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薬物前科7犯の被告人。再犯しないために売人が来たら「じゃあね」と断るつもり 傍聴小景 #111(覚醒剤)

違法薬物の裁判で一定の割合で耳にするのが「使ったのは犯罪とは分かっているけど、人に迷惑をかけていない」というもの。
1回目なら、警察などで教えてもらってくださいくらいしか思わないけど、多数回やっている人でその認識なのであれば、もうどこから手を付けたらいいのだろうというのが今回の話。

似た主張で「法律で決まっているから犯罪だし、悪いことなんだと思います」みたいなのもよく聞きます。

裁判傍聴をすると、どうして法律でそれがいけないと定められているということを考えるきっかけになったりするので、そういう点でも非常に勉強になるんです。
傍聴している人なら、万引きをした後の開き直りで「返せばいいんでしょ」という発想にはならないはず。傍聴するような人なら万引きするなよというのが第一ですが。


はじめに ~あの重要指名手配犯っぽい被告人~

罪名 :覚醒剤取締法違反
被告人:50代の男性
傍聴席:4人(傍聴した3回)

被告人は、寡黙な感じですが、眼光鋭めで裏の世界を知っているのか、もしくは拳一つで解決してきましたみたいな感じがします。
罪名が覚醒剤と知っているからなのか、なんとなく肌艶の悪さなどが少し気になってしまいます。

皆さんが一度は見たことがあるであろう、特別指名手配犯の上地恵栄さんに割と似ている気がします。上地さん、顔写真は見たことあるんですが、何をした方なのか知らなかったのでこの機に調べたのですが、やはり悪い人ですね。
というか、重要指名手配に指定されている人が、どんな容疑をかけられているのかをほとんど知らないのって僕だけ?


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は大阪府北海道において覚醒剤を注射して使用した

海外からの不正輸入とかでない限り、違法薬物の起訴事実自体はシンプルなものです。あえて珍しいところを指摘すると、大阪と北海道での2ヶ所の使用が疑われているところ。
覚醒剤っていつどこでどれほど使用していたかなんて、本人にもわからないことも多いので、起訴状では「日本国内いずれかの場所不詳において」なんて表現されることもしばしば。
あえてそのような事実関係にしたということはなにかしらの意味があることが推測されるのです。


採用された証拠類 ~尿検査後に逃亡して指名手配に~

検察官証拠
被告人は前科11犯、そのうち同種前科が7犯
服役を繰り返していて、一時期は暴力系組織にも加担。現在は組織からは脱退して、生活保護を受給して、交際相手と同居をしている。

覚醒剤の使用は出所の翌月から。性交時の快感を得るために覚醒剤を共に使用。逮捕時には毎日のように使用していた。

警察に尿を提出した後に逃亡して、北海道にある離婚した元妻の家などを転々として、指名手配を受けていた。
北海道では、仕事に集中するためと毎日のように使用していた。逃走から1ヶ月ほどで逮捕。改めて尿から覚醒剤成分が検出された。

被告人の容姿から指名手配犯に似ているなどと言ってしまいましたが、まさかの被告人自体が指名手配犯でした。

指名手配と聞くと交番前に写真を貼られるものをイメージし、とても大きなことと感じます。
ただ、調べてみると令和5年の8月時点では約540人が指名手配犯なのだそうです。逮捕状が出されている被疑者の逮捕を、全国の捜査機関に依頼することを意味するので、殺人や強盗などの重大事件だけが対象ではないとのこと。

さて、そんな上地恵栄さんも真っ青な前科を有する被告人。同種前科が7犯もあるのに逮捕当時はほぼ毎日のように覚醒剤を使用していたとのこと。
性行為のため、仕事のためなどとも言いますが、ここまで依存が明確な人がどんな言葉を発するのか気になるところであります。

さすがに前科数犯の人とは貫禄が違いました。


被告人質問 ~僕の中ではチョコを盗むよりハードル低い~

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