今回の話は前後編の後編です。前編を見ていないと話が伝わりませんので、どうか前編からご覧くださいませ。
今回は被告人質問。
ここまで来ると長かった裁判もようやく終わりが見えてきました。ただ、終わりが見えたはいいけど、前回裁判官が争点とした
については、ちょっとモヤったまま進んでいます。被告人質問で明らかになるのでしょうか。
刑事裁判って、こういう違法性の要件を満たすか否かって話が、「証拠によって明らかだ」と双方主張するけど、キャッチボールとして議論されないのが、少し法律素人には残念に思うところです。
さて、これまでは録音などの意見を申し立てていたものの、この日はスムーズに始まりました。やはり、被告人にも余計な心的負担をかけず始めたかったのでしょうか。
ただ、被告人質問の前に1点だけ追加の証拠の取調べがありました。
前回、調査することになった、被害者の携帯に残されていた元奥さんとのLINE履歴です。被告人が被害者の元奥さんに3万円を支払うことになった経緯などが記されているようです。
では、弁護側、検察側で合計4時間ほどにもなった被告人質問の様子をどうぞご覧ください。
よ、4時間...?
長いので、しっかり読む時間と覚悟のある方のみお願いします。
被告人質問・弁護側① 〜主役はあなたです〜
質問の一言目、「色々なことがありましたね」と切り出す弁護人。
この「色々」には被告人の事件に関する一連もでしょうし、この裁判での譲れなかった主張を巡る一連もそうですし、そして知っている人は知っているでしょう、弁護人ご本人にも色々ありました。
いろんな意味にかかっていると感じました。
「へぇ〜、裁判の質問ってこんな感じなんですね」って思った方、全然違いますからね!とは言え、ここにも重要なポイントがありました。
「裁判って誰のためにあるの?」という視点です。
ちょっと語ると長くなるんで端折りますが、やっぱ被告人のためなんですよね。別に独演会ではないので好き勝手に喋られても困るんですが、やはり被告人が主張をする場がないといかんと思います。
事実関係を一つ一つ、被告人視点でなぞっていきます。
まず証人は被告人と初めて会ったのが梅田のライブハウスと言っていましたが、被告人いわくそれは2回目で初対面はその前に会ったようです。
その次の機会、リサイタルで再会し、カフェで3人で話した後のになります。
最初から積極的であったという証人の主張に対し、関係はあったけど積極性はやんわり否定する被告人。
その後、定期的に証人の家に行くようになります。
なんか証人も言ってましたね、水道代がどうだとか。水道代払ってるから食費払ってよという理屈はわかりません。どこから水を引っ張ってんだ。
まぁとは言え、お互い出会ったばかりで楽しい中だったのでしょうか、そこはお互いうやむやにしていたようです。
うやむやで言えば、証人尋問でも証人は被告人への感情をうやむやにしていましたが、被告人質問でも今のところそういった質問が出ません(後に出るには出るのですが)。
お互い、裁判上あまり明らかにしたくないのか、それともお互いそれくらいの距離感がいいと思っていたのか。
さて、その後もしばらく証人宅へ通った後に、同棲することになります。同棲開始日は被告人の給料日でした。
病気の理解はそうかもしれませんが、すでにビンタやらなんやら問題は発生しているわけで、それでもなお同棲を続けないといけないのでしょうか。
証人、期待を裏切らない回答です。
裁判を傍聴していて、関係者さんたちの話を聞いていると、「自分にもいい意味でこの図々しさがあれば」と思うことが、半分冗談であります。幾分ピュアなもので(๑˙❥˙๑)
さて、その後婚姻届を取りに行ったけど、署名捺印はしていないという流れに。被告人としては、取りに行くだけで「自分にはその気はあるぞ」と思わせたかっただけではと訝しんでいたとのこと。
婚姻届けのくだりでは、嬉しさよりも、家の片付けも引っ越しの話も進まないから不安だけが募っていたとのこと。
まぁ、だからこそ家を出た方がという話にもなるんでしょうが、そこは当人らしかわからない事情などもあるのでしょう。
12月に同棲解消しているので11月に1回だけ払ってもらえたようです。借金は無いと言っていた証人さん、56回払いの借金が生まれた瞬間です。
被告人質問・弁護側② 〜自分は性行為で返している〜
お金の問題がどんどん大きくなってくる同棲後半の話です。
ここ少し分かりにくいですが、被告人としてはリボの払いと、元嫁への支払がありますが、普段の食費などはもう抜きにして、さらに1回なされた1万円の支払いを差し引いた金額を払って欲しいと思っていたのですが、証人としては急に家賃の折半の相殺や自身との性行為で充分だろうと、自分の借金は50万円だとして借用書を作ったとのことでした。性行為を単価として考えろって…。
なので、被告人としてまだ払ってもらいたい額は8~9万円という認識のようです。
もちろん、あくまで被告人の主張なので真実性はわかりませんが、元嫁へ支払わせているメッセージも残っていますし、証人も相当です。
撮影については意見が真っ二つに分かれていますね。リベンジポルノは確かに裁判としても増えていますし、かなり大きな問題でもあります。
一方で、前記事ではカットしていますが、証人は動画撮影について結構生々しい発言をしていました。そんな嘘思いつくかなぁという思いと、リベンジポルノに怯える女性という構図がなんとも難しいところです。
事件の肝となる、脅迫的な文言についての話。
裁判の論点は、ここに恋愛感情が充足されない恨みかどうかという点ですが、証人への最終的な好意についてははっきりせず。
はっきりさせたい文言での主張は伝わるのですが、それが本来求めている金銭の要求との繋がりとも思いにくく難しいところです。
被告人質問・弁護側③ 〜傍聴席も揺れた弁護人の指摘〜
被告人の証人への思いがはっきりしないなと思っていたところで、裁判的にかなり珍しく、そして大事な話が発生しました。
検察官が証拠取調請求をして採用されている写真を被告人に見せようとする弁護人。
その前に裁判官に質問します。
揺れる傍聴席。検察さんも、別にわざとわかりにくくしたわけでないだろうし、裁判官も尋問で把握するとは言ったけど、形として正しく変えさせる姿勢はさすが。
その一方で、裁判官の異動期でもある4月を超える可能性があるのか?と少し怯える普通氏。
さて、その被告人に見せた、日付が当初視認が難しかったとされる、被告人が友人に送ったメッセージの写真に書かれていたのは
というもの。
これが、同棲解消後に送られていたと判断されれば、それは好意が継続している中での犯行と思われることでしょう。印象が全然変わってきます。
ここで弁護側の質問は終了。法的な判断はわかりませんが、主張したいことはわかりました。
さて、続いて検察官の質問で、新たな事実が出るのか!?と思ったのですが、被告人体調不良につき、いったん休廷を挟み、そのまま体調戻らずということで別日に延期になりました。
傍聴席からいったん外に出されて待っていたら、裁判長がわざわざ法廷の外に出て、次回延期について直接伝えてくれました。
弁護士に限らず、裁判長もいろいろ殻を破った対応をしてくれるから、この裁判の傍聴は止められません。
検察官のターン!にならず…だけど大事な話2点
2週間後に行われた期日、検察官からの質問かと思いきや、弁護人からとある申請がありました。
それは傍聴席に向けて「手話通訳」を入れて欲しいというもの。傍聴席に聴覚障害の方がいる可能性も鑑み、その措置をして欲しいとのこと。
う~ん、具体的にそういう方がいるのであればまだしも、可能性では不可ではないかなと思いました。
そして裁判所の判断は、その措置はとらないというもの。
その理由として、
なんとなく、僕もそんな感じがします。でも弁護人は引き下がりません。
なんと、被告人が求めていたとのこと。
しかし対象は傍聴席という申請であったような気が。これは追々出てくるので、その辺りの整理は後ほど。
手話通訳についてはこれくらいだったのですが、もう一つ弁護人から意見が。
どうやらこの日の公判前に弁護人は、前回の公判での被告人質問の様子について裁判所の録音を聞きに行ったとのこと。すると、この日の直前の金曜日に調書がすでにできていたとのこと。
その連絡がされずに、裁判所に行ったらあることを知らされたことに怒っていました。
しばらく揉めていましたが、弁護人としては検察官の質問が終わったあとの補充質問に使いたいから、休憩を長めにとってその間に聞かせてくれと主張。
それは裁判長は認めたのですが、この後の展開からなのかその求めは自ら撤回されました。
被告人質問・検察側① 〜元妻との子をフェリスに入れたい〜
ようやく検察側のターンです。
この裁判、弁護人と裁判官のやり取りが注目されていますが、検察官もじっと耐えたり、いろいろと対応を余儀なくされたり大変なことと思います。
そんな鬱憤が爆発して・・・という訳でなく、普段通り冷静な質問対応でした。
※被告人質問では証人のことを「Aさん」にしてましたが、この記事では「証人」で統一します。
被告人が証人に対しての愛情の気持ちが強かったのではないかという質問ですかね。さらに深掘りされていきます。
「今日来ないとすぐ別れる」と言われて、行ってしまうのはやはり被告人自身の恋愛感情の表れなのかなとは思います。借金のことは知らないまでも、アシスタントの一人などという表現はしていましたが。
実の子のクリスマスプレゼント代もせびってるくせに、フェリスに入れたいじゃないんだよ。それなら、投げ銭をそのまま貯金箱にinすればいいのに。
被告人質問・検察側② 〜異議あり!ではなく・・・〜
一応、50万円は返ってきた模様。それくらい払える資力はあるんですね。リボなくなったから、給料をまるっとそっちに回せたから?
そういった流れの中、
異議であれば、質問のやり直しだったりの判断が発生するので確認しましたが、まさかの感想。イレギュラーが本当に多い裁判です。
その後、メッセージしても返事が少なくなり、ブロックされてしまう。ブロックされたことでアクションしなければと思ってしまったとのこと。
ここが検察さんの肝ですかね。
「大ウソつき」や「償え」の意味が、「結婚してくれると思ったのに~」という恋愛感情からだったら大万歳でしょうけど、そうでないにせよ目的と行動(文面)が伴っていないから不合理という話になるんでしょうかね。僕もそう思う。
最後の方はちょっとちぐはぐになってきた印象がありました。これまでの受け答えに比べて一貫性がないという話ではないのですが、少し恨みが先行しているというか。
ただ、被告人からの供述をそのまま信用しないとしても、やはり冒頭からの通り、恋愛感情が充足されない不満としてという話にどう繋げるのかなという、次回行われる検察さんの主張が気になる感じではありました。
被告人質問・弁護側の補充と裁判官 〜なぜ被告人は録音を求めてきたのか〜
休憩を挟んで、検察官の質問を踏まえた上で、弁護側の補充質問が行われました。
証人尋問では双方からあんま音楽の話題が出なかったので、証人が意図していたことはわかりません。
ところどころ「人のせいにしない!」と語気を荒くして聞く弁護人。
そうなんです、被害者……は当たり前かもですが、お互いが「あっちが勝手に」という主張が多く、自分の本心というのが双方とも全然わからなくて。
味方である弁護人に強めに言われ少し戸惑ったかもですが、ぽつりぽつりと話し始めます。「謝罪して欲しい」、「借金返済して欲しい」、「動画削除」、この3つが動機として挙げられました。
涙ながらに語る被告人。荒療治に見えなくもないですが、信頼してきた関係性だから成せるものかなとも感じます。
裁判所としての記録はどういう扱いかわからないので、録音によって被告人が求めているものがどのように実現するのかという課題はありそうですが、裁判への思いが聞けたのはよかったです。
録音が話題に挙がることが多いですが、裁判における録音、記録とは?、弁護人の役割とはなんなのか?など裁判制度そのものについて考えることが多かった一連の流れ。改めていろいろと考えさせられました。
その要望に応える義務はないのでしょうが、そこからサラリと質問を始められる裁判官のメンタルに改めて驚かされたり。
今日一、鋭い質問だった気がする。しかし、被告人も咄嗟の交わしとしてはなかなか。
以上で、この日の質問終了。
もう僕の分析より、近々行われる検察官、弁護士の主張を正しく聞き取る方が誤解を招かなくていいでしょう。
次回は検察官による論告、弁護人による最終弁論、そして被告人の最終陳述です。
予定時間は90分。
頼む、もってくれ俺の右手。