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制裁裁判、法廷録音で話題の裁判!ようやく迎えた尋問期日で見えてきた新たな真実(後編) 傍聴小景 #108(ストーカー規制法)

今回の話は前後編の後編です。前編を見ていないと話が伝わりませんので、どうか前編からご覧くださいませ。

今回は被告人質問
ここまで来ると長かった裁判もようやく終わりが見えてきました。ただ、終わりが見えたはいいけど、前回裁判官が争点とした

・恋愛感情の充足としての目的があったのか
・主観目的(?)の立証がなされるのか

については、ちょっとモヤったまま進んでいます。被告人質問で明らかになるのでしょうか。

刑事裁判って、こういう違法性の要件を満たすか否かって話が、「証拠によって明らかだ」と双方主張するけど、キャッチボールとして議論されないのが、少し法律素人には残念に思うところです。


さて、これまでは録音などの意見を申し立てていたものの、この日はスムーズに始まりました。やはり、被告人にも余計な心的負担をかけず始めたかったのでしょうか。

ただ、被告人質問の前に1点だけ追加の証拠の取調べがありました。

前回、調査することになった、被害者の携帯に残されていた元奥さんとのLINE履歴です。被告人が被害者の元奥さんに3万円を支払うことになった経緯などが記されているようです。


では、弁護側、検察側で合計4時間ほどにもなった被告人質問の様子をどうぞご覧ください。
よ、4時間...?

長いので、しっかり読む時間と覚悟のある方のみお願いします。



被告人質問・弁護側① 〜主役はあなたです〜

質問の一言目、「色々なことがありましたね」と切り出す弁護人。

この「色々」には被告人の事件に関する一連もでしょうし、この裁判での譲れなかった主張を巡る一連もそうですし、そして知っている人は知っているでしょう、弁護人ご本人にも色々ありました。
いろんな意味にかかっていると感じました。

弁「昨日、先生は私の言うことを聞いてくれない。主演が先生で助演が私と言ってましたね」
被「現に裁判官も先生にばかり話していて、私に話しかけないのはおかしいと思います」

弁「今日の主役はあなたです」
被「ようやく出番があるのは光栄です」

弁「話すときは、初めて話を聞く人ばかりなのでそれを意識して話してくださいね」
被「わかりました」

「へぇ〜、裁判の質問ってこんな感じなんですね」って思った方、全然違いますからね!とは言え、ここにも重要なポイントがありました。

「裁判って誰のためにあるの?」という視点です。
ちょっと語ると長くなるんで端折りますが、やっぱ被告人のためなんですよね。別に独演会ではないので好き勝手に喋られても困るんですが、やはり被告人が主張をする場がないといかんと思います。


事実関係を一つ一つ、被告人視点でなぞっていきます。

まず証人は被告人と初めて会ったのが梅田のライブハウスと言っていましたが、被告人いわくそれは2回目で初対面はその前に会ったようです。
その次の機会、リサイタルで再会し、カフェで3人で話した後のになります。

弁「解散しようとしたとき、車で送ってもらうという話になりましたね」
被「はい」

弁「車の中で証人が、家で飲もうと誘ったのですか」
被「はい」

弁「そして、その日性交を行ったと」
被「はい」

弁「証人はその後、「被告人が結婚して欲しいと言った」と言ってましたが」
被「証人は、私が同居男性がいるのを知っていたので、不貞行為で訴えられたら終わりと思っていたようですが、でも私は結婚もしていませんし、しようと思えばできるけど、と言いました」

弁「その次の機会は女友だちと証人の家に行ってますが、証人は「被告人が寝室に樹たので性交した」と」
被「合っているといえばそうですが、ゴミ屋敷なので友人の寝床をとったら行くところがなかったんです」

最初から積極的であったという証人の主張に対し、関係はあったけど積極性はやんわり否定する被告人。

その後、定期的に証人の家に行くようになります。

弁「証人の家には何をしに」
被「手料理を作ってと頼まれたりで」

弁「料理を作ってあげたのですか」
被「ですし、外食なども。お金は私が出していました

弁「なぜ?」
被「1日1食がやっとの経済状況だと聞いていたので」

弁「証人から借金があるなどは聞いていましたか」
被「逼迫しているが借金はないと言っていました」

弁「だから作っていたと」
被「かわいそうだなって」

弁「じゃあ納得していたんですか」
被「してはないですけど、あちらが『水道代とかはこっちが払ってるし』と言われて納得していました」

なんか証人も言ってましたね、水道代がどうだとか。水道代払ってるから食費払ってよという理屈はわかりません。どこから水を引っ張ってんだ。

まぁとは言え、お互い出会ったばかりで楽しい中だったのでしょうか、そこはお互いうやむやにしていたようです。

うやむやで言えば、証人尋問でも証人は被告人への感情をうやむやにしていましたが、被告人質問でも今のところそういった質問が出ません(後に出るには出るのですが)。
お互い、裁判上あまり明らかにしたくないのか、それともお互いそれくらいの距離感がいいと思っていたのか。


さて、その後もしばらく証人宅へ通った後に、同棲することになります。同棲開始日は被告人の給料日でした。

弁「同棲するきっかけは」
被「一緒に住まないと別れる、すぐ来て欲しいなどと言うので」

弁「そのときどういう関係性?」
被「私が配信をする中で、証人はアシスタントです」

弁「あなたは動画配信をしていて、証人は視聴者ということ?」
被「そうです」

弁「なんか配信中に、もともと被告人が同居していた男性の弁当をアップしてしまい、怒って『すぐ来い』と言われたことがあったんですか」
被「はい」

弁「その日はどんなこと言われたの」
被「電気代のこと(払えという意味か不明)、私のような病気(具体的に挙げてましたが記事では「病気」で統一)と結婚する奴はいないとか」

弁「他には?」
被「生活が貧しいと言ったらビンタされ、泊まると言ったら「もうしない」と」

弁「そのタイミングでなんで家を出なかったの」
被「証人の叔母が、私と同じ病気があるから、それに理解があると言っていたので」

病気の理解はそうかもしれませんが、すでにビンタやらなんやら問題は発生しているわけで、それでもなお同棲を続けないといけないのでしょうか。

弁「リボの話は出ましたか」
被「カードの支払いと家賃で給料は数万しか残らないと」

弁「そのあたりもう少し詳しく」
被「『借金無いって言ってなかった?』と聞いたら、『アコムとか武富士じゃないんだからリボは借金じゃないんだ』って」

弁「証人はリボをどうするって言ってたの」
被「養子縁組の叔父が死んだらどうにかなるって」

弁「もう1回聞くけど出ていこうと思わなかったの」
被「『家賃が厳しいだけで引っ越しをすれば大丈夫』だと。」

弁「引っ越しに彼は納得していたの?」
被「『引っ越し費用50万円を負担してほしい』と」

証人、期待を裏切らない回答です。
裁判を傍聴していて、関係者さんたちの話を聞いていると、「自分にもいい意味でこの図々しさがあれば」と思うことが、半分冗談であります。幾分ピュアなもので(๑˙❥˙๑)

さて、その後婚姻届を取りに行ったけど、署名捺印はしていないという流れに。被告人としては、取りに行くだけで「自分にはその気はあるぞ」と思わせたかっただけではと訝しんでいたとのこと。

婚姻届けのくだりでは、嬉しさよりも、家の片付けも引っ越しの話も進まないから不安だけが募っていたとのこと。
まぁ、だからこそ家を出た方がという話にもなるんでしょうが、そこは当人らしかわからない事情などもあるのでしょう。

弁「11月の証人の給料日のときのことですが」
被「給料日なのに、『いくら足りない』とか『もうどこも貸してくれない』などと言ってました」

弁「生活を維持するために、56万円のリボをあなたが返してあげた。」
被「そうです」

弁「月1万円ずつ返してもらうことにしたんですね。返してもらいましたか」
被「1回は」

12月に同棲解消しているので11月に1回だけ払ってもらえたようです。借金は無いと言っていた証人さん、56回払いの借金が生まれた瞬間です。


被告人質問・弁護側② 〜自分は性行為で返している〜

お金の問題がどんどん大きくなってくる同棲後半の話です。

弁「証人の元奥さんに3万円なんて何故渡したの
被「証人が勝手に決めてて。証人は元奥さんが迫ってくるから『被告人が払うしかないってLINEを送れば、きっとあっちも黙るだろう』って言ってたのに、元奥さんは受け取る気でいて。証人は『恥知らずな女だ』とか言ってました」

弁「証拠によると、元奥さんは『本当にありがたい、娘のために毎月お願いします』と送っている」
被「私の知らないところで何か話が進んでて。なんで知らない人に払うことになってるのか全然意味がわからなくて」

弁「それならもっと早く家を出ても良さそうだけど」
被「意見をしたら、傘立てを捨てたり、大型ゴミ券を取りに行ったりしてくれたので」

弁「どれくらいそういうことしたの?」
被「週に1度くらいは」

弁「家を出た日は証人はもめたと言ってたけど」
被「証人が叔父さんに会いに行こうと。要介護者なのに、どうせ無心なんだろうと思ってて。そしたら電話して案の定拒絶されて、それで何してんだろうって」

弁「出て行った翌日荷物を取りに行ってお金の話をした時の話を」
被「証人は『ないものは返せない。家賃と水道光熱の半分を払え』と。」

弁「家賃半分払えというのは、どういう決着を」
被「『自分は性行為で充分に返している』などと言ってました」

弁「そのあとは」
被「私が証人に50万円を貸したいう借用書を勝手に作られました」

ここ少し分かりにくいですが、被告人としてはリボの払いと、元嫁への支払がありますが、普段の食費などはもう抜きにして、さらに1回なされた1万円の支払いを差し引いた金額を払って欲しいと思っていたのですが、証人としては急に家賃の折半の相殺や自身との性行為で充分だろうと、自分の借金は50万円だとして借用書を作ったとのことでした。性行為を単価として考えろって…。

なので、被告人としてまだ払ってもらいたい額は8~9万円という認識のようです。

もちろん、あくまで被告人の主張なので真実性はわかりませんが、元嫁へ支払わせているメッセージも残っていますし、証人も相当です。


弁「その後、証人から電話が来た」
被「『帰ってきて欲しい、一緒に音楽だけでもやって欲しい』と」

弁「それに対して」
被「意味が分からない。借金の話をしているのに、音楽の話ばかりする」

弁「あなたはメールで『債権債務を返還求めます。こちらは穏便に済ませたいと思っています』と送ってますね」
被「下手したら動画をあちこちに拡散されてもと思って」

弁「それに対して証人は」
被「『もう別れたんだから関係ない』、『しつこい女は嫌われるぞ』と」

弁「一方で『そんなに恨んでると知り傷つきました』とか証人から来てますが、どう思った」
被「気持ち悪いと思いました。支払から逃れるための嘘と思いました」

弁「性交の動画ってのはどうやって撮られたの」
被「知らない間に証人が撮ってました」

弁「証人は、被告人は知ってるって言ってたけど」
被「気付いて驚いて消すように言ったら、『それは消す』と」

弁「他に持っていることはいつ気付きました」
被「証人が一人で見て楽しんでるときに気付きました。『顔は映ってないから約束は守ってる』などと言ってました」

弁「友人に『証人からのリベンジポルノが恐い』と言っているのはこのこと?」
被「そうです」

撮影については意見が真っ二つに分かれていますね。リベンジポルノは確かに裁判としても増えていますし、かなり大きな問題でもあります。

一方で、前記事ではカットしていますが、証人は動画撮影について結構生々しい発言をしていました。そんな嘘思いつくかなぁという思いと、リベンジポルノに怯える女性という構図がなんとも難しいところです。

弁「それで、家に行っちゃったわけだ」
被「不足している9万円と動画の削除を求めても応じる気がなさそうなので」

弁「ポストに入れた文字の中で『結婚詐欺』とは」
被「引っ越す気が感じられない、元奥さんの養育費を払わされたり」

弁「証人は結婚まで考えてたの?」
被「薬を取り上げられ判断能力を低下させられたり、『夫婦になったら家計一緒だね』とかは言っていました」

弁「『援助交際は犯罪です』とは」
被「証人の元々の負債は証人が風俗を止められなかったから。500人斬りを達成したとか」

弁「それが援助交際と?」
被「私に風俗嬢とのLINEを見せたり、私含めて複数人でプレイしたいと言ったり」

弁「別の日には「恨」って文字の雑誌の切り抜きですかね」
被「私の友人の占い鑑定に全くお金払わなかったりしたので」

弁「『不倫セックス』とは」
被「デリヘル嬢が結婚したのに、性交を続けていたことです」

弁「『竿師』とは?」
被「ホームレスになるか、AV男優になるかとか、風俗嬢を満足させている、絶倫など言ってたんで」

弁「『女の生き血をすするダニ』とは」
被「証人自ら言ってました。風俗嬢に生活を支えられたこともあるとか」

弁「会社にも送りましたね。『解雇して欲しい』とは」
被「社名の入った営業車で人を信頼させていたので」

弁「それを見て信頼した訳ですね」
被「会社は経産省のなんか賞も取ってたし、部長という名刺で口説いていたし」

弁「彼のことは好きだったんですか」
被「・・・・・・(答えず)」

事件の肝となる、脅迫的な文言についての話。
裁判の論点は、ここに恋愛感情が充足されない恨みかどうかという点ですが、証人への最終的な好意についてははっきりせず。

はっきりさせたい文言での主張は伝わるのですが、それが本来求めている金銭の要求との繋がりとも思いにくく難しいところです。


被告人質問・弁護側③ 〜傍聴席も揺れた弁護人の指摘〜

被告人の証人への思いがはっきりしないなと思っていたところで、裁判的にかなり珍しく、そして大事な話が発生しました。

検察官が証拠取調請求をして採用されている写真を被告人に見せようとする弁護人。
その前に裁判官に質問します。

弁「この証拠の日付、裁判官読めます?
裁「えっ、見にくいなぁ。〇月〇日(同棲解消後2ヶ月くらいの日)?」

弁「違う!〇月〇日(同棲開始前)です。これはいつだか大事です」
裁「尋問調書に残しておきますね」

弁「何ページもあるから注意深く見ないとわからないでしょう。裁判官も異動とかで変わるかもしれないのに」
裁「検察官、もう少しわかりやすくできますか」
検「対応します」

揺れる傍聴席。検察さんも、別にわざとわかりにくくしたわけでないだろうし、裁判官も尋問で把握するとは言ったけど、形として正しく変えさせる姿勢はさすが。

その一方で、裁判官の異動期でもある4月を超える可能性があるのか?と少し怯える普通氏。


さて、その被告人に見せた、日付が当初視認が難しかったとされる、被告人が友人に送ったメッセージの写真に書かれていたのは

「証人は音楽に一途。好きは好きです」

というもの。
これが、同棲解消後に送られていたと判断されれば、それは好意が継続している中での犯行と思われることでしょう。印象が全然変わってきます。

弁「こういった気持ちから徐々に変わっていったわけですね」
被「同棲初日に叩かれ、借金は元嫁のせいだとずっと言って」

弁「証人があなたに『愛している』とメッセージをしていますが、そのときに愛情は」
被「ないです」

弁「別れた後に『愛していたのに裏切られた』と言ったり、SNSに書いたりした?」
被「していません」

弁「今回のような行為をしたのは」
被「騙されてお金を取られ、動画を握られているなら、自分で頑張らなきゃと」

弁「もうしませんか」
被「思ったこともないし、体力もないし、病院にも行かなきゃですし」

弁「証人は動画を消したと言ってるけど」
被「消していないと思います」

弁「でも弁護士としても、そこあでは対応できないんだよね」
被「ここまで大ごとになって、拡散とかはしないと思う」

ここで弁護側の質問は終了。法的な判断はわかりませんが、主張したいことはわかりました。

さて、続いて検察官の質問で、新たな事実が出るのか!?と思ったのですが、被告人体調不良につき、いったん休廷を挟み、そのまま体調戻らずということで別日に延期になりました。


傍聴席からいったん外に出されて待っていたら、裁判長がわざわざ法廷の外に出て、次回延期について直接伝えてくれました
弁護士に限らず、裁判長もいろいろ殻を破った対応をしてくれるから、この裁判の傍聴は止められません。


検察官のターン!にならず…だけど大事な話2点

2週間後に行われた期日、検察官からの質問かと思いきや、弁護人からとある申請がありました。

それは傍聴席に向けて「手話通訳」を入れて欲しいというもの。傍聴席に聴覚障害の方がいる可能性も鑑み、その措置をして欲しいとのこと。

う~ん、具体的にそういう方がいるのであればまだしも、可能性では不可ではないかなと思いました。

そして裁判所の判断は、その措置はとらないというもの。
その理由として、

裁判の公開を定めている憲法82条は、通訳を受ける権利まで認めているものではない。刑事訴訟法176条の通訳に対する規定は被告人など、裁判上のプレイヤー(?)に限る。

一方で、傍聴人が自ら連れてきて、それを禁止することはない。最高裁の決定などを調査した結果。法廷を守るために他の利益を損ねないと判断した場合。

なんとなく、僕もそんな感じがします。でも弁護人は引き下がりません。

弁「傍聴というのは誰でもいつでも来れるものではないのか」
裁「憲法の解釈の問題。個人的な理由までは保障するものでない

弁「聴覚が自由でない方は、個人的な理由なのか」
裁「憲法学説としても個人的表現の方が大きいのはわかるけど、制度上そのような運用はしていない」

弁「手話がないとメモもできない。メモするのを妨げているのでは」
裁「メモを妨げている訳ではない。また、例えば日本語がわからない外国の方が傍聴人としていても通訳をつけないのと同じ」

弁「論告、弁論(検察官と弁護人の最終意見)は文字として表示したいからモニターの使用を認めて」
裁「弁論は認めます。パネルを立てる人もいるし。ただ検察官の論告に義務付けはできません」

弁「ですって、検察さんどうします?」
検察官「検討はしますが、今は答えられません」

弁「しょうがないなぁ、私費で雇って請求書回すしかないか
裁「回されても困りますけど
傍聴席(笑)

弁「被告人が求めているのもあるんですよね」
被告人「筆談を求めても先生はしてくれないので」

なんと、被告人が求めていたとのこと。
しかし対象は傍聴席という申請であったような気が。これは追々出てくるので、その辺りの整理は後ほど。


手話通訳についてはこれくらいだったのですが、もう一つ弁護人から意見が。

どうやらこの日の公判前に弁護人は、前回の公判での被告人質問の様子について裁判所の録音を聞きに行ったとのこと。すると、この日の直前の金曜日に調書がすでにできていたとのこと。

その連絡がされずに、裁判所に行ったらあることを知らされたことに怒っていました。

弁「防御権を考えたら必要なんだから、普通連絡するでしょ」
裁「今日するつもりだったのでは?」

書記官、裁判官の方を向いて「しないしない」といった感じ。

弁「ここだけやで、こんな対応」
裁「防御権といっても、本来検察側の質問は前回のはずだったから、そこに×××(支障ないのでは?的なこと)」

しばらく揉めていましたが、弁護人としては検察官の質問が終わったあとの補充質問に使いたいから、休憩を長めにとってその間に聞かせてくれと主張。
それは裁判長は認めたのですが、この後の展開からなのかその求めは自ら撤回されました。


被告人質問・検察側① 〜元妻との子をフェリスに入れたい〜

ようやく検察側のターンです。

この裁判、弁護人と裁判官のやり取りが注目されていますが、検察官もじっと耐えたり、いろいろと対応を余儀なくされたり大変なことと思います。
そんな鬱憤が爆発して・・・という訳でなく、普段通り冷静な質問対応でした。

※被告人質問では証人のことを「Aさん」にしてましたが、この記事では「証人」で統一します。

検「初めて出会ってから、家に行くまでの証人への感情は」
被「兄がミュージシャンで証人と同じ時期にデビューしているので縁を感じていました」

検「悪い印象はありましたか」
被「配信で言葉遣いがちょっと悪いなとは思っていました」

検「嫌だなと思ったりもした?」
被「別れた奥さんの悪口は言い過ぎだなとは思っていました」

検「他には?」
被「よく、こんなゴミ屋敷に人を上げられるなって」

検「性交への抵抗は」
被「特にないけど、部屋は汚過ぎだなって」

検「そのとき被告人は他の男性と同棲していたと思うんですが」
被「私たちは互いに干渉しないという関係性でしたので問題ありません」

被告人が証人に対しての愛情の気持ちが強かったのではないかという質問ですかね。さらに深掘りされていきます。

検「同棲前、証人とはどういう関係でしたか」
被「私の5人いるアシスタントの1人です」

検「恋愛感情は?」
被「互いに音楽が好きで、証人はアシスタントなので、配信時投げ銭などしてくれていました」

検「証人は投げ銭をしていたのですか」
被「1回2,000円くらいですかね。他の女性のアシスタントもしていたのでそんなに多くはなかったです」

検「同棲前後の気持ちの変化というのは」
被「同棲前は本人の言うことを鵜呑みしていました。部長で真面目で借金もなく、元嫁との離婚理由は元嫁の結婚詐欺。同棲後は、生活費もなく、キャッシングしないとライフラインが止まり、なのに投げ銭は止めないという」

検「証人から結婚の話は」
被「同棲の前も後も度々ありました」

検「あなたからは」
被「証人からばかりです」

検「証人からそういった話をされてあなたの反応は」
被「するなら借金や引っ越しをちゃんとしないとと。とても結婚できる状態ではなかったので」

検「結婚する気はないと伝えたことはありますか」
被「あります」

検「そのときの証人の反応は」
被「『自分は借金を作って自分はクソだ、孤独死、自殺』みたいなことを言っていました」

検「同棲の間、前の同居の家には帰っていたんですか」
被「猫のエサをやったり荷物を取りには行きました。『今日来ないとすぐ別れる』と言われたんで荷物もほぼ持っていませんでしたので」

「今日来ないとすぐ別れる」と言われて、行ってしまうのはやはり被告人自身の恋愛感情の表れなのかなとは思います。借金のことは知らないまでも、アシスタントの一人などという表現はしていましたが。

検「リボの肩代わりをして返してもらえると思ってましたか」
被「証人が結婚したら財布は一つといったり、すぐ叩かれたりするので取り返す自信はありませんでした

検「それでも肩代わりしたのは」
被「本人がギターを処分するというので。確かに売れば現金化できるものもありましたし。でも、50本もあって1本も売らないとは」

検「食費は全部負担していたようですが、折半を頼んだりは」
被「『自分はもやしでも食べるから、被告人は肉でも食べてね』とか言う状態でしたので」

検「納得していたと」
被「引っ越しの問題さえクリアになれば楽になると思ったので。勝手に借金しなければ」

検「引っ越しするまでは負担しても仕方ないと」
被「でも養育費の話が出てきて」

検「それは3万円の話ですかね。それまで養育費の話は」
被「一度もなかったです」

検「なんと言ってきたんですか」
被「LINEを見せられて元奥さんに『彼女に借りるしかない』と勝手に書いてて、問い詰めると『恥知らずな女だ。知らない人のことを出したら引き下がると思ったのに』と言っていました」

検「毎月いくら払って欲しいという話に」
被「数万でいいと。『娘をフェリスなどの私立の一貫校に入れたい』などと。もちろん断りました」

実の子のクリスマスプレゼント代もせびってるくせに、フェリスに入れたいじゃないんだよ。それなら、投げ銭をそのまま貯金箱にinすればいいのに。


被告人質問・検察側② 〜異議あり!ではなく・・・〜

検「同棲解消の一番の原因は」
被「何の関係もない叔父さんへの無心をしようとしたことです。ギターも処分せず」

検「家を出たのは被告人から」
被「はい」

検「証人から言われたということは」
被「ないです」

検「それで前の同棲のところに帰った」
被「はい」

検「証人との関係に修復の余地はありましたか」
被「ないです。でも動画、画像はどうにかして欲しかったです」

検「そのことを話し合いをしようとは」
被「荷物を取りに行くとは言いました」

検「そのときお金の話になって、リボの肩代わり、ディズニーの3万でそれ以外返してもらおうとは」
被「思っていません」

検「それはなぜ」
被「本人の経済状況から不可能と思って。でも、最低限は返して欲しいなと」

検「それに対し証人は」
被「家賃と光熱費を払えと言ったり、借用書を出してきたり、出せないものは出せないと」

検「あなたの反論は」
被「話が違い過ぎると」

検「証人はなんと」
被「『金があれば返してやりたいが、自分はもう孤独死するしかない』とか」

検「あなたはそれで仕方ないと思った」
被「家財道具とかを売れば作れるのにと思いました」

検「50万と書かれた借用書には納得していない」
被「していませんでしたが、言ったら怒鳴られました」

検「その借用書を持って帰ったのは」
被「1円も返って来ないよりと思ったのと、動画を握られていると思ったので」

一応、50万円は返ってきた模様。それくらい払える資力はあるんですね。リボなくなったから、給料をまるっとそっちに回せたから?

検「第三者への相談は考えなかった」
被「羞恥心もあり、自分でできることをしてからしようと思って」

検「『電話、対面は望みません、全部書面で』とメッセージを送ったのは?」
被「顔を合わせたら音楽の話ばかりされてしまうので」

検「弁護士に相談しようとは」
被「少額訴訟なら自分でしようと」

検「警察に言おうとは?」
被「しづらかった」

そういった流れの中、

弁護人「10万なんて警察相談乗りますか?民事不介入でしょ
裁判官「弁護人、それは異議ですか?

弁護人「いや、感想
裁判官「感想!?検察官、そのまま続けて」

異議であれば、質問のやり直しだったりの判断が発生するので確認しましたが、まさかの感想。イレギュラーが本当に多い裁判です。

その後、メッセージしても返事が少なくなり、ブロックされてしまう。ブロックされたことでアクションしなければと思ってしまったとのこと。

検「(集合ポストに入れた書面を見せ)いつ書いた?」
被「投函の前夜に書きました」

検「思い立ったのは」
被「思っていたのは同棲している後半から」

検「集合ポストに入れようと思ったのは」
被「別れた直後です」

検「『大ウソつき』とは?」
被「借金ないとか、元嫁が浪費しているとか、引っ越しの意思とか」

検「『償え』とは」
被「怒鳴ったり、家事を押し付けたり、歩合給の会社なのに出勤しなかったり

検「これらを投函してどうなると」
被「改善すると思ってました」

検「改善とは」
被「5000円ずつとかでもとか、動画を削除してくれるとか」

ここが検察さんの肝ですかね。

「大ウソつき」や「償え」の意味が、「結婚してくれると思ったのに~」という恋愛感情からだったら大万歳でしょうけど、そうでないにせよ目的と行動(文面)が伴っていないから不合理という話になるんでしょうかね。僕もそう思う。

検「同じころに職場に送ったのはなぜ」
被「SNSでお金持ち自慢したり、会社のパンフレットや社用車で安心感を得ようとしていたので」
僕(ロゴ付きの社用車で女性に会いに行くセンスがすでに…)

検「『解雇してくれ』と書いてますが、これで何を得ようと」
被「本人がSNSで自慢などする必要がなくなり、私に返してくれるようになるかなと」

検「その後また玄関ポストに、(証拠を見せながら)雑誌の切り抜きや習字のような字で書いていますね」
被「私がしたためました。これは読みあげてくれないんですか?」

裁判官「送ったかどうか確認ですからね」
横にいた弁護人「人権回復、『呪』の字で相手の娘さんの名前を書いていますね」
検察官、裁判官特に反応せず

検「お金を返して欲しいとか、動画の削除でなく、恨みについて書いているのは」
被「証人が初めから自分の浪費目的だったから」

検「その点恨みがあったと」
被「怒りもありました。デリヘル嬢と切れなかったり、本当に結婚したいんならそんなことしないだろうと」

検「これら送ることで証人はどう思うと?」
被「私が本当に怒っていると気付くと思いました」

検「それに気付くとどうなると思ったのでしょうか」
被「(恐らく性行為の)動画コレクションなどしないと思います」

最後の方はちょっとちぐはぐになってきた印象がありました。これまでの受け答えに比べて一貫性がないという話ではないのですが、少し恨みが先行しているというか。

ただ、被告人からの供述をそのまま信用しないとしても、やはり冒頭からの通り、恋愛感情が充足されない不満としてという話にどう繋げるのかなという、次回行われる検察さんの主張が気になる感じではありました。


被告人質問・弁護側の補充と裁判官 〜なぜ被告人は録音を求めてきたのか〜

休憩を挟んで、検察官の質問を踏まえた上で、弁護側の補充質問が行われました。

弁「同棲解消後の証人からの電話では証人は音楽したいと言ったり、辞めると言ったりしているようだけど、どういうこと?」
被「私も意味わからないんです」

弁「あなたに音楽して欲しいってのは何を求めているの」
被「ピアノとボーカル」

弁「なんて言って誘ってくるの」
被「『ずっと家でやってるのにもったいなくないのか』って」

弁「音楽を辞めるってときはどう言ってるの」
被「生活が破綻しているから、辞めないと生きていけないのも分かっているんだと思います」

弁「それをあなたに言う目的ってのは」
被「関心を引きたかったんじゃないでしょうか」

証人尋問では双方からあんま音楽の話題が出なかったので、証人が意図していたことはわかりません。

弁「噛み合ってないことをどう思ってたの?」
被「証人の人は・・・」

弁「証人でなく、あなたがどう思ってたのかって話」
被「どうって・・・」

弁「なんで書いたもの投函したの?」
被「いつも陰茎を自慢してきて」

弁「人のせいにしない、あなたの動機を聞いている
被「・・・・・・」

弁「怒っていた?」
被「許せない気持ちはある」

弁「なぜ許せない?
被「女性から貢がれ続けていること」

弁「借金を返してもらうことは考えていなかった?」
被「どうにか反抗したかった」

ところどころ「人のせいにしない!」と語気を荒くして聞く弁護人。

そうなんです、被害者……は当たり前かもですが、お互いが「あっちが勝手に」という主張が多く、自分の本心というのが双方とも全然わからなくて。

味方である弁護人に強めに言われ少し戸惑ったかもですが、ぽつりぽつりと話し始めます。「謝罪して欲しい」、「借金返済して欲しい」、「動画削除」、この3つが動機として挙げられました。

弁「警察では、『同居相手に回収して来いって言われたから』って言ったみたいだけど、人のせいにするな、自分の思いを言って」
被「理不尽な扱いを受けて

弁「理不尽な扱い?」
被「差別のような発言を。『叔母が同じ病気だから分かる。薬を飲んで逃げようとするな』って薬を飲ませてくれなかったり」

弁「どの動機がどれくらい強い?」
被「大きいのは、差別用語言われたり、暴力を奮われたり、養育費払えと大声で言われたり、動画は『やめて』って言っても続けるし、どれか一つってことでありません。『俺は失うものはないんだ』などとも言ってますし」

涙ながらに語る被告人。荒療治に見えなくもないですが、信頼してきた関係性だから成せるものかなとも感じます。

弁「あなたは、この裁判を通じて法廷録音を求めてきましたね」
被「私がお願いしてきました」

弁「なぜ?」
被「先日の公判の記憶もほとんどなくて。頑張るつもりなのに、何を話したのか、どんな失態をしたのか、裁判に参加したいのに何の話をされているかもわからず、文字で見せてもらう方がわかるので

弁「記憶がなくなると言いますけど、僕が説明するのではダメなの」
被「1時間を超えるので、ざっくりしたのしかわからないだろうと」

弁「パニックになるから筆語にして欲しいと」
被「私はずっと言ってきました」

弁「それは僕が正直甘えだと思っていました。ごめんなさい。だから文字で欲しかったんですね」
被「はい」

弁「今回手話通訳を求めていましたが」
被「パニックになるとわからなくなるから、サインの方がわかる。自費でもいいからお願いしたい」

弁「傍聴席に対しても」
被「普通の学生はいても、養護施設の学生はいない」

弁「それも自費で?」
被「寄付してでもやりたい」

弁「録音への思いについて裁判長に言いたいことがありますか?」
被「裁判長は先生とばかりで、何で録音したいか私に聞いてくれず、私は伝えたいのに。いつも裁判ではどうなっているか全然わからなくて、自分が何を言っているのかも。文字が自分が一番理解しやすいので、合理的配慮として録音を認めて欲しいと思っています

裁判所としての記録はどういう扱いかわからないので、録音によって被告人が求めているものがどのように実現するのかという課題はありそうですが、裁判への思いが聞けたのはよかったです。

録音が話題に挙がることが多いですが、裁判における録音、記録とは?、弁護人の役割とはなんなのか?など裁判制度そのものについて考えることが多かった一連の流れ。改めていろいろと考えさせられました。


その要望に応える義務はないのでしょうが、そこからサラリと質問を始められる裁判官のメンタルに改めて驚かされたり。

裁「相手が結婚する気がないと感じたとありますが、あなた自身は証人がギターを処分などしたら結婚する気はあったんですか」
被「ないです。暴力や浪費癖やデリヘルなど辞めなかったので」

裁「条件付きで結婚する気というのは」
被「相手が初日から暴力を奮ってきたから、思ってたのと違って」

裁「相手が結婚する気がないというのが、あなたの怒りの原因の一つではないのですか?
被「恋愛と結婚は別の問題かと思います」

今日一、鋭い質問だった気がする。しかし、被告人も咄嗟の交わしとしてはなかなか。

裁「謝罪して欲しいというのはどういうこと?」
被「家賃や光熱費のためだけに私を呼んだこと」

裁「謝って欲しいのはそれだけ?」
被「理不尽な扱いを受けたこと。あと『リボは借金でない、お前が間違ってる』と言ったことなど」

裁「それはお金のことも謝って欲しいということでいい?」
被「はい」

裁「動画の削除について投函したものに含めてないのは」
被「羞恥心と、動画コレクションに愛着を持っているのを知っていたのと、「エロ動画」を習字で書くのが憚れた」

裁「別に「エロ動画」でなくても「消して」とかさ」
被「わかりにくいと思って」

裁「払ってもらうべきと思っているのは9万くらいという認識でいい?
被「はい」

裁「メッセージでは、証人の整体とかプレゼントした靴について書いてるけど」
被「一方的に家賃とか言っていたので、私もこんなに払っているのにと」

裁「これを払って欲しいという意味ではない
被「ないです。これだけ払ってきて、あなただけおかしくない?という意味」


以上で、この日の質問終了。

もう僕の分析より、近々行われる検察官、弁護士の主張を正しく聞き取る方が誤解を招かなくていいでしょう。


次回は検察官による論告、弁護人による最終弁論、そして被告人の最終陳述です。
予定時間は90分。

頼む、もってくれ俺の右手。


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