が遅れるほど ”コスト” は高くつく。「インフレは一時的」の判断ミスで+0.75% × 3回を含む@5.25%までの「利上げ」を強いられたパウエル議長がいい例。日本もターミナルレートを@3%超にしたくなければ「利上げ」は早い方がいい。それが "金利の常識"
まだまだ「円安」が収まったとは言い切れない。あとは政府・日銀がどこで腹を括るか。アメリカ同様、そのタイミングも「選挙」絡みになりそう。「デフレ脱却宣言」≓「利上げ」→「総選挙」が現政権の狙いなのは明らかで、そう言う意味では日本の政治動向からも目が離せない
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