「疑わしきは罰せず」はやっぱり難しい。服役前科がまさかの弁護側の武器に 傍聴小景 #110(組織犯罪、詐欺)
こういった物書きをしていると、「疑わしきは罰せず」という基本原則を念頭に置いた上で発信をしなければならないと思っております。とは言え、法律のプロらが頭を悩ませる訳ですから、私が悩まないはずがない訳でして。
例えば全部なり一部なり事実関係を争う方がいます。
その主張に納得できる場合、「言ってることはわかるし、認めてあげていい気がするけど、判決ではどうなるかなぁ…」とドキドキします。
でも、たまに「言ってることはわかるんだけど、これで無罪になってもなぁ…」と思うこともあります。それほど、1ミリの疑いの余地を残さない立証というのは難しいと思うのです。
はじめに ~福岡の人が大阪で裁判!?~
被告人は今どきな若いお兄ちゃん。
お仕事は会社員とのことですが、初公判から判決までの3ヶ月強、身柄拘束は解けなかったのでお仕事はどうなってしまったのか気になるところです。
もう一つ基本情報で気になるところが。
この方、現住所が福岡県の方だったんです。もちろん裁判の内容はいつもと同じく大阪地裁の話です。
裁判は被告人の住所ベースでなく、起訴した場所、つまりは大体がその事件が発覚した場所になるので、福岡にいながらにして大阪の犯罪に関わった疑いがかけられているのは何故なのかと想像が膨らみました。
そして、その福岡にいながらしてという理由はすぐにわかるのですが。
事件の概要(起訴状の要約)
これだけだとイメージしにくいかも知れませんが、特殊詐欺の振込先を被告人口座として、それを組織の人間に渡すために引き出したという事件です。犯罪で得たお金の行方をわからなくすることで捜査の手を撒こうという話です。
振り込んだ先の被告人は福岡の人ですが、その詐欺被害者の方が恐らく大阪の方なので(裁判では特定されず)、大阪地裁での裁判になったようです。
そしてこれに対する被告人、弁護側の認否。
詐欺行為とは知らず、言われた通りにしただけという主張です。
本当に知らなかったのか、知っていたけど具体的な指示とかは通話などで記録に残ってないから無罪としての主張なのかなど、これまた想像が膨らみます。
そして、このような形での無罪認定ってのは一定数あるのです。
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