見出し画像

2024年J2第13節横浜FC-水戸ホーリーホック「穀雨すぎて」


春名のに

ゴールデンウィークだが、すでに汗ばむ初夏の陽気。異常気象かもしれないが、それが何度も繰り返されると異常気象ではなく通常になる。ちょっと前までは25度くらいになって、そろそろ夏かなんて思っていたが今ではこの気温は梅雨を思い浮かべなければならないのだろう。もっといえば、自分より年長の方は25度だと昔は稀に起こるまさしく当時では異常気象だったのかもしれない。春なのに夏日が来るのはもう当たり前になるのかもしれない。

さて、このゲームが動いたのは後半7分だった。水戸GK・春名がパントキックで前線に大きなボールを入れようとしたが、前線に残っていた高橋の背中に当たりルーズボールとなった。ここに加速して飛び込んできたのはカプリーニ。ボールに誰よりも先に触れて自分のボールとすると得意の左足を振りぬいて先制点を横浜にもたらした。ここ数戦はベンチスタートが多く、本人も「いわれたところでベストを尽くす」と言っていたが、やはりスタメンで出たいだろうし、そして結果を残した。
今年のゴールデンウィークはやや変則で、前節は日曜日で今節は金曜日、そして祝日は月曜日とコンディション調整と選手の起用が悩ましいが控えに回っていたカプリーニが、俺がいるんだぞ!と訴え続けるゴール。ルヴァンカップ2回戦でも起死回生の同点ゴールを挙げたのは記憶に新しい。彼を控えにしていた理由を指揮官は口にしないが、これだけ好調な選手を目の前にして次節どうするか。

GKはミスが失点に直結しやすいポジションである。拮抗したゲームになればなるほど、些細なミスが結果に直結する。横浜はそのチャンスを仕留めて優位に立った。
この失点を受けて、水戸はゴールキックを春名に蹴らせずフィールドプレーヤーに蹴らせたのは弱気であることを晒した。これは横浜にとっては好都合だった。ゴールキーパーからのビルドアップが苦しくなり、ディフェンダーが一枚ゴールエリアまで下がることで水戸が本来したかった形ではボールをつなげくなったことを意味していたからだ。

後半先制点を挙げてから横浜は大半の時間で試合を支配した。水戸はビルドアップが苦しくなるとボールはズレ、セカンドボールも奪えなくなる。前半あれだけ横浜を苦しめた左サイドからの攻撃も見られなくなっていった。後半15分、福森が蹴ったコーナーキックを岩武が合わせて横浜が追加点。クロスバーを叩いたボールはゴールに転がった。

盟友との5月3日

どこかでも話題になっていたが、この5月3日は横浜がクラブ創設して初めて三ッ沢で試合を行った日であり、その時の対戦相手が水戸であった。(開幕戦は横浜国際)その時から水戸はズッ友的な友好的な雰囲気があるのだが、徐々に両チームを取り巻く環境も成績も変化してきている。
当初こそ戦績は五分五分だったが、徐々に横浜が数年に1回負けるかどうかという状況で、ダブルスコアでリードしている。前回の敗戦は2018年、その前は2015年、その前は2012年と差ができている。予算を比べたらJ2上位でJ1昇格候補と一般的に見られている横浜は大きく成長した一方で、水戸は一時期アニメとのコラボなどで若いファンを獲得をしていく中でターニングポイントは7位に入った2019年だろう。総得点差で及ばずプレーオフに入れなかった。そして当時の長谷部監督は退任し、活躍していた選手はほかのクラブに羽ばたいていった。そこからチーム成績は徐々に尻すぼみになっていった。
傍から見ていると2019年も2024年も若い選手を育ててチームを強くするサイクルを繰り返しているように見える。横浜が2019年にJ1昇格し、ここ数年はエレベータークラブになりつつあるのとは対照的だ。なぜここまで気にかけているかといえば、水戸、横浜、甲府、そして鳥栖と2000年代初頭のJ2はこのお荷物クラブで下位が構成されることが多かったからだ。そこから甲府、横浜、そして鳥栖とJ1を経験していった中で水戸だけがJ1を経験できていないことを憂いてる。1999年5月3日、25年前三ッ沢で戦った選手の中で現役はもう水戸・本間しかいない。何とか彼と上がってほしい。そしてあの景色を見てもらいたい。

2得点して、勝勢となった中で頭の中をずっと水戸への心配が逡巡していた。このサッカーでは昇格どころか、また昨年のように降格圏に足を突っ込むぞと。若い選手を起用しながら、リーグ戦で育成しながら、さらに毎年何人も移籍金と共に抜けて強化は大変だが、その一方で理想のサッカーだけでは中々勝てない。例えば、このゲームでも失点した後にチームをもう一度奮い立たせるベテラン一人もいない。1失点でも取り返せるぞとならない。横浜の攻撃に謝ってしまう。
J2どころかいまやJ1の選手も監督も育成するクラブ(菅野、木山、秋葉、長谷部)となった水戸。この記事を書いている最中に濱崎監督解任の報。みんな負けたくて負けている訳ではない。選手も監督も、クラブもみんな勝ちたい。でもそうならないのがサッカー界の常。横浜サポーターではあるが、彼らの幸運を祈りたい。残念だが私たちは代わってあげられない。「春なのに ため息また一つ」

ゴールデンウィーク最終日

長崎に敗れたがそれはゴールデンウィーク前の話。秋田、そして水戸に勝って2連勝とし勢いを取り戻した。数字上は岡山を交わして3位浮上。それは喜ばしいが、まだまだ。山根は秋田の地で「3連勝で勝ち点9」をサポーターの前に誓った。最後の一つを約束の場所に取りに行く。

この試合に関していえば、山根のクロスは櫻川の頭にピタリと合わせたり、相手の怪しいところを衝けるようになった。成長を感じるキックである。これまではサイドで運動量豊富に頑張る選手だったが、そこに攻撃の正確性が加わるとさらに良い選手になる。

村田や新井に関して触れると、これまで多かった彼らにパス出したら後はお任せという感じがチームになく、誰かがそばによって選択肢を作ったり、あるいはそこに預けて抜け出すプレーも増えている。ルヴァンカップでの勝利から流れがよくなっている。

この日に限って言えば、和田がディフェンスラインに落ちて一時的に4枚を作りながら、逆サイドのウィングバックの上りを求めはじめ、これは攻撃時には4-1-5とする2022年のシステムの再来を感じさせるものでもあった。これは和田が自分のセンスで判断したものなのか、あるいはチームとして徐々に攻撃の組み立てを変えているのかは興味深い。
守備面では、和田と井上のラインがあまり効果的ではない部分があったり、戻ってきたボニフェイスが前半ミスを繰り返してピンチを作ったことは課題としてはあるが、そこに深くフォーカスする必要があったかは次節わかるだろう。

現状は3位だ。まだ上には2つある。満足はしていない。4月21日諫早での雨を穀雨とするなら5月6日は夏の気配を感じてもよいかも知れない。SUN(3)を一番高くに積む夏を。


この記事が参加している募集

スポーツ観戦記

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?