見出し画像

E116: 加齢なる二重まぶた

今日は31日目です

「あんたね、そんなことして、仮にそれで寄ってくる子がいたとして。それであんた、その子と付き合うの? 私は、ありのままの源太を見てくれる子でないと意味がないと思うよ」

これは、私が高校生の時に、私の様子を見かねた母が言った言葉である。

洗面所の前で、テープなどを駆使しながら、自分の目元を、あーでもないこーでもないと頑張っている息子に対して投げかけた言葉である。

今なら、母の言葉に完全同意するのだが…。


あの頃、とにかく憧れたのである。

「二重まぶた」


私は、逆まつ毛がひどくて
いつも眼球が傷つき、眼科で薬をもらっていた。
見かねた母が、ビューラーで
まつ毛の伸ばし方を教えてくれた。
目がかゆくなったり、赤くなったりする状況からは脱することができたけれど…


そうやって、逆まつ毛にならないように頑張っているということは、毎日自分の顔と対面することになるわけで…

毎日見ているうちに、自分の【薄っぺらい顔】がだんだん気になりだした。


オレは、二重まぶたの方が似合うんじゃないか、なんて勝手に思ってしまった…。ないものねだり、というヤツである。


そもそも、高校2年の時、仲の良かった周りの友達がどういう訳か、イケメンだらけだった。
それはある意味、こちらにとって残酷なのである。

なかでも親友のテルアキ(仮名)が、当時大人気だった旧ジャニーズグループのメンバーにそっくりで、全然知らない他校の女の子からキャーキャー言われているのを、ずーっと「真横で」眺めていた…。

(オ、オラも、モテたい!…)
私がそう思ったのも仕方がないことだった。

中学時代のことがあるので、
女の子のキャーキャー声は
相変わらずトラウマで不愉快だったけど、

モテる、というのはどんな気分なんだろう? 
高校生になって初めてそういう方向に興味が向いた。 

「いいなぁ、モテるって…」

冗談めかしてテルアキに言うと、実に意外な答えが返ってきた。

「●●に似てるとか、ジャニーズ系とか、あんな分類されるの、俺嫌いやねん…。俺は俺やし…。俺、自分の顔があんまり好きじゃないねん。源ちゃんみたいな顔の方がええよ」

な、なんですと?
一瞬、アンパンマンみたいに顔を取り替えてもらおうかと思った…。できないけど…

相変わらず僕は家に帰ると、テープとかいろんなものを駆使して、自分のまぶたに貼り付けたり、頭にいろんな整髪剤を塗りたくっては遊んでいた。

そんな様子を呆れたように、母は見ていた。


東京に行ってからは、街行く人のファッションを眺めるようになった。鏡の前にいるより、その方がよっぽど勉強になった。

そうそう
それでいいのよ
顔がどうとか、ヘアスタイルがどうの、よりも
好感を持たれる清潔な格好をするの 
それが一番大事。

母は、ほっとしたように言った…


今から考えたら、どうでもいいことにこだわっていた。
10代の頃って、若さゆえ、少し頭がおかしくなっている時期なのかもしれない。


テルアキとは20歳くらいまで一緒に遊んでいたけど
私が東京に行ってしまったので疎遠になった。


テルアキ、今どうしてるかなぁ…。 
もう成人している娘さんがいるはずだけど…。


この間、そのグループの復活ライブ映像を見ていたら、ふと懐かしくテルアキを思い出した…。

もうすれ違ってもお互い気づかないと思うなぁ笑


ちなみに
私は、45歳を過ぎた頃から
ゆっくり二重まぶたになっていった。
50代の今、見事な二重まぶたである。
あの頃、あんなに憧れた二重まぶたが
勝手に舞い込んできた…。

もちろん、何もいじってはいない…。

「ねぇ、見て見て、俺、二重まぶたになってきたよ」なんて、笑っていたら、

ウチのツレが
クールに微笑みながら、こう言った…。

「あのね、源ちゃん、最近よくご飯こぼすのも、アイドルの名前覚えられないのも、まぶたが二重なのも、全部理由は同じだからね…」


【66日ライラン 31日目】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?