Z世代に伝えたい薬物克服の困難さ(覚醒剤取締法違反) 傍聴小景 #18
先に軽いオチ的なことを言います。
だって、Z世代と呼ばれる方々は、話の要点を聞いてから本編に進むらしいじゃないですか。
裁判官の見せ場ってどこでしょうか。僕に言わせりゃたくさんあるのですが、その一つが判決の宣告でしょう。
「主文 被告人を懲役一年六月に処する!」
裁判傍聴の経験はなくとも、この宣告をする仕事の人という認識くらいはお持ちでしょう。
この判決宣告、たまに見せ場と思うのか、すごく声を張る人がいます。それ以外の進行以外は普通なんですが、その判決主文のときだけ、初めてであれば「びっくりした~」となるくらいに大きな声となります。
とはいえ、判決って「これから宣告しま~す」的なのがあるので、大きな声でも驚きはしますが、心の準備はできているんです。
今回の僕のように判決以外のことに頭がいっていなければ。
はじめに
私はどうも裁判関係者の中で、裁判官が人として好きになる傾向が強いようでして。今回の裁判官も以降大好きな人の一人になるのですが、今回はその人が行う裁判を傍聴するのが初めてでした。
裁判が始まれば、そんな裁判官を見ることなどないので、話を裁判に戻しますが、
警備員に連れられて法廷内に入った被告人、ずっと下を向いています。結局、ほぼ顔を上げることなく終わってしまいました。
そんな彼が何をしたかと言うと。
事件の概要(起訴状の要約)
なんと迷惑な話でしょうか。
親御さんとしては、子どもの交際相手が覚醒剤を使用していただけでもショックなのに、それが家で使用していたとなると、近所の目もあるでしょうし、普段その被告人が家で何をしていたのか気が気でないでしょう。
あらかじめ言っておくと、被告人の交際相手、そしてその一緒に住んでる親御さんはこの覚醒剤の使用については全く関与していません。それどころか、同種の前科がある被告人に対して、その前科を把握した上で更生させるために住まわせてあげていたのです。
違法薬物の事件は被害者がいない云々と言われることもありますが、裏切られたこの二人のことを考えたら十分に被害者でしょう。
検察官による証拠の提示
仮釈放時の犯行とはとにかく犯情が悪い。
まぁ世の中には、裁判を受ける前に保釈金を払って、その期間に新たに覚醒剤を打つような猛者もいるにはいるのですが。
さて、ここで一つ疑問が出てきます。
被告人は警察での取り調べで、性欲を高めるために使用したと供述しています。交際相手と同居していたのだからそういう行為も当然していたのでしょう。
でも、それでいて交際相手には覚醒剤の使用を気付かれないものなのでしょうか。
僕は覚醒剤使用によって人がどう変わるかはわからないので想像ですが、そういう行為のときだけ何か人間性が変わったりすれば気付くんじゃないかなと思ったのです。本当に、そういう異変には本当に気付かないのかもしれないですし、これは憶測の域をでませんが。
そんな交際相手ですが、その2回の前科と今回の犯行があったものの、まだ被告人を許す気があるとのことで、証人と出廷するとのこと。
裁判官に「証人の方どうぞ」と声をかけられて立ち上がったのは、男性でした。いわゆる同性愛者のカップルでした。
ここで言っておくのが、同性愛者の裁判だから記事にしたわけではないということ。それはご理解の上、これ以降もお読みください。裁判事実として、あった以上のことも以下のことも書きません。
証人尋問
定期的に感じる文字メディアを通じての限界と、私の筆力の無さ。
この方、喋り方もメッチャ塾講師で普段から話慣れているのか、声は通るは、ハキハキしているわでとても聞きやすい。そういう方がお話ししている前提で今後もお読みください。
本当によく言葉がスラスラ出てきます。そして、被告人のことをよく思っていることが伝わります。
ただ悲しいかな、弁護人との質問のやり取りは、事前に詳細に準備をしている可能性もあるので、言葉の真意を掴むのは安直にはいけないのです。嫌な人間ですね、僕。
思いが嘘だとは言いたくありませんが、弁護人が考えたストーリーに沿わされているケースもありえるのです。
本当に見てて辛いですけど、弁護人との質問のやり取りはバッチリだったのに、検察官になった途端、さっきまで答えられていたことがちょっと別の聞かれ方をすることで全然答えられないとかありますからね。さっきまでの勢いなんだったん?となります。
あと、今回は交際相手ですが、例えば自分の子どもが被告人でその証言に立つって場合、その息子がすごい荒くれもので、証人があまりに力感の無い方だと、すごく頑張って監督します!って言っても、「この人には厳しいんじゃないかぁ?」って思ってしまうストーリーの場合もありますし。
その無理なストーリーに検察官や裁判官から総ツッコミを受けているとき、弁護人が我関せずって顔をしてるときは証人への同情モードになってしまいます。まぁ証人に同情しても、被告人が再犯しないような環境づくりという点は何も解決しないので、傍聴している僕ってなんなのだろう…と思ったりもします。
話がだいぶ逸れました。
弁護人からの質問には塾講師スキルも最大限駆使して立派な応対をしましたが、これ以降はいかがでしょうか。
続けて検察官からも質問します。
見たかった~!「これでよろしいですか?」のときの顔を見たかった~!
ひろゆきが勝間和代を論破したときの顔に近かったのでは?と勝手に予想。検察官は明確な運用方法を確かめたかっただけだから、それ以上責めないであげて~
証人、大ピン~チ。
証人は嘘をつかないという法廷で宣誓書を読みますが、ここはもし気付いていたとしても「わからなかった」が正解でしょう。だって、感覚なんて人それぞれだし。
「コソコソしているとはどういうことかと思った?」に対する回答として
とどうやっても炎上の未来しか描けないのです。
証人、大ピンチなのです。
ウルトラCとはまさにこのこと。性的な話をして、検察官の話を聞く気を削ぐという、ひろゆき氏も真っ青な論点ずらしです。
しかし、それを傍から聞いていた裁判官は抱いた疑問を証人にぶつけます。
証人、またしても大ピンチです。裁判官のことは好きだけど、こんな鋭かったら遠くで見てるくらいがちょうどいいですね。
裁判官からの質問に対しての答えとしては正直、不十分ですがここまでしっかり答えられるのは、これが本心と感じられるというもの。
監督をするといっても、証人自身の生活があっての中で出来ることには限界があるのは当然。状況の把握ができているのであれば、あとは改善ポイントを見つけるだけですね。
あと、冒頭で気になっていた、覚醒剤を行為する際に使っていたら相手は気付かないのかという問題ですが、別の人間との行為と捉えれば、確かに矛盾点は解消されますね。
証人の応対はかなり十分なものだったのですが、かたやの被告人はずっと下を向いたまま。証人の語りかけにも顔を上げることはありませんでした。
被告人質問でも、「もうしません」「反省してます」を小声で繰り返すばかりで、とても不安が残る内容。
最後に裁判官が被告人に語りかけます。
ただの頑張れで終わらせず、なんて素敵な言葉を投げかけるのでしょう。
これでこの日の裁判は終了。被告人が手錠をつけられ、裏に下がっていく中、証人は一人傍聴席に立って、その背中を見送っていました。被告人が見えなくなると、証人は裁判官の方を向き、軽く会釈をし、裁判官もそれを返すという光景も。
そこには、裁判官からの「被告人のこと任せましたよ」というメッセージがあったのではと勝手に想像。
いやぁ、いいものを見ました。
ただ悲しいかな、今回の件で被告人に実刑は免れないのはほぼ確実。
そんな中で、初回の裁判を終えて被告人は顔を上げることができるのか、
そして裁判官はなにか声をかけることがあるのかととても気になったので、三週間後に行われたの判決宣告の裁判も傍聴することに。
判決の日
そんな判決の日ですが、傍聴席は僕一人でした。
あの証人は仕事の都合なのでしょうか、いませんでした。この三週間で関係性が悪化したとかでなければいいのですが。
裁判官が法廷に入ってきました。法廷内を見まわし、傍聴席に一人いる僕のことをなんか見ている気がします。
裁判官に限らずですが、傍聴席に一人座っていると、「この人なんなのだろう」と見られることがあります。その類かなと思ったのですが、やたら長い時間見られています。
そこで、私思ったのです、勝手な想像ですが。
裁判官は、傍聴席に座っている僕が、あの証人かどうかを必死に思い出そうとしているのではないかと。
裁判からは三週間も空きましたし、裁判官なんて多くの人を見るわけなので、完全に顔を把握できるわけもありません。またね、証人と僕が背の大きさや髪の毛の感じとかが似てたんですよねぇ。
もし、判決をひとしきり言い渡した後に、
なんて言われたときの気まずさと言ったらないです。
僕は必死に顔を横に振っていたのですが、その意図に気付いてくれたでしょうか、裁判長?
ただ、顔を横に振ってた変な人じゃないですよ。
そんな感じで、宣告される判決とは別のポイントでドキドキしていたところで、
と大声の判決が出され、本当に心臓が止まるかと思いました。そう、冒頭に振った声を張る云々はここでようやく出てくるのです。
まぁ結局、恐れいていた事態は起きなかったので、変に胸をなでおろしたのですが、今後、被告人はどういった人生を送るのか、裁判所で私の前に立つことはなくしてほしいと切に願います。
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