2024.5.3

きょうのおおさと

吉祥寺駅北口すぐ目の前のサンロード商店街を少し左に外れたところ

地下へと続く階段を降りると歴史を感じさせる店内が見えてきます

老舗ジャズクラブ「サムタイム」

有名なジャズソング

moanin'とtwo for tea に加え

いくつかのオリジナル曲が演奏されました

軽やかで、力強く、哀愁漂う、生のジャズを目の前で聴けて大満足のおおさとなのでした

きょうのおおさとでは日本全国の様々な環境で暮らす個性的なおおさとを募集しています。ご応募お待ちしています。



生でジャズを聴いたことがなかったので、家の近くにあるジャズクラブに行ってみようと思った。

客層は薄い。革のベストやジャケットを羽織った年配の方が多く、ひとり残らず小綺麗な格好をしていた。同世代の客はひとりもおらず、かろうじて年が近そうなホールの女性店員がいたが、話しかけることはできなかった。

サックスのソロパートが始まる。低音に心臓を叩かれ続け、早押しクイズで連打されているボタンのような気持ちになった。それから高い音に切り替わった。それは、金属音のように鋭いけれど、人の息が吹き込まれているからそれよりは温かみのある音だった。サックスから鳴り響き続けるその音は矢のように俺の耳に届いてくる。哀愁や悲しみが伝わり、グサッグサッと記憶の急所を突き刺してくる。泣いていた。彼女から別れ話を切り出された童貞のように涙が止まらなかった。ティッシュでいくら拭いても出てくる。周りの客からは感動していると思われたのかもしれない。そうじゃない。その高音はあまりにも悲しかったのだ。強く生きるために忘れてしまった悲しみを、ピンポイントで突かれて呼び覚まされたみたいだった。ソロパートは終わり涙は止まった。だけど無慈悲にも、そのジャズは同じようなパートが繰り返される構成になっていた。再びサックスのソロパートがやってきて高い音が鳴り始めたらまた同じように泣いていた。我慢しようとすればするほど涙が溢れてきた。それ以降サックスのソロパートが来る度にパブロフの犬みたいに条件反射で泣くようになった。ソロパートがこないでくれと願う俺の望みを打ち砕くようにまたやってくる。そしてまた泣く。必ず泣く。地獄だと思った。もう半年くらいは行かなくていいやと思った。


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銭ズラ