2024.5.11

今の「大喜利」の立ち位置は昔で言うところの「クイズ」や「なぞなぞ」に近いもんなんだろうか。最近では頭の体操として企業も取り入れているらしい。いつからか大喜利だけやる番組が生まれ、大喜利だけやるyoutubeチャンネルも生まれ、そして、大喜利カフェ「ボケルバ」も生まれた。もう駅構内の1枚のタイルに大喜利が書かれているという「大喜利床」があってもおかしくないところまで来ている。

同期2人に誘われてボケルバに行ってみた。誘われたら嬉しいし、新体験は脳の刺激になるから断る理由が見つからない。秋葉原駅から徒歩10分。雑居ビルの3階。そのこじんまりとしたドアからは想像ができないほどボケルバの中は広がっていた。誰も座っていない椅子が輪を描くように置かれていて、昔友達が持っていたおもちゃの銃に入れる円形の火薬を思い出した。ぞろぞろと人が集まって少しずつ席は埋まっていく。

全員集まったところでいよいよ大喜利大会が始まった。1問につき10分。さっそく同期の2人が周りに実力の差を見せつける。それはもう、他の追随を許さないほどの。あの場にいた全員が2人は明らかにレベルが違うと、はっきりとわからされていた。俺は。なんにも浮かんでこない。うんこ。そもそも考えるのが遅い。思考をじっくり煮込んでしまう。にもかかわらず周りは常に答え続けているから気が散ってしょうがない。長いこと学校のテストとかやってないから制限時間のプレッシャーにも耐えられない。全然考えられない。脳内処理オーバー。もう頭がめちゃくちゃ痛い。早退したい。

一方、同期は乱れうち。いや乱射とかのレベルじゃない。豪雨。様々なおもしろを場に打ち付ける。爆笑をかっさらいボケルバという空間を支配しているようだった。

かたや、俺は冷凍死体。全然思い浮かばない。思い浮かぶものがいちいち面白くない。だから出さない。お題1つにつき10分。10分で1つも出さない。誰だって10分あれば1つくらい思い付く。思い付かない。頭が痛くて眠くなってきた。保健室に行きたい。人前に立つ資格がない。もう芸人を名乗れない。個人的に拷問のようだった大喜利大会は3時間続いた。(ボケルバ自体はすごく和やかなムードで行われていてとても良い現場でした)同期二人の投票数はツートップの12票、13票。俺だってやるときはやるさ。1票。数字は言葉よりも雄弁に語る。

その日、俺はストップウォッチを買った。買わなければ、いけないと思ったんだ。


銭ズラ