見出し画像

ゆで卵と、オムレツと、目玉焼き。おんなじ卵の数でもお腹いっぱい具合が違う気がする。

ゆで卵って2個は食べれない。お腹いっぱいになる。でも、卵2個で作ったオムレツは食べられる。
バナナも1本食べようとすると、食べる前からお腹いっぱいになる。
多分、これは子供の頃のイメージをそのまま引き継いでいるせいだと思われる。
食にあんまり興味がなかったせいか、バナナもゆで卵も、すごく苦労して食べてた記憶がある。バナナとゆで卵を一緒に食べるなんて、絶対に無理だ。と頭の中では言っている。実際食べたことないから、胃袋がどうなのかはわからない。

ローマのホテルの朝食でものすごい光景を見た。
韓国から来てるらしき若者が、ゆで卵を(本当に大袈裟じゃなくて)10個くらい食べてた。次から次へと。
それも、最初からカウントしていたわけではないから、私が気づいてからのカウントでだ。
他に美味しそうな食べ物が豊富に並んでるのに、どうしてなんだろう?となんだか興味が湧いてきてしまって、その後、デニッシュとかチーズとか、サラダとか食べるのかなあ?と見るでもなしに見ていた。
ミルクを飲んで終わりだった。おおっ。
タンパク質強化月間だったのだろうか。

そういえば、昔、ソウル大学の教授兼作家に招待されて韓国に行った時、ソウルから馬山や釜山のギャラリーに車で行って、その後、また列車で戻ってソウルの美術館に行くっていうスケジュールだった。

列車でソウルに移動するときに、私より30歳くらい上の大学教授が奥さんから旅のお供に持たされていたのが、ゆで卵とキムパだった。
ゆで卵はまんまビニール袋に入れられて、それこそ20個くらい入ってた。
何時間乗る気なんだ?
それを列車の中で「食べて、食べて。」と勧められるものだから、意を決して食べることにした。

けれども、やっぱり2個目を剥き始めた頃、お腹いっぱいになった気がして、教授が見てない隙にバックに入れた。
全部剥いてなくてよかった。
その時、初めてキムパを食べて、うまっ、見た目は日本の海苔巻きと変わらないけど、なんか味が違うって感動したことは覚えてる。

日本には来てもらってたけど、この時初めて韓国に行ったので、色々とカルチャーショック的なことがあった。

しょっぱな、空港で入国審査の列に並んでいたら、その教授が迎えに来てくれて、空港職員の人に何か小声で話した。
すると、なぜか列に並ばずに横っちょの扉から入れてもらえた。

ソウルに着いたら着いたで、ソウル市庁舎やソウル警察署に連れて行かれて、なんだか市長や警察署長に挨拶をする羽目になった。
なぜそうなったのかはわからない。
でも、その歓迎振りをみていて、これは私の事を誰かと勘違いしているのか、それとも、ソウル大学教授という立場がそうさせているのか、そもそも、教授は私のことを何て説明してるのか、ぐるぐるした。
市庁舎を出る時も、警察署を出る時も、みんながなんか見てくるし、中には写真を一緒に撮ってもいいかという人もいた。それも、男性も女性も。
どう考えても、なんか変。

あんまりだから、教授に「私のこと、なんて説明してるんですか?」と言ったら、
「そのままですよ。」としれっと言う。
そのままって、それだったら余計おかしいだろ。と思ったけれど、それ以上聞くのも面倒だし、静観することにした。

その後も熱烈歓迎はやまずに夜になってしまい、行くはずだった美術館は、当然閉館してしまっていた。
なのに、なのにだ。その美術館さえも開けてくれる始末。なぜ?

ソウル大学に行ったら行ったで、学生たちの名刺ラッシュに襲われる。
次から次へと名刺を持ってきて、今まで生きてきた中で、1日にしては最高の量の名刺を受け取った。
そんなにもらったら、どれが誰のなのかわかんない。
みんな笑顔で、なんだか私の事をちょっとばかり尊敬っていうか、憧れっていうか(もちろん、そんな人間ではない。)そういうキラキラした瞳で見てきて握手を求めてくる。
なんなんだ。
逆さに振っても何も出ないぞ。
どうしたんだ、一体。

そして、私が接した彼らの夕食は1回では終わらない。
夕食って呼ぶのかなんていうのかわからないけれど、とにかく、ギャラリーや美術館の移動の合間に、やたらと食事タイムが入る。
「もう、何も入らないです。」と言っても「いいです、いいです。とりあえず、行きましょう。」と。
入る入らないは関係ないらしい。

お出かけしたら、
まだみんなの願いが飾ってあった。

屋台が沢山あるところにも連れて行ってくれて、初めてトッポギを食べた。
あーこれも好きな感じ。お餅好きだし。
いや、でもだから、一口しか入りません。
「マッコリが美味しいお店に行きましょう。」
へーこんな味なんだ、ヨーグルトっぽい?
いや、さっきから言ってるように、お腹いっぱいです。
それを、夜中まで繰り返して、最後にはカラオケに連れて行かれた。

なぜかそのカラオケ屋さんにはものすごいステージがあって、みんなそのステージで、考えられないくらい歌って踊っていた。
あんなに朝から行動しているのに、疲れを知らないとはこの事だ。
紅白歌合戦みたいだった。
そして、移動するたびに、なぜか人数が増えていく。誰?もういっか。
おまけに人数が増える度に、その人が自分のお薦めのお店に連れて行こうとする。

ホテルに着いたのは3時くらいだったかな。
明日もこれが続くのかと思って、さっさとお風呂に入って、寝た。

その教授兼作家は、とても人懐こくて優しい人だけど、彼の彫刻作品はソウル警察署や市庁舎などといったパブリックスペースのエントランスに飾られているし、ロッテホテルにも飾られている。
もちろん、それだけじゃない。
私はその作品が気に入って、日本で個展をしたり、病院やホテルの玄関に飾ったりさせてもらっていた。
日本に来る時は、優しい気のいいおっちゃんだと思っていたけれど、もしかすると韓国では私が思う以上に、有名人なのかもしれないと思った。

その後も、ニュージーランドの彫刻作家とその教授との企画展とかをやるために、何度か韓国に行ったけれど、その度、それを繰り返すことになった。
だから彼らが日本に来たときは、私も真似して、いつも以上にいっぱいいろんなところに連れて行った。多分、そのくらいしないと、お返しにならない気がして。

その後、その教授より世代の若い作家の企画展をした時、
「あっ、〇〇先生って知ってます?」って聞いたら、
「えっ、〇〇先生とお知り合いですか?」とものすごくびっくりされた。
「はい、何度かご一緒して、ギャラリーでも個展をしてもらいました。」
って言ったら、大袈裟じゃなくうるうるして、
「〇〇先生と同じギャラリーで個展ができるなんて・・・。」と言葉を詰まらせていた。っていうか、あなたの作品もいい作品だからなんですよ。と思ったけれど。
こりゃあ、思った以上だったんだな、と再認識した。

なんなら、カラオケも一緒に歌ったし、ゆで卵も一緒に食べたし、なぜかチークダンスも踊ったよ。って思ったけど、きっと、作家としての顔と個人としての顔は違うだろうから、そこは言わないことにした。

やっぱ、韓国ではそういう人だったんだ。
その人が大切そうに連れてきた感じの私だったから、みんなの態度がああだったんだ。
なるほどね。日本から素敵なお嬢さんが来たってことじゃなかったんだね。
ちょっと、勘違いしちゃうところだった。

きっと叶うね。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?