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歳時記を旅する50〔薔薇〕中*蔓薔薇や端から埋まる駐車場 

佐野  聰
(平成六年作、『春日』) 
    この童話のバラは作者の妻コンスエロがモデルだという。
    二〇〇〇年に出版されたコンスエロの手記『バラの回想』(香川百合子訳 文芸春秋)には、パイロットでもあったサン=テグジュペリが第二次世界大戦中、予備空軍大尉として招集を受けて、妻と別れるときの言葉が書かれている。
  「…それより僕のネクタイを直しておくれ。君の小さなハンカチをおくれ。そこに僕は『星の王子さま』の続きを書く。物語の終わりに、王子さまはそのハンカチを王女さまにあげるんだ。君はもう棘のあるバラじゃなくなるだろう。いつまでも王子さまを待っている、夢の王女さまになるんだ。その本を君に捧げるよ。…」
    箱根の仙石原の「星の王子さまミュージアム」には、ローズガーデンがある。(※)作者と同名の「サンテグジュペリ」をはじめ、王子さまの愛した赤を基調とするバラを集める。
    句の駐車場、車もまた手入れされた庭の一部のよう。
(岡田 耕)

※星の王子さまミュージアムは、2023年3月31日に閉館しています。

(俳句雑誌『風友』令和六年五月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)



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