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MXL V67G-HE で遊んでみる

なんかシリーズ状態になっている「低価格コンデンサマイク」で検証・実験してみる。今回はMXL V67G-HEでございます。

同メーカーのV67Gという入門価格のコンデンサマイクにヘッダ写真のようにショックマウントなどの豪華付属品がついたものになります。
なのにお値段は執筆段階で2万円前後ととてもお安い

MXLの評判

MXLというメーカーは他社の有名メーカーの音に寄せた製品を安く出すことを目的としているメーカーになるので、価格は安く定番に近い音を手に入れることができる。
いわゆる「これからの人がまずは手に入れる」タイプのアイテムが多い。
このマイクも型番の67という数字でわかる通りノイマンのU67っぽいものを目指して設計されたアイテムになる。

67という数字が目指した物

ノイマンのU67というマイクは古い真空管マイクで、今普通に購入しようかと思えば100万は超えてくる。そんなレジェンドを目指したメーカーが公式に目指したと発表しているのが
”Old school tube mellow”

昔ながらの真空管の温もりを感じられるような、と意訳できる。
これ、とても難しい。定義しずらいから。

ただ目標として尖った音ではなく、尖っていない、を目指したものと言えるはず。

実際に設置したり録音したり

せっかくの豪華セットなのでそのまま設置していこう。
ショックマウントは挟み込み式になるので、少しコツを掴まないと面倒に感じるかもしれない。C414などAKGのアタッチメント式がいかに素晴らしいかと思い知る。これを経験してしまうとノイマンのねじ回し方式すら面倒に感じてしまう。

録音遊びしまくった素直な感想

先に結論から書いておくと、低価格帯によくあるややピーキー目な音ではなく、かなりフラットに近い。もちろん、感度であったり繊細さ、厚みなどはスタジオで使っているマイクには届かないものの、家庭内で気軽に使える価格でフラット気味ってだけでかなりありがたい

周波数特性

先日実験したLCT240PROであったりAT2035などはhighが数字以上に上がって聞こえたものだが、このマイクはそう言った変な癖は全然感じない。
周波数特性を見ても多少の上下はあるものに、比較的にフラットを意識しているのがわかる。
録音してみた感じでいうと厚みのある男性の声にいいかな、と思うが声の高い女性だと向いていないってほどでもない。
低価格帯では珍しいぐらいフラットに寄っている感想。

発声判断に使える?

もちろん安いマイクなので数字上のスペックはお世辞にも高くない。S/N比も大したことないので、ノイズが乗る可能性は当然いいマイクよりも高い。感度も低めなので何でもかんでもそのまま音を拾ったりはしない。

ただ、感度の低さは楽器録音でも音割れしないことや、周囲の雑音をそこまで拾わない便利さがあるとは言える。

しっかりと声を張って録音できる人にとってはとても便利なのだ。
通話程度の発声では録音バランスメタメタになるのだが、しっかりと声を張れば比較的狙った通りに録音できる。
楽器の録音もやってみたが結構雑な距離でもちゃんと録音できる。

つまり「ちゃんと音を出せる人にとっては、ひとまずこれでいいんじゃないだろうか?」と割と真顔で言える。
細かいニュアンスまで求める場合は素直にスタジオ行って、いい環境でいい道具でやればいい。自宅でひとまず録音するのであればこれいいチョイスなのではないかと。

たまにこのマイクがネット上の歌ってみたのお勧めに上がっているのを見かける。このマイクで綺麗に歌を録音できるならちゃんと声を出せていると言えるけど、発声の訓練もしていなくて適切な距離や声の音量を知らない段階でこれ扱うの難しいかもしれない。
通話音量で声を拾うぐらいインプットのゲインを上げると、やたら吹くというかポップノイズや歯擦音を拾ってしまうのだ。正直、通常の通話音量だとどう工夫しても使えない

ある意味、このマイクで綺麗に録音できるかどうかが初心者と中級者を見分ける条件にすらなる程度に、声を張った時とそうじゃない時で差がある。

ちょっとだけ個人的な懸念事項

個人的には、自宅ならこれとSM58置いておけば困りはしない、という程度に金額不相応にいいんじゃないか、と真顔で思っている。どっちも声も楽器も家で録音するのに文句はない。
仕事で使うにはV67は少し物足りなさがあるものの、自宅で臨時などであればひとまず問題はない。

しかし、このマイク雑に扱ってしまう気もしている

上述しているショックマウントが挟み込み式になるので、着脱がやや億劫になってしまうこともあり、積極的に使わない可能性が個人的にはある。これしかない人なら問題ないが、普段マイクを片付けていたり複数持っているなら着脱が楽な方を選んでしまいがち

それでいて安いということもあり、壊れたらその時はその時だ!と雑な自分の性格ではなりかねない。

金額考えたらひとまず買っておいていい

本格的に自宅でマイク使って金を稼ぐぜ!って人はもっと高いものを選ぶだろうが、そうではなく趣味としてコンデンサマイクを手元に!って人は一本持っておくのをお勧めしたい
声も楽器も録音できて、比較的にフラットに近い。さらに安い。
つまり、便利でいいアイテム。

U67の代用品にはもちろんならないんだけど、これはこれで存在意義がある。

自宅とはいえ入門モデルでももう少し上を!ってなった場合は、上位版(?)のMXL2003Aをお勧めしたい。こちらも癖もあまりなく扱いやすい音で録音できる。金額もちょっとこちらより高い程度で、結構おすすめできる。

この価格帯の入門モデルってオーディオテクニカの影に隠れて目立たないものの、こういうアイテムを見つけられるとちょっと楽しいはず。

教える立場なのでできる限りはワークショップなどで教えた内容を説明していこうかなと。地方の人やワークショップに事情があって参加できない人たちへのサポートが今後もやっていければと思っています。