小説【ブレインフォグの明日】了
「静江さん、お昼ご飯いかがでしたか?」
「ごちそうさま、ありがとう」
「今日は、静江さんのお好きな物ばかりでしたね」
静江さんは、小さな白い頭を何回も下げる。
「ロビーに行かれますか? 午後から手品ショーがあるんですって」
そうねと、静江さんはゆっくり立ち上がって歩き出す。美那はロビーまで付き添った。
もうひとり、食事を終えた貞市さんを和室に案内する。貞市さんは新聞を読んだりお昼寝したりと、いつも静かに時間を過ごしているおじいちゃんだ。施設で新聞に目を通すのは貞市さん