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ヤンキー小学生キョウコちゃん|エッセイ

これは私が小学生の時の話だ。

キョウコちゃんという
2つか3つ年上の先輩がいた。

話し方が小学生とは思えないほど
ねっとりしていて、
「サハラァ〜〜〜
 ちょっとこっち来いよォォ〜〜」
と、パチンコ屋のおっさんのような
絡み方をしてくる子だった。

後輩たちは、
誰彼構わず話しかける
おっさん口調の彼女にビビり散らかし、
キョウコちゃんには近づかないようにしよう
と決意していた。

しかし私は、
別に変わった子だけど害はないじゃん。
と思い、普通に話すような間柄だった。
もはや、みんなが避けている彼女と仲良くなり
猛獣使いになった気すらしていた。

だがそんなある時、
放課後学童のある建物で遊んでいると、
キョウコちゃんが困った様子で話しかけてきた。

「ミュージックプレイヤーを
 TSUTAYAで買ってきたんだけど、
 音楽が流れないんだよねェェ〜
 まあまあしたのに不良品かなァ〜・・」

いつも人にちょっかいをかけて楽しんでいる
キョウコちゃんが、悲しそうな顔をしていた。

鬼の目にも涙・・と思いながら、
私と親友の祥子マンは可哀想になり
一生懸命音楽が流れないか
トライしてみることにした。

キョウコちゃんは
「返品するしかないかァ・・」
などと言いながらどこかに消えてしまったが、
私たちは諦めきれず、
電源を落としたり、
イヤホンを差し直してみたり、
ありとあらゆることを試してみた。

数十分ほど試みたが、一向に音は聴こえず、
これは可哀想だけど本当に返品案件かも、、
と思った時、
キョウコちゃんが戻ってくると同時に、
衝撃の一言を放った。


「あ、まだやってたんだァ〜
 そういえばまだ曲入れてないから
 流れないのは当然だよォ〜〜」

一休さんのようであった。
悔しい思いと同時に、
考えてみればわかることだったなと
悔しくなった。
近づかないようにというお触れは
正しかったのかもしれないとその時痛感した。


それからまた時が流れ、
祥子マンとニンテンドックスをしていると、
久々にキョウコちゃんが現れた。

前科があるので、スルーしようかと思ったが、
「良いなァァ・・・・・」
とまたしても悲しそうな表情で
語りかけてきた。

「いいなァ、ニンテンドックス、、、、
 ウチも買ってもらいたいけど、
 ポケモンダンジョン買ってもらったばっかで
 買ってくれなくてさ、、

 ポケモンは難しすぎて終わらないし、
 本当にどうしよう・・
 サハラ、ちょっとで良いから
 カセット交換しない・・?
 お願い!!!!!!!!!」

みたことのない必死さで頼まれてしまった。

私はニンテンドックスにどハマりしていたが、
あまりのしつこさに、
私がポケモンダンジョンを
クリアするまでの間、
ニンテンドックスを交換してあげよう
と考えた。

また、ポケモンダンジョンが人質となるので
パクられることはないだろう。と思い、
「絶対返してくれるなら、貸してあげる。」
とニンテンドックスとポケモンダンジョンを
交換した。

しかしその日の夜、
さっさとクリアしちゃいますか・・・!
とポケモンダンジョンを
起動させてみたところ、
どこがクリアできていないんだろう。
と言うほどに、
細部までクリアされていた
ポケモンダンジョンが
私の手の中にあった。

所謂カンストという状態であった。

途轍もなくやり込まれた
ソフトを手にした私は、
ただニンテンドッグスを
取られてしまったのだと
その時ようやく気がついた。

後日キョウコちゃんに会った際、
なかなかの口調で文句を言ったが、
「全クリしてたァ〜?そうなんだァ〜?」
という返答しかもらえなかった。

結局そのまま彼女は卒業し、
ニンテンドッグスが
帰ってくることはなかった。

さはら
1997年9月生まれ
ハーフ
座右の銘は晴耕雨読
万年フリーター

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