VCから「その課題はピンと来ないンゴねえ…」と言われた時は、解決したい社会課題と現場課題のどちらかが欠けているか、もしくは説得力が無いのかもよ?ということを文章でまとめる試み
起業したわー、資金調達したいわーという流れで(主にVCの人たちに)ピッチをする時、話に盛り込むべきポイントはなんですかね。
そう、
「顧客の持つ課題」「課題を解決するプロダクト」「目指すビジネス規模」
の3つですわね。
細かい表現は違うかもだけどこの3つのトピックは鉄板だと思うす。
(エンタメ系ビジネスは今回は話の外、ってことで頼む)
これ以外にも伝えるべきことはあるんだけど、最低限この3つは他人(特にVCや投資家)があなたの事業アイディアがイケてるかイケてないかを少ない時間で判断するために絶対必要。
で、僕もありがたいことにスタートアップのピッチを聞かせていただくことがあるのですが、「顧客の課題」がフワッとしすぎてて、
「モチベはわかるんだけどその課題はピンと来ないンゴねえ…」
と感じる時がチラホラあります。
世間のVCや投資家の人たちもそう感じる時がチラホラあるみたい。
なので今回のポエムでは、VCなどの人たちに「その課題はピンと来ないンゴねえ…」と言われた時は、
解決したい社会課題と現場課題のどちらかが欠けているか、もしくは説得力が無いのかもよ?
ということをまとめてみました。
なおタイトル画像は大きな課題から逃げている人類の様子です。
社会課題と現場課題
別に辞書とか起業本に書かれた定義とかではないけど、課題には社会課題と現場課題の2つがあると考えると良いです。
社会課題というのはマクロな課題、国や人類規模の課題、そんな感じ。
・CO2を〇〇年までに××だけ減らさないといけない
・労働人口が〇〇年時点で××万人足りていなくて大変
とかそういう話。でっかいね。
現場課題というのはミクロな課題、実際にお金や人が動く現場の課題、そんな感じ。
・CO2排出量の算出が難しくてそのせいで〇〇の領域のビジネスにおいてはxx円分の機会損失が発生している
・輸出入時の〇〇の作業に関するペーパーワークに担当者一人あたりxx時間かかり、人の確保に余計なコストとしてxx円がかかっている
とかそういう話。切実だね。
(現場で取り扱える数字に落とし込める課題、とも言えるかも)
で、VCなどに対するスタートアップのピッチにおいては、この「社会課題」「現場課題」の2つの視点で説得力のあるストーリーを語ることが重要。
社会課題が必要な理由:
ビジネスが成長した場合の市場の大きさやチームの将来的な売上の大きさ
を聞き手が理解するために必要
現場課題が必要な理由:
顧客がその製品を購入する理由
を聞き手が理解するために必要
社会課題が抜けてると、将来的な売上の大きさを実感できないので
「現場の身近な課題を解決しようとしてるし、製品を購入する顧客は多少いると思うけど、それを積み上げても(投資に見合った)事業規模にならなそう」
と思われる。
現場課題が抜けてると、顧客が製品を買う理由を実感できないので
「社会的に重大な問題を解決しようとしてるし、大きな市場になりそうだけど、実際にこの製品にお金を払う顧客はいなさそう」
と思われる。
社会課題と現場課題、それぞれの話に説得力があり、かつそれら2つが矛盾なく繋がっている状態が理想。
超難しいけどこれが理想。
まあ「社会課題」と「現場課題」という単語の定義にこだわるというより、
・売上規模が将来的に大きくなるロジック
(社会的に大きなニーズがありますよ的な話)
・そのプロダクトが確実に売れるロジック
(直近こういう会社がこれだけ買ってくれる目算が立っているよ的な話)
くらいで考えた方がスッキリするかもね。
定義にこだわらずとも上の2つのロジックを突き詰めると、結果として社会課題と現場課題が無理なく繋がる説得力のあるストーリーになったりする。
ピンと来てもらえる課題に変えるにはどうすればいいのか
実際にスタートアップのピッチを聞いてると、上に挙げた「社会課題」「現場課題」の2つが無理なく繋がっているチームは説得力が高い。
一方で、2つの課題それぞれの説得力が弱かったり、2つが繋がっていないチームの話は「課題がピンと来ない」印象がある。
「プロダクトが確実に売れるロジック(現場課題)」が足りていない場合:
「まず誰に売っていくのか」を明確にした上で想定顧客へのヒアリングや観察、場合によってはPoCをやっていくのが良かったりする。
現場にいる顧客をきちんと理解しましょう、というやつ。
「だから僕のプロダクトをこのお客さんは買うんですよ、実際に買ってもらえてるしね、文句あるか」と言い切れれば最高。
「売上規模が将来的に大きくなるロジック(社会課題)」が足りていない場合:
VCや投資家が大きいお金を投資する領域には人手不足とか気候変動とか治安の悪化とか、時代に応じた何かしらの社会問題があることが多い。
(創薬とかロボティクスとか、先端領域によくある技術課題の話は今回は置いておきます)
もしも「これに取り組みたい!」という大きな社会課題があれば、それは素晴らしいことなのでまずはそれを言語化しましょう。
もしも技術やプロダクトありきでビジネスを検討していて、ちょうどいい社会課題が見つからない場合は、
自分たちと似た技術またはプロダクトを開発するスタートアップの中で、どのような課題に取り組むチームが大きな出資を受けているか
を調べましょう。
そうすることで、自分たちの技術が活かせそうな「皆が解決したがっている重大な社会課題(≒お金を集めやすい社会課題)」が見えてきたりする。
それが目の前のお客さんの現場課題と繋がっていたらラッキー。
もし繋がっていなければ、できれば避けたいけど最初にターゲットとする顧客を変える必要もあるのかもしれない。
似たケースはチラホラあるようだし、ビジネスを想定した課題の設定は技術開発と同様、もしくはそれ以上の産みの苦しみがあったりします。
支援者向けの話:勝手に「ピン」と来てくれよ
ここからはスタートアップ向けというより、VCやアクセラプログラムをはじめとした「支援側」と呼ばれる人達向けの話。
特にエンジニアや研究者が立ち上げるビジネスは「解決する課題」が弱点になることが多いんすよね。
それ本当に課題なんか?その課題どんだけ金になるのよ?みたいな感じですな。
だってしょうがないすよ、良くも悪くも「解決策」に全振りしてやってきてる人たちばかりなんですもんな。
単独で研究開発ができて、筋の良い課題も見つけられて、経営もできるスーパーマンはなかなかいないです。
そうした状況の中で支援側は研究開発だけでなく、課題設定までスタートアップに依存して良いんか?と思いますわね。
このあたりビジネスサイドに近いはずの「支援側」が提供できる知恵は結構あるんじゃないすかね。
「その課題ピンと来ないンゴねえ…」とか言うよりは
・その技術でどんな現場課題を解決できそうなのか
・その現場課題を解決することで、将来的にどんな社会課題の解決に繋がりそうなのか
・最初の一歩としてどんな顧客にアプローチすると良さそうなのか
というのを言った方が良い。
足りてないところを突っ込む時間を活用して、足りてない所を埋める提案をした方が良さそうです。
僕も最近はVCやアクセラプログラムなど「支援側」に立つことが多いので気をつけないといけないすな。
皆さんからのサポートはもれなく焼酎代とkindle積み本代に変換され、そこでの気付きが新たな記事のネタになり皆さんを楽しませることでしょう。多分。