今回の記事は過去の記事から続きとなります。是非過去記事よりお読みください。
「もし目指せるのなら、裁判官、検察官、弁護士どれを目指す?」などと質問をいただくことがあります。
傍聴すればするほど、三者への憧れ、尊敬の念は強くなります。だからこそ、「どれも無理」という答えになります。それぞれのプロフェッショナルな信念まで到達する自分の姿というのは、どうやっても思い浮かびません。
あえて言うとしたら、一市民の傍聴人としてのプロフェッショナルを目指すということでしょうか。
ということで、法曹三者の奮闘と被告人本人、そして傍聴人としても色々考えさせられた裁判の最終盤の模様をお届けします。
開廷前~各種申請まで
私が最初に傍聴した第2回公判は傍聴人が7人でした。その後、制裁裁判の報道などで次の回は一気に40~50人に増えました。
しかし、そこから減って、裁判の山場となる証人尋問や被告人質問では、よく見る傍聴マニアの方と、この裁判を熱心に追っている方くらいになりました。
正直、僕も途中で「もういいかな」と思うこともありました。しかし、巡り合わせというのは不思議なもので、普段は裁判の予定でパンパンな私の傍聴スケジュールもこの裁判とはあまりバッティングせず、ここまで見続けることができました。
そして、裁判のクライマックス、検察官の論告求刑、弁護人の最終弁論を行う今回、傍聴席は過去最高の60~70名ほどになりました。空席が僅かにある程度。
本日の大切さを知っているのでしょうが、途中あんま人がいない回もあったのに、みなさんどうやって情報を得たのでしょうか?
「Q.この裁判を何で知りましたか?」というアンケートを取りたいくらいです。
さて、今回も長いので余談も程ほどに。
開廷前からいろいろとバタバタしていました。書記官は書画カメラの動作確認などをしています。今日はなにかしら使うのでしょう。
傍聴席の最前列左側3席は裁判所によって席が確保されていました。
そしてその席には、聴覚に障害を持っていると思われる方が1名、その両脇に補佐の方でしょうか、ホワイトボート、タブレット端末など様々な用具を持って傍聴の準備をされています。
前回の裁判で、手話通訳についての申請がありました。裁判所は用意しないけど、傍聴席に限っては申請次第ということだったので、そういう措置がなされたのでしょう。
何かいろんな物事が一つずつ進んでいる過程を間近で見れて感動します。
被告人と弁護人が入廷します。
とっとこ進む弁護人に対し、被告人はとても足取りが重くとても辛そうにしながら入廷。裁判長からも心配の声をかけられましたが、なんとか続けることに。
しかし時間になっても裁判がなかなか始まりません。弁護人が、自身のパソコンと裁判所のモニターの接続に戸惑っている様子。
書記官が近づいて、「試しに映しますか?」と聞いたら、「今、映してこっちがやりたいのがバレるのは困る」と拒否。
いったい、何が始まるというのか…。
さぁ始まる!といったところで、久々!弁護人から法廷内録音許可の申請がなされました。
いつもの流れかと思ったら、ここからが違いました。
紙を取り出す
弁護側も変わらずであれば、裁判官も変わらずといった対応。
円滑な審理のためにも、なにかしら言えばいいのにとも思うんだけど、そういうことではないのかなぁ。
一方で、弁護側に対しても思うところ。
前回の裁判で録音を望む意見としてはよくわかったんだけど、こちらとしては、公判調書を詳細に仕上げてくれという申請でもいいのでは?という思いにもなったり。
まぁこれまでの経緯で調書の出来に納得がいかないのもあるし、そもそも録音自体は許可がでればできるんだからという主張なのはわかるんだけど。
そして前回に続いて、法廷内手話通訳に関する意見書を提出。
今回、聴覚障害がある方のノートテイカーとして2名、市町村の公費にて支払われることが決まったそう。
いったい、どういう話の流れがあったんだ…。そっちも気になる。
しかし、もし今後、何人か傍聴席に来るようになれば、傍聴席が埋まってしまう可能性があるから、裁判所の費用で取り組んで欲しいと意見。
この辺りはお国感が出てましたね。
民間企業だったら、答える立場になくても、調べて返答しますとなりそうです。裁判自体がそういう場でないというのはわかりますが、やはり少し寂しい気も。
なんとも難しい話ですよね。
傍聴席にたくさん人がいるんだし、その問題に関心がある人もいるから説明して欲しいという思いもあれば、人がたくさんいて説明するなら、人を傍聴席に総動員したらいいのかともなってしまうのは違いますし。
そして、最後に処理しきれていない証拠の対応がありました。
その中で、前々回に出た証拠の日付が見にくかった証拠について、検察官が新しい証拠を追加で提出したようです。
それについて、裁判所は追加という対応にしたのですが、弁護人としては古い証拠の方を棄却決定と、その証拠で証人尋問を行ったことに意見を伝えていました。
最終的には、また退廷命令出す云々の話の流れで、「今日は拘束室も用意しているから、帰れないよ」なんて恐ろしい言葉も出つつ、審理が進むことになりました。
退廷はともかくとして、暴れていないのであれば、どうして拘束されることが前提のような話になるんだと、ここは少し困惑などしつつ、ようやく本日のメインの話になるのでした。
検察官の論告
ようやく巡ってきました検察さんのターン、というところで書記官さんがバタバタと動きます。
証言台横にある書画カメラをオンにして、検察官席、弁護人席の上にある大型モニターが点灯しました。前回、弁護人から指摘を受けて検察官がきちんと検討してくれたのですね。こういうとこ好き(*'ω'*)
ただ、今回の法廷、70人くらいが入れる大きな法廷なんですけど、縦に長い法廷なんですね。後ろの方に座ってた人はモニター見れなかっただろうな。これは、法廷の設計上の話だけど。
そして、書画カメラが証言台にしかなく、検察官は自席に立っていたので、なんと書記官が書面を受け取って、書画カメラに大写しにして、話すスピードに合わせてスクロールしていました。その間、書記官としての仕事はないのでしょうか。
過去記事でも、恋愛感情の充足、もしくは充足の感情が満たされなかったことによる怨恨の感情という主張がどうなのか、という指摘をしてきました。
個人的には、暴力などあるとしつつ同棲の解消まで住み続けたり、無関係の子のためにお金を送ったり、引っ越しを待って問題解決を待つような点でああるのに、同棲以降は恋愛感情がなくなったという被告人の主張は、かなり首をかしげる思いなのです。
なので、恋愛関係の充足が満たされなかったことによる怨恨の感情という主張そのものは、「そうかもな」とは思うのです。でも、「そうかもな」という曖昧な感想を超えてこないという気持ちが正直なところで。
確かに、金銭目的や動画削除目的の行動としては、不可解とも思える行動が多いので、検察さんの指摘、特に「怨恨と並行しうる」というのも説得力があったと思います。
しかし、それ以上にAの証人尋問での姿勢などが理解できなすぎて、恋愛感情の充足できずでなく、単に恨みという感覚を強く法廷には残してしまったのかなと思っています。裁判官も、Aの行動にはだいぶ疑問を呈していましたし。
個人的には、論告の中で「Aの証言は信用できます」的な言葉が1ミリも無かったところにも、その辺の検察さんの苦労を勝手に感じたり。
という訳で、判決を残しますが、検察さんも長期に渡る審理、そして論告とお疲れ様でした!!
と思いきや、休めないのがこの裁判な訳で。
論告への意義と弁論準備
さて、弁護人の弁論かと思ったら、弁護人が検察官の論告に異議を出しました。
弁護人は不意打ちを禁じていますが、むしろ僕が不意打ちを喰らった気分でした。僕に傍聴メモを休む暇を与えません。
さて、ようやくかと思ったのですが、さらに一悶着。
弁護人は自身のパソコンをモニターに繋いで大画面に主張を映していましたが、弁論の際は少し歩いたりしながら弁論をしたい模様。
パワポとかでないので、遠隔でポチッと次のページに行くのでなく、下にスクロールさせながらお話ししたい様子。
なので、先ほど検察官の論告を手伝ったように、書記官さんに操作を依頼。書記官も立ち上がって近付こうとしたのですが、裁判官が制止。
って流れがあり、まさかの被告人が弁護人のPCを触って、弁論の下スクロールを手伝うという見たことない事態に。
手伝わないって理屈はわからなくもないけど、裁判所の持ち物である書画カメラだから手伝っていたってのは、さすがに無理があった気がする…。
やっと最終弁論 ~鬼退治はこれからだ~
ちなみにこの弁護人による最終弁論は、弁護人本人によってnoteに全文公開されています。
私も、公開直後はざっと目を通しましたが、記事作成にあたっては、本当にメモが意味不明な箇所だけ参考にしますが、それ以外は自分のメモを元に書いていきます。
もし全文をお読みになりたい方は、noteで調べてみてください。
時系列を辿っていく弁護人。裁判では被告人質問を聞かないとよくわからないことが多いですが、長期に渡っている裁判だと、この論告、弁論を聞いている方がまとまっているので理解できたりもします。
弁護人の立場として、Aに振り回されてきたという主張に着地するのはもちろんなのですが、やはりこの時点で同棲を解消しなかったという点の不可解さは印象に残ってしまいます。
この辺の曖昧さは、Aの証言もそうなので、非常にグレーな部分をお互いに感じるところなのですが。
なんだか民事みたいな話になってきました。
それに不思議なもので、もはや「Aはアレな感じの人」っていうのを誰も疑わない前提みたいな扱いで、それでも被告人の罪が成立するか否かという話に移って来たのが少し面白いです。
この事案は法律を学ぶ上で結構参考になるのではないでしょうか。
こうして聞くと、裁判官の質問鋭かったんだな。
確かに被告人は「結婚すると言って」、「結婚する気がないくせに」みたいな発言が見受けられました。これは自身がその気なのに、相手がそうでないことに腹を立てているような供述です。しかし、もっとそれ以前として、そもそものAの口のうまさというかズルさというかに腹を立てていたという主張なのですね。
確かに弁護人の主張もわかるけど、ここに関しては少し裁判官の質問の鋭さが勝っているような気がしなくもない。
最終弁論 ~そもそもこの法律は~
さて、ここから主張の本質的な部分に入っていきます。
確かに、証人の心情のあっちこっちっぷりは気になっていたんですよね。
しかし、このnoteでは、もう「Aは悪い」というのは共通の事実として認定しましたので、あとは罪が成立するかが関心なのです。
と思っていたら、ぴったりの話題に移行します。
面白いですね。弁論前に、迷惑防止条例違反の不意打ちをしないでというフラグがここで活きてきました。
ちなみに法廷では、両者ともそれはしないと言いましたが、「そうは言っても、やっぱそう思ったんで」と迷惑防止条例として認定したら、何か問題が発生するのか気になるところではあります。いわゆる認定落ちというやつですかね。
私が長らく長文を垂れ流していた、ピーチ事件も傷害で起訴されていたものが、暴行として認定されましたから、その辺のルールが気になるところではあります。
いやぁ、お疲れさまでした。今の僕が自分に言った言葉ですけど。
全部で40~50分でしたかね。非常にわかりよかったです。静かに手を叩いている傍聴人なんかもいましたね。
最後に被告人の最終陳述です
そして今の点について、弁護人からの補充。
と最後も検察さんをチクリとやることで裁判は終了になりました。
約一年続いた裁判も今週ようやく判決です。
しっかりと判決の時間も取られているので、裁判官も気合の入った判決文を書いてくれることでしょう。
私も最後までしっかり追っていきたいと思います。
判決は、どうかスムーズに始まりますように…