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シニア、雇用延長は為ならず

「定年延長はシニアのため?」、日経新聞のコラムがあった。年金受給年齢が伸びて、企業は65歳までの雇用確保が義務付けられ、また70歳までの定年延長が努力義務とされている。だが、それがシニア本人にとって本当に役に立っているのか。「人生二毛作」というなら、はやく会社を追い出してあげた方がいいのじゃないか、という論旨だ。

大いに賛成だ。先日同僚のIさんと飲む機会があって、事前にこのコラムをメールしておいた。

「その通りだと思うよ」

彼はシニアになって、5年間の職の安定が確保できた。が、そろそろ
次のことを考えなくてはならない時期がやって来る。彼の思いを聞いた。

「65歳過ぎても、出来れば、残りたい」
「残れるの?」
「可能性はゼロじゃないけど」
「なぜ、残りたいの?」
「だって慣れてるから楽じゃない」
「残れたとしても、いつかは終わるでしょ。そのあとはどうするの?」
「いや、家にいると窮屈だし、年金だけだと小遣いが減らされて飲みに行けないし。仕事はまだやりたいと思っている」
「65歳過ぎれば、就職口って限られるのじゃないの?」
「そうなんだ。ネットで見たら、今の仕事みたいなのは皆無だ。だから残りたい」

「Iさんは顔が広いから、コネがあるんじゃないの?」
「それがねえ、それとなく聞いてるんだけれど、厳しい」
「いっそ、別なことをしてみたら?」
「通信教育や大学講座も考えたんだけれど、身が入らない」
「どうして?」
「資格をとっても、就職できるとは限らないし、自分に向いてるかもわからない。だから、続けられるうちは今の仕事をやりながら、考えようかなと」
「でも、早くやらないと。見つかった時にはもう70歳だったじゃ、遅いよね」

日経のコラムは言う。
「ときには会社という『楽園』から追い出してあげる『優しい肩たたき』が本人のためにもなる」

Iさん。
「その通りなんだろうけど。でも、『楽園』からは出たくないんだ」

シニアに風当たりが強い職場もある。仕事が与えられないで、ただ時間を費やすのはつらい。でも、それさえ辛抱すれば会社は「楽園」なのだ。出たくないのは、Iさんだけじゃないような気がする。

シニアの雇用延長、本人にとっても、周りにとっても、お互いに為ならず。