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18『ジム史上最弱女がトップボディビルダー木澤大祐に挑んでみた』

#18 しゃちほこレッグカール


年末年始。仕事にかまけて好き放題食べ、筋トレをおろそかにしまくった結果、私はレスポンスのバカ速いデブになっていた。今日は1/9、木澤さんのハッピーバースデーだ。予約が取れたのも何かの縁、ここで生活を巻き返す。そう決意して向かった。

定刻まで入念に例のストレッチをして階下に降りた。取り急ぎ祝意を伝えたい。フロントにいる。チャンスだ。

本人を撮る勇気がないので風景ばかり



「木澤さん(裏声)♡お誕生日おめでとうございます(裏声)♡これどうぞ(裏声)♡」

姿を見ると未だに緊張が走るが、精一杯ニコニコしてプレゼントを手渡した。

「あー、ありがとうございまっす」
「レッグプレスで」

わあ、シンプルな対応。塩がすぎる。愛想5000に1で返ってきた。まあ、「えー!ありがとうございます☺️」みたいなのは解釈違いなので予想の範囲だが、流れるようにトレーニングに移られるとは思わなかった。

この接客力で筋肉酒場(メンパブ)で働く気か。密着&壁ドンでクライナー口移しとかオーダーされたらどう対応する気なのか。レポしたいから名古屋でもやってください。

まあいいや、生まれてきてくれてありがとうございます。なにとぞ、この賄賂でお手柔らかに。と心で念じながら拷問器具に向かう。この日はレギュラーレッグプレスだった。当たり前にいつも通り忖度なく、バカクソ雄叫び痴態を晒したので結論から言うと、

「脚はほんとにマシになってきてる」

ということだ。うれしい。レッグプレスの重量が2倍になった。こう書くとめちゃくちゃすごいみたいだが、40kgだったのが80kgでセット組めるようになっただけだ。ただ、私は体重が40kg台だということは考慮してほしい。

だが、最初に言われていた「体重の2倍まではいかなくても、せめて1.5倍は挙げられるようになれ」はクリアした。しょぼすきて話にならない段階から、ここまで登ってきたのだ。

今回のメインは新しく覚えたやつでいこうと思う。

いつも通り嘘つきプレスの洗礼を受けて既に立てなくなりつつある私に、「じゃあ、レッグカール行きましょう」と声がかかった。
はじめてだ。誘われるままつくと、座面にアタッチメントが鎮座している。

「なんですか?これなんであるんですか?」

「あれ?うちでやったことなかったでしたっけ?」

「ないです」

「え!?ない??はじめて???ほんとに?」

そんな驚かれても。何度聞かれてもやってないです。木澤さんはしばしば適当だ。人の話を基本聞いていないし覚えてない。どこ住みかも5回聞かれてる。

「なんでバーが?」

「このバーをベンチの先端にひっかけて、握ってください」

なるほど。このマルティプルハンドルをベンチの先端に引っ掛け、腕を引きながら全身の反動を使って蹴り上げるというわけだ。

「……もっと下さがって。膝ベンチから落として。ふくらはぎの中間あたりでパッド支えて。足の角度はこう」

上から見た図。

①ハンドルをベンチ下の突起に引っ掛けて握る
②膝がベンチよりも下に位置
③かかとがふくらはぎに対し八の字の角度



「いいですか。身体を倒すと同時に、思いっきり蹴り上げる。そのときに腿までしっかりあげる」

①上体を起こした姿勢がスタート
②倒れ込むと同時に腿をベンチから離れるまで
蹴り起こし、ハムストリングスを収縮


完全に理解。要はウルトラマンからしゃちほこになるわけだ。OK OK。やり方は初めてだが、私はハムが強い。レッグカールは得意だ。任せてください。

「GO」

「腿付いてる!もっと蹴り上げて!もっかい!」

いきなり怒られた。全然難しい。上半身の動きと下半身が連動してくれない。あと腿を上げ切るのがクソしんどい。

「腿上げろって!」
「もっと力強く!」
「遅い!遅いもっと早く!」

煽りが始まる。木澤式レッグカールが馴染むにつれて、猛烈な苦しさが襲いかかってきた。なんだこれは。今までやってきたカールとまるで違う。重さが違う。効き方が違う。

「あ゛あああ!!!」

例の如く苦悶の咆哮が上がると同時に、夕立のように汗がベンチを打つ。したたるというレベルではない。噴き出してボトボトとこぼれ落ちている。誇張ではない。現に木澤さんが「なんでそんな汗かいてんすか……」と引いている。苦痛が具現化して汗になってる感じだ。

「タオルとかないんですか」
「すみません……忘れました……」

1セットで滝行のようになった私を見かねた木澤さんが、タオルを取りに行ってくれた。

すみませんちゃんと洗いました

タオルをプレゼントしておいて、自分のタオルを忘れるという間抜けを晒して消沈していると、突然「あの」と声をかけられた。

「こんにちは。いつもブログ見てます」

まさかの読者様との遭遇。めちゃくちゃびっくりした。そうか。アカデミーに通ってる方が読んでるケースだって全然あるよな。でもなんで分かったんだろう。感激してお話していると、いつの間にか戻ってきた木澤さんがニヤニヤしている。あ、これ「あれ書いてる人今から来ますよ」って喋ったな。だからバレたのか。

丁重にお礼を言い、お互いに健闘を讃えあって(というより私が励まされて)2セット目に移る。読者様の前で無様な姿は見せられない。俄然ボルテージが上がる。いくぞ!

「また腿上がってない!!!」

「もっと勢い!跳ね上げる!」
「足首の!角度が違うんだってほら!」

「うお゛ぉぉ……お゛ほっ!!!」
「wwwww」

だめでした。ゴリラの威嚇みたいな声を聴かれました。さっき声をかけてくれた方も悲惨すぎる有様を見て、この日記が本当なのを分かってくれたと思う。もういいや。これがリアルだ。

「足首!ズレてるってこう!」

というか、足の裏蹴ってない? 見えないが足首の角度を間違うと、硬いもので足裏をゴンゴンゴンゴンやられる。

「遅いよ!ホラ!」
「ちょっと一回レストして」
「はいやる!上げて上げて上げ切って終わり!」

単関節種目なのが信じられないくらい辛い。目が回ってヒーヒー言いながら這いつくばって動けない私に、「なにがそんなに辛いんすか」と無情な問いが投げられる。

「頭が、真っ白になって…痛くて…」
「ハムストリングスは」
「ハムは、……まだいけるかも」
「なにしてんすか。だめですよそんなんじゃ」

総じて私は呼吸が下手で乱れやすく、2動作に1度しか呼吸していないこともあるらしい。ゆえに力の安定性もなく、まぐれのラッキーアンラッキー動作になってしまっているのが課題らしい。

頭痛が起きるのは、酸欠もあるがまだハードなトレーニング自体に慣れていないからのようだ。「このトレーニングに慣れる人いるんですか」と率直な疑問を呈したところ、「皆、慣れてるからやれるんですよ。見てください。皆やれてるでしょ」と返された。確かに私と同じことを私ほど叫ばずやっている。そこでふと気づいたことがある。

「なんか、このジム男性多いですね」


「は? そもそも女の人1割もいないです。見てください、どこに女の人いるんすか。あ、一人いるけど」

でかい男性、でかい男性、ひとつ飛ばさず、でかい男性。ほんとだ。全員男だ。マッチョの群れだ。唯一いた女性も筋肉の隆起がエグい。改めて、自分がいかに異質かに気づいた。

ジム内イメージ


「……なんか、皆さんやっぱり骨格から大きいですね。すごいな」

「ううん、体格の大小は関係ないです。ハードにやれてさえいれば、小さかろうがちゃんと筋肉つきますよ」

あ、これ多分励まされた。そうだ。生まれ持ったカードを嘆いても仕方ない。私は私なりに頑張っていけばいい。

この日は他に、
・ラットプルダウン(ワイド、ナローリバース)
・プレートベントオーバーロウ
をやった。

ダンベルでのベントオーバーロウは初心者には軌道が難しいが、一つのプレートを両手で持ってやるのはおすすめらしい。すごく良かったので、今度また詳しく解説しようと思う。

こうして新年一発目は終わった。やっぱり木澤さんのトレーニングは辛いけど充実した。帰りにラーメン食べたいのを我慢して、低脂質の鮭おにぎりとちくわを食べた。今日からまたちゃんとボディメイクをする。絶対にだ。

気持ち新たに頑張っていきます。今、とんでもない筋肉痛で作業困難です。今年もなにとぞ、よろしくお願い申し上げます。

#19へ続く



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