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おばあちゃんとさはら|エッセイ

おじいちゃんが2ヶ月ほど前に
介護レベルが高い人だけが
入れる特別老人ホームに入った。

おばあちゃんは入ることができないので、
「私も介護レベルが高ければ…」
と縁起でもないぼやきながら、
現在一人暮らしをしている。
(おじいちゃんも歩けないくらいで全然元気)

おじいちゃんと面会した日の帰りに、
「今度うちに窓拭きに来てくれない?」
とおばあちゃんに声をかけられた。
ママは、面倒なこと任されたね。
と言う顔をしていたが、
私は、1人で寂しいんだなと思い
「もちろん行くよ!」と返事をした。

おばあちゃんの家はご近所なので
いつでも行けるのだが、
仕事終わりに行くとなると
老人の寝る時間なのではと、訪ねづらい。
やっぱり日中に行く方が無難だ。

しかし、
土日に遊ぶ予定を入れてしまったら、
本当に行く暇がない。
日曜日に予定を入れないように心がけ、
おばあちゃんちを訪ねた。

窓拭きをしてという要望だったので、
奥の部屋から掃除をしたのだが、
リビングにいるおばあちゃんに呼ばれ、
ここの窓だけで良いと言われた。

本当に話し相手が欲しかっただけなのか…
と悲しくなりつつ、
窓を拭いた後、2人でテレビを観た。

「おじいちゃんがいた時は、
 ヘルパーさんが1日2回来てくれたけど
 もう1日1回しか来てくれないの」
とまたしてもおばあちゃんは嘆いていた。

おじいちゃんの老人ホームは
数日であれば宿泊可能なようで、
お試しでおばあちゃんも
宿泊したことがあったので、

「そういえば、おじいちゃんのところ
 どうだった?友達できた?」
と聞いてみると、
「友達なんて作るかんじじゃなかったよ。
 でも、人がたくさんいてよかった」
と返ってきた。

おばあちゃんも腰が悪く
1人で出歩くことができないので、
あまり散歩にいけなくなってしまった。

たまにヘルパーさんやうちのママが
訪ねるくらいで、
人に会う機会も全くないようで、
普段満員電車に乗ったりしている自分からは
考えられないような悩みだなと驚いた。

「おじいちゃんがね、
 もし自分がいなくなったら
 みんなでこの家に
 住んで欲しいって言ってたの。
 だから、ここに越してきてくれない?
 おじいちゃんの要望だからって
 ママに伝えて」
とその日のうちに15回ほど言われた。

おじいちゃんの要望ということで
力を発揮しているようだったが、
うちの両親には効かない。

そして、おじいちゃんの要望という名の
おばあちゃんの要望だったので、
これまた悲しくなった。

私としては全然引っ越して良いのだが、
うちには怪獣のような父がいる。
落としたクッキーやピーナッツを拾わず、
家事もせず、
家の外から電話の声が聞こえるほどうるさい。
おばあちゃんと対極の人物である。

私だけ住んでしまおうかなとも思うが、
夜中に帰ってきたり、
なんだかんだ仕事をしていたりで
居ないに等しいことになりそうで
悩んでしまう。

NHKがついていたので、
その後2人でサッカーを観て、
ニュースを観て、相撲を観た。

おしみたちにニュースを
知らなすぎて馬鹿にされたので、
ニュースは心して視聴した。

するとおばあちゃんから、
「どう、最近の日本。」
と深すぎる質問が飛んできてしまった。

私の世への知識なんて、
総理大臣がキッシーなことと、
紅麹くらいしかない。
「私、ニュースみなすぎるから
 わからないや…」
と返すほかなく、悔しくなった。

マイナスな気持ちになるだけなので、
ニュースなんて見ないが仏と思っていたが、
どうなのだろうか。
ネットの記事なんて、
くだらないインフルエンサーの話題ばかりで
視界に入れたくもないし、
新聞の記事も偏っている。
一体どこから情報を仕入れたら良いのやら。

また相撲では、夏場所が始まったことと、
照ノ富士が唯一の横綱だということを知った。

おばあちゃんの家は時間の流れが
ゆっくりで心地よかった。

このまま、土鍋で玄米を炊いたり、
梅干しをつけたり、
車椅子をカラカラしながら
おばあちゃんと散歩したりしたい。
やっぱり私だけでも
おばあちゃんちで暮らそうかなぁ
と検討しているというお知らせでした。

さはら
1997年9月生まれ
ハーフ
座右の銘は晴耕雨読
万年フリーター

👴おしみ家のおじいちゃんおばあちゃん👵


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