制裁裁判、法廷録音で話題!ようやく迎えた尋問期日で見えてきた真実(前編) 傍聴小景 #108(ストーカー規制法)
裁判によって、焦点が当たる人はそれぞれによって変わるものだけど、やはり被告人に焦点が当たるのがいいのかなと思います。
無罪を狙うのであれば被告人のリアル言葉を聞きたいものだし、量刑上の争いなのであれば被告人自らが事件とどう向き合っているのか。
それは弁護士に諭されるでなく、検察官に絞られて無理やり出すのでなく、素の言葉が聞きたいのです。
さて、そんな中、弁護人に焦点が当たったことで一部界隈では有名になった裁判がありました。
「録音弁護士」などとも呼ばれる中道一政弁護士が弁護を担当するストーカー規制法違反の裁判です。裁判の最中に、正しい記録作成を訴えるなどから、録音を主張し続けて、その結果裁判長から退廷命令が出て、それにも従わないことから手錠をかけられて、制裁裁判なるものに弁護士自らかけられることに。
詳しい経緯などはこちらの動画をご覧ください。
この裁判、なかなか続報が出来ていなかったのですが、2024年2月現在も続いております。そしてようやく肝となる、証人尋問、被告人質問とありましたのでその様子を二回に分けてお届けしたいと思うのです。
録音の主張については、闇雲にただ言っているわけではないというのは、世間はともかく、ここの読者さんなら感じているところかと思います。そこからさらに踏み込むような話になればと思っています。
今回は、これまでの話と証人尋問まで、
来週更新の次回は被告人質問の様子をお届けします。
はじめに ~制裁裁判とその後も続ける録音要求~
僕が最初に傍聴したのは23年5月。でも、それは2回目の公判で、僕が見ていない1回目があった。
傍聴仲間からは、「録音について主張してばっかで裁判が進まなかった」とだけ聞き、そんな訳あるかいなと思いつつ、話が進んでないなら2回目からでも大丈夫だろうと思ったのです。
詳細はここでは書きませんが、ここで制裁裁判となる弁護士の退廷がありました。
自分の弁護士が、法廷でもはっきり意思を示してくれるのは頼もしいだろうなと思う一方で、そんな頼もしいはずの弁護士が目の前で手錠をつけられて出ていくわけですから、どれだけ不安だったことでしょう。
被告人は泣き崩れるように「先生~(´;ω;`)」となっていたのが印象的でした。
次回は6月でした。そこでも録音を求めました。当然、却下され続けます。裁判長からは「これ以上続けると、その先を言うことになりますよ」などと、直接的な表現だけでなく少し匂わせなんかも。
弁護士はその場の録音を求めるのもですが、調書の記載内容への異議、質問状に対する回答を求めるなどなど、あの手この手を駆使します。しかし裁判長は退け続けます。
人によっては「この弁護士、いたずらに長引かせてどうするんだ」と思ったでしょう。「裁判長も少しくらい応じてあげればいいのに」と思った方もいるかもしれません。僕としては両方の感情があったように思えます。
この裁判長、別に冷徹って訳でもないので、定期的に被告人の様子を伺います。
そんな不安がある状態で、結果としてまた退廷を命じられました。
被告人は「先生、また逮捕されるんですか?」と号泣。
そして、体調を崩されてしまい、その後は傍聴人も外に出され、傍聴人の看護経験がある方(?)が手伝ったりとドタバタでした。
その次の回も冒頭は、もはやお決まりのごとく録音を求め、新たな見解からの意見を述べていきます。でも裁判長もさすがで、もともとの知識なのか、過去の例を引っ張っているのか、ことごとく打ち返していきます。
この日はこれまでに比べると、早めに切り上げ、4回目にしてようやく起訴状が読まれることになりました。
しかし、ここで疑問だったのが、どうしてそこまで録音にこだわったのだろうかということ。
もちろん、しっかりと裁判に向き合う姿勢、記録が正しく取られることを望むというのはわかります。しかし、「それにしても…」という印象が拭えません。
果たしてこの謎は解き明かされるのか、そして裁判上どう見どころが展開されるのか。
裁判はようやく少しずつ進んでいきます。
事件の概要(起訴状の要約) ~恋愛感情が満たされない?~
なかなか強烈です。数度に渡る紙片送付の行為もですが、中の文章も強烈です。
ただ、強烈は強烈なのですが、これが恋愛感情が満たされないことによる怨恨の犯行なのかと言われると、現時点では少し「?」となるところ。
「結婚詐欺」であったり、性的な表現も多いので何かしらの関係性があったのは間違いないようです。
少しずつ通り始めた弁護側の主張
起訴状読み上げの裁判から、1回は僕が見れなかったので、その次の期日にまたも変化が(変化がなさ過ぎて動きがあることに驚いているが…)。
録音がダメならばと、弁護側が別途雇った速記の人を法廷内に入れるよう請求している。
刑事訴訟規則によると
これを引き合いに出しているようです。
確かに裁判長の許可を得られたら、措置はできると書いています。ただ、録音に関しても裁判長の許可を得たらという点は同様なわけで厳しいかなと思っていましたが、案の定不採用。
しかし、それには屈せず引き続き必要性を訴える弁護人。
裁判長は法廷内ではなく、傍聴席から傍聴人としての速記は許可。
機械とかを用いるものも、音などで明らかに弊害とならなければ許可するし、傍聴席で前方など希望するなら可能な限り配慮するとお伝え。
しかし、なおも食い下がらない弁護人。音だけでなく、文字として認識をするため、弁護側の手元にある資料も見ながらやることでより正確性が実現すると主張。結局のところ、その主張は通らず進行することに。
傍聴席で速記を担当する方を後ろから眺めつつ、新たな疑問が。
「この記録を何に使うのだろう?」
当初、録音を求めていたのは、弁護側の主張を正確に記録し、裁判上の不備の指摘や、公平性の実現などに活用するものかと思っていました。
しかし傍聴席での速記となると、正確性は間違いないだろうが、裁判において「この速記にはこう書いているけど記録と違う!」とは出来ないはず。言うなれば僕のメモと同じような扱いだから。
となれば、別の目的があるのか、それとも次の展開に向かうために布石的な意味があるのか。まだまだ読み切れない。
採用された証拠類 ~金は相手が勝手に払っただけ~
一部の検察官証拠に弁護人が取調べに同意。ただ、大変申し訳ないことに、僕に別件があり、ほんの一部しか取調べを傍聴できなかった。
一応事実なので伝えておくと、被害者は被告人の10ほど歳上の方なんですね。年齢だけで判断するものではないですが、年下の被告人になかなかな金銭的な依存をされていたようですね。
果たして、その実情はいかなるものだったのか。
次回公判に予定された被害者の尋問に俄然注目が集まります。
証人の遮蔽措置論争
この日は注目の証人尋問ということで多くの傍聴人が訪れました。
しかし法廷内の証言台と傍聴席の間には大きな壁がありました。証言者が証言に際し、精神の平穏を害される恐れありなどの場合に行われる「遮蔽措置」というものです。
そもそも一つ疑問がありました。
裁判のはじめから被害者については事件の性質上、秘匿決定というのがなされ、お名前などは明かされませんでした。別にこっちも積極的に知りたくもなかったですが、子ども、女性が被害者の場合になされやすい印象があったので、少し意外でした。
この遮蔽措置の決定についても弁護士から求釈明がありました。
しかし、これまでの異議とは少し異なるのが、実はもともと検察側は証人と被告人との間にも遮蔽を設けていたにも関わらず、弁護側の指摘を受けたためか証人側との遮蔽は排除した決定をしたのでした。
その決定ができるのに、傍聴席との壁は排除できないのかという異議でした。
裁判長からは、
といった説明がなされました。
被告人との間の遮蔽撤廃について、非常に合理的説明だったように思えます。ただ、この合理的な判断ですが、他の裁判では見たことはありません。もちろん事件特性にもよりますが、Xで呼びかけても、一度申請された遮蔽措置が一部でも撤廃されたという例は寄せられませんでした。
僕みたいな小者だったら「少しだけでもこじ開けた」と満足しちゃうことでしょう。
しかし、それで納得しないのが弁護士という仕事。「これまで録音については説明してこなかったのに何故これは説明するんだ」など、ここぞとばかりに録音議論を復活させていました。
検察側としては、傍聴席との遮蔽について「証人が傍聴席との好奇の目にさらされる」といった理由としていたようですが、そんなこと言ったらどんな裁判でも同じことでは?と思ってしまいます。
……
……
あ、俺みたいな物書きのこと言ってるのかな?
検察さん、僕は悪い物書きじゃないよ(´;ω;`)
それまで裁判長は「やめろ」など時に厳しい口調になっていたのですが、このときには「もうやめよ」、「わかるでしょ」、「納得できないこともあるだろうけどさ」などと優しくなっていたのが萌えました。
むしろこのやりとりの方が、好奇の目にさらされている気が…。
そんな中でも裁判長は「私も今、納得できないこともあるけどさ」と、暗に弁護士にチクりとしていたのがツボでした。
証人尋問・検察側 ~同棲前までの関係性~
なんやかんやで、ようやく証人尋問です。
長ぇよと思う読者の方もいるかもしれませんが、裁判でのごちゃごちゃはもっと長いんですから、文章だけでもちょっとくらいの長さに付き合ってくださいな。
被害者が証人として証言台に。当然、傍聴席からはさっぱりわかりません。今後、呼び方は証人とします。
検察官から質問します。
まずは被告人との出会いについて。
被告人と出会ったきっかけ(以降「1回目」)は、一昨年前にライブハウスにて。
被告人の第一印象はかわいらしい人だなと感じ、フェイスブックの連絡を取り合うことに。話題は音楽について。好意を感じるメッセージを送ることも、受け取ることもなかった。初対面では、結婚などの話は出なかった。
2回目に出会ったのは、初対面から10ヶ月ほどの昨年8月。
クラリネット奏者のリサイタルで、なかなか人が集まらないからと、被告人と、もう一人を誘った。リサイタル後、彼で音楽の話などした後、帰る方向が一緒だったので、証人の車に乗せて駅まで送ることに。
かなり詳細な記憶です。
ただ、途中で被告人も首をかしげていましたが、細かい食い違いはあるのでしょう。ひとまず恋愛感情の方向性や同棲までの流れとなりそうです。
後々争点の一つになるのですが、今のうちに補足をしておくと、証人は離婚をしており、現在独り身ではあるようです。
次に会ったのはその5日後(以降「3回目」)、被告人から「泊めて欲しい」と連絡があり、被告人の友人とタクシーで証人宅へ。友人はすぐ寝てしまったので、ここで2度目の性行為をした。
交際についての証人としての考えは変わらなかったものの、被告人からは毎日のように「結婚したい」といったメッセージが来るようになったとのこと。
翌月も「会いたい」と被告人が言ってくるので証人宅へ来た(以降「4回目」)。手料理などをふるまってもらい、その後性行為するようになり、それ以降は毎週末被告人が証人の家に来て会うようになった。
別に双方結婚していないので、男女関係は好きにしてくれたらと思うのですが、その関係性について証人自体はどう思っていたのかがわからずやきもきします。
被告人が「結婚して欲しい」と主張はわかりました。でも、証人はどうったのでしょうか。
確かに、序盤では交際の気はないと言っていました。
しかし3回目までは交際の気はないと言っていた証人ですが、4回目ではその意思は特に聞かれなくなり、毎週被告人を家に招くことに。
そしてその翌月、同棲することになりました。
「ダラダラした交際が嫌だったので」と証人は答え、「無理やり来させるなどもないですね?」という検察側の質問にも肯定はしました。
なんか積極的な主導権はないような感じはしますが、「ダラダラした交際が嫌だった」という一言で、自分の気持ちは特に語らず、そこに集約させてる感じがよくわからず、やっぱりモヤりました。
証人尋問・検察側 ~借金の清算は終わっている~
同棲以降のやり取りは、頻繁に被告人が首を横に振っていたので、かなり言い分に違いがありそうです。
証人曰く、被告人はとにかく執拗なやきもちがあった。「仕事へ行くな」、「何歳以内の女と口を聞くな」など。
しかし、証人自体は被告人との結婚の可能性について「上手くいくならいいか」と考えていたとのこと。
あれ、随分と態度変わってないか?
2人で一緒に婚姻届を取りに行ったこともあるとのこと。(こちらのメモ不足でそれがどうなったかは不明)
食費は基本的に被告人の負担だった。
特に被告人から請求されたこともないし、暗黙の了解だった。靴をプレゼントされたことはあった。特に頼んではおらず好意として受け取っている。
お読みいただいていてわかると思うのですが、なかなか証人さんはお金にアレな方のようでして。そして、そこに申し訳なさというか、裁判の展開的にあんま不利なこと言いたくねぇなぁ感もないんですよね。
象徴的なのは、「借金はない。でもリボは50万ある」という発言ですよね。事件全体がどう展開するのかよくわからなくなってきました。
ちなみに性行為に関しては、動画撮影をしていたことも質問されていました。
すでにはデータは消したとのこと。撮影した理由は被告人が喜ぶから。撮るきっかけがないと喜ぶも何もないとは思うけど。
そして、そんな同棲生活に終わりが来ます。
同棲開始から2ヶ月のことでした。
どっちの肩を持つということではないんですが、なんかよくわからないんですよね。
もちろん、過去の交際時のやりとりを詳細に覚えていろという方が無理があったり、嘘っぽいとは思うんですが、交際前のやりとりはすごく細やかに覚えていた割に、同棲以降の話、特にお金の話がちょっと掴めなくて。
交際前は、被告人が迫っていた感の主張はわかりましたが、途中は証人が割とノリノリになって、急に最後になってまた別れたくなかったからと印象付けたいような受け答え。
被告人が行ったことの法的判断は正直判断つかないけど、被害を受けたという本人からの言葉を聞いても「恋愛感情が充足しなかった恨みから」って印象は全く抱かなかったんですよね。
この話のあっちこっち感は、確かに正確に残しておいてもらわないと、事態の把握に難しいかなと思ったりも。
証人尋問・弁護側 ~元嫁のディズニー代は誰のお金?~
ここから弁護人のターン。
すでに結構、設定(?)が粗いのに、裁判官にも噛みつくこの弁護人の尋問に耐えられるのか。
別れ話はお金の問題でしょ?としたいのでしょう。
ってか、独り身のはずなのに14万円の家に住んでたのか。それで手取り30~40はかなりキツイ気がする。
たぶん、今後もこの感じで語ることになるけど、被告人が有罪か無罪かは正直よくわかんない。でも、この証人きっついわ。
というか、ここまで来ると、どうしてこの証人と交際を続けていたのかという、そっちの方に関心がいってしまう。
大荒れも大荒れ。
この「別に良くないですか?」に、ひろゆき感を覚えていただけたなら、私の筆力も上がってきたことでしょう。
その後、元妻からの督促メッセージを証拠類から探すも見つからず。法廷で証人の携帯でせっせと探そうとするも見つからないので、裁判後に別室で探すことになりました。
裁判官が「はい、尋問続行!」と促す感じが、甲子園で球児をダッシュさせる審判みたいでちょっと面白かったり。結局そのメッセージは見つかったようで、証拠として採用されました。
その後、5万円の靴、整骨院代、薬代なども出してもらっていることが判明。もう何を払われていても驚きません。
証人尋問・弁護側 ~若い女と油は搾れるだけ搾る~
同棲解消後のお金の清算の話に。
食費と水道代を天秤にかけるとは…。
どれほど普段、水道をじゃぶじゃぶ使っているのでしょう。そして最後の電卓云々は、返す額は被告人が決めたから、自分は返済済みだと言いたい様子。
するとここで、急に裁判長が入ってきました。
裁判長としての職務なのか、同じ男として信じられないという思いなのか、少し苛立ち気味で聞かれていました。
この方、録音不許可などが先走っていますが、それ以外は気を配ったり、鋭い質問をしたりする方なんですよとフォロー。
証人、声を荒げる。しかし、証人に見せた証拠がこっちにはわからなかったのだけが残念。
証人が言っていた、被告人の積極的なアプローチが嘘とも思えませんが、被告人の送った文書が事実無根かと言われると、なんだかそれには首を傾げたくなる、証人の怪しさがあります。
だからといって怪文書はダメだとは思いますが。
弁護人からの質問は終了。
最後に裁判官から、リボの肩代わりに対する返済の1万円の根拠について「僕は結婚するつもりだからゆっくりでいいかと思った」という理論と、別れたあとにtwitterに罵詈雑言が書かれていたのを見たという証言は取りました。
この日の裁判はこれで終了。
なんか犯罪の争点と違うところで証人のアレな感じばかりが目立つ尋問になってしまいましたが、裁判長が争点を整理します。
次回は被告人質問で、主張をたっぷり聞きたいと思います。
弁護士が目立ってきた裁判で被告人はどんな言葉を発するのか、弁護士に録音要求を続けた理由などが明らかにされていきます。
来週の更新をどうかお楽しみにください。
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