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中国の「処理水」と訪日団体旅行再開

EUが日本からの輸入規制を撤廃する中、フクシマの「処理水」放出を前に、中国が日本の水産物輸入に対する放射性物質の検査を強化した。一方では、訪日団体旅行を再開するという。この矛盾、どうなってるのかと思うのだが。

中国の原発から放出された排水中のトリチウムなどの放射性物質の量が「中国核能年鑑」に記されている。浙江省秦山原発のデータはフクシマの放出予定「処理水」の約10倍だ。

それを指摘しても、それがどうした、と彼らは意に介さない。中国のは処理した水だが、フクシマのは「核汚染水」で同じではない。中国の処理水は、トリチウムの数値は高くてもそれは仕様だ。フクシマのはメルトダウンした炉心から発生した「核汚染水」で、コントロールできない危険なものだという。

日本政府が科学的論法で説得しようとしても、通じないだろう。彼らには自分たちの「科学」があるから。

2008年北京オリンピックが始まる少し前、以前勤めていた会社で、中国に生産拠点をつくろうと計画した。それまでに何回かは訪問したことはあったが、あらためて本を読み、情報を求めた。勉強になったのは、中国学者の竹内実さんの著書(『中国 欲望の経済学』など)と、当時東京都知事だった石原慎太郎さんの言葉だった。

石原さんは中国を「支那」と呼び、批判にも「尊敬して昔の呼び名で呼んでいる」と、どこ吹く風だった。その彼が「中国とは交渉しても、はぐらかされる。何か買ってやれば聞く耳をもつ」と言ったのが印象的だった。それをそのとき実践しようとしたのは言うまでもない。タフな交渉の末、彼らの利をのんで合弁会社ができた。

10年以上が過ぎ、彼の国は「欲望の経済学」でGDP世界2位になった。ベトナムから西沙諸島を奪い、南沙諸島でフィリピンが領有していた地域に手を出し、「成金」的手法で南太平洋の島国やアフリカ諸国をかしずかせようとしている。「何か買ってやれ」は彼らの常套手段になった。

日本に対して、片方では尖閣諸島の領海、領空侵犯を繰り返し、「核汚染水」で輸入規制をかける。一方では訪日団体旅行を再開してヒトと金を使う。矛盾なんかじゃない。これは、彼らの揺さぶりなのだ。