E126: 天国役所の番号札
役所や病院に行くと、番号札を取らされ、結構長い間待たされる。最近は総合病院で待たされることにも慣れたので、かなり長い間待たされても平気になった。
順番が来ても、ちょっと手続きをするとすぐ、
「この書類を持って7番窓口に行ってください」などと、いろんなところを、あちこち行って、それぞれの窓口で、またそれなりの待ち時間が与えられる。
私は、昔からこの時間で、妙な妄想をしてしまう。
「あの世」もこんな感じになっていたら
面白いだろうなぁなんて…。
……………………
事故の方は、1番
老衰の方は、4番
ご病気の方は、2番
番号札を取って、それぞれの窓口にお並びください。
(はて、困ったな、「総合案内」に行くか…)
「あ、あのすみません。病院のベッドで寝ていたら、いつの間にかここへ来てしまったんですけど。そもそも私、死んだんですか?」
「あ、源太様、お疲れ様でした。市民病院にて100歳の天寿を全うされました。4番窓口にお回りください」
「あ、4番…老衰なのねぇ? 私」
慌てて4番窓口に回る。
「源太様、お帰りなさいませ」
「た、ただいまって言うの? こういう時」
「ではこれからお手続きに入らせていただきます」
「て、手続き?」
私があんぐり口を開けている間に、事務員がてきぱきと仕事をし、ナゾの書類を作る。
「では、初期のお手続きが完了しましたので、こちらの書類をお持ちになって、この右手にございますドアを開けて、7階までエレベーターでお上がりください」
「エレベーター?」
「エレベーターを降りられましたら、正面、左右に面談室がございますので、右側6番目【706号室】にお入り下さい。こはるおばあ様(仮名)がお待ちです」
「面談室? え? ばあちゃんが待ってるの⁈」
「意識を失う前、うわごとのようにおっしゃっていたでしょう? ずっと楽しみにお待ちですよ。あ、大丈夫です。エレベーターでお上がりになる間に、源太様は25歳の見た目にお戻りになるので、ご安心ください。ちなみに、こはる様は何歳の設定がご希望ですか?」
「へぇ!選べるんですか? じゃ、じゃあ、どうせなら20歳で!」
「かしこまりました。…あ、大変失礼いたしました。源太様がお生まれになって以降の年齢設定でお願いしますとのことです。こはる様の、48歳から87歳の中からお選びくださいませ」
「あらら、じゃあ、僕が生まれた頃の48歳でお願いします。でもどうやって?」
「ご心配には及びません。エレベーターでお上がりになっている間に、7階に連絡が行くシステムになってございます。7階に着く頃には、48歳のこはる様がお持ちです」
「す、すごいエレベーターシステム!それは日立ですか?それとも東芝? 三菱ですか?」
「詳細についてはお答えしかねます。ご了承ください」
……………………
こんな妄想をボケーっと考えているうちに、やっと順番がやってくる。
「815番の番号札を持ちの方、2番窓口にお越しください」
長い待ち時間、読書に飽きたらこんな妄想はいかがだろうか?
役所とか総合病院とか
果てしなく長い待ち時間。
私はこうやって、時間をつぶしておる…。
雲一つない、晴天の金曜日。
市役所の窓の外を眺めながら、亡き祖母を想う。
【66日ライラン 41日目】
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