USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 森岡毅さん著 読書レポート

選書理由

これまで主に営業の役割がメインだったが今後マーケティングに関する役割が増えそうなので基礎に触れたいと思って手に取りました。マーケティングってなに?なんで必要なのか?という大きな話から具体的なHowまで網羅的にカバーされており、且つ「高校生の娘が読んでもわかるように書いた」と著者がおっしゃる通りわかりやすい言葉で描かれており、非常に学びの深い良書でした。

「マーケティング」とはなんともかっこいい響きを持つが、非常に地味で地道な作業で成り立っており、ある意味安心した。(抑えるところを抑えて必死にやればなんとかなる)

本書は全9章に渡って書かれているが、このレポートは未来の自分への備忘録(今後仕事で使うだろうな)という意味で第4章「戦略」を学ぼう、第5章「マーケティング・フレームワークを学ぼう」に記載のあったポイントを中心にまとめています。

戦略的思考

マーケティングの本なのに急に戦略の話出てきたな、と思ったのですが、マーケティング思考とは戦略的思考に、戦略的思考は論理的思考に包含されるという構造になっている。この章ではマーケティング思考のひとつ外側にある戦略的思考に触れており、戦略ってなに?なんで必要?どう立てるの?戦術との違いは?いい戦略ってつまり?みたいなことが順序立ててまとめられている。

戦略とは「資源配分のための選択」と言い換えることができる。なぜ配分しなければならないのかというと①達成する目的があり②資源は常に不足しているから。別になにかを達成したいわけではなくやっていることや資源が無限なのであれば戦略は不要だけどことビジネスにおいては必須な考え方になる。

じゃあビジネスで使える資源ってなに?と問われるとヒト・モノ・カネ・情報・時間・知財が主だったものといえる。この中で最も重要なものはなにか?それはヒトであり理由はほかの資源を扱うのはヒトだから、という見解。色んな意見があると思うが個人的にはとても納得感があった。(ゆえに経営者が最初に採用すべきは人事のリーダーとも言っておりHR業界に身を置くものとしてはちょっと誇らしい気持ちになったりもした)

選択と集中の考え方としては100あるリソースを20ずつ5つにわけるのではなく競争相手のことを鑑みて、ここは40投下しよう、ここは逆に0にしちゃおうとかそういう考えのこと。図解もあり「ふむふむ。なるほどね」となるが実際の現場では意外と「全部やる」という判断が多いので注意が必要。(身に覚えアリ焦)

戦略とはつまり、やらないことを決める、という考えだと言い換えることもできる。全部一生懸命にやる!という価値観が世の中的には良さげなものだと捉えられているように感じるが、今後ビジネスのスピードがどんどんあがり、いろんなことが不明瞭に・複雑になることを考えるとやらないことを決めること(なぜやるのか?なぜやらないのかも説明できること)もとても重要な能力になるのではないかと感じる。

目的と目標の違い

戦略的にものを考えようとすると、大切なのがゴール設定となるが「目的」と「目標」ってどう違うん?という質問が多いそうだ。日本では混同されるケースが多いようなので個人的にはステークホルダーと目線があっていれば(その言葉を関係者全員同じ意味で使ってるのであれば)いいのでは?と思うのだが戦略の文脈でいうと、目的=戦略思考の最上位概念、達成すべきこと。目標=達成するうえで経営資源を投下する的(具体)であり目的の下位概念が目標となる。

同じように戦略=資源配分のための選択、なのに対して戦術は具体的なプラン、と定義づけている。で、考え方としては目的⇒戦略⇒戦術と考えるのがお約束。割と多くのビジネスシーンで「なにをやるか?」(≒戦術)という議論が巻き起こりやすかったりする。これは偏にわかりやすいからだと思う。顧客への提案率を高めよう、とか社内MTGを30分としよう、とか。自分が体現しているのが容易に想像できるからだと思うが、目的がズレていたらそもそもその戦術は意味がないものとなってしまうので、なにを目指すのか?どこでやるべきか?を適切に捉えてはじめてじゃあなにしようか?という議論になる必要がある。

マーケティング思考に当てはめるとWHO(ターゲットは誰か)→WHAT(なにを売るのか)→HOW(どうやって売るのか)の順で考えることになる。

良い戦略の見分け方

・セレクティブ(選択的かどうか)
やることとやらないことの区別がはっきりしていること

・サフィシエント(十分かどうか)
経営資源を投下するのはわかったけどそれでちゃんと勝てるかどうか

・サスティナブル(継続可能かどうか)
優位な状態を継続できるか?途中で息切れしたり他社にすぐ真似されない?

・シンクロナイズド(自社の特徴との整合性は?)
自社の強みとシナジーを生み出せる?

美しい戦略は競合との差分を活かし自分たちが有利になるよう活用できている。この辺消費財メーカーや日本海軍の事例でわかりやすく説明されている。

マーケティングフレームワーク

考え方は上述の通り、達成すべき目的はなにか⇒誰に売るのか⇒何を売るのか⇒どうやって売るのか となる。

やること① 戦況分析
市場構造を理解してそれを味方につけるために行う。人のやることは然るべき理由を持ち、だんだん構造的になっていく。

水は高いところから低いところに流れる。低いところから高いところへ流すことも不可能ではないがめっちゃ工数かかる。ビジネスに置き換えると流れに逆らうことはとてつもない経営資源を使うことになる。歴史的にみると流れに盛ったものは失敗する。自然の摂理には逆らってはいけない。(個人的に、業界の常識を疑う、はありだと思う)

戦況分析は絶対に失敗する地雷を避けるために行う。

具体的な方法論としては5C分析が有用。Company(自社理解)、Consumer(消費者理解)、Customer(中間顧客理解)、Competitor(競合理解)、Community(社会/関連法への理解)

Company(自社理解)
自分たちの経営資源、強み・弱みを知る

Consumer(消費者理解)
定量理解と定性理解、両方重要。データで見える大局観と、そこでは見切れない深層心理を知ること

Customer(中間顧客理解)
協業して市場を創るパートナー、時には競合にもなる、市場のプレイヤーとしてしることは全体感を知ることに通ずる

Competitor(競合理解)
単なるお隣さんではなく、広義でみれば競合だよねというレベルまで見る。誰になにを売る、に密接に関連する考え方のように思う。スタバが「競合は高級ホテル」と言ってたのに通ずる。

Community(社会/関連法への理解)
景気や世論で取り巻く環境は変わる。法改正などもわかりやすく影響が出る。

やること② 目的を決める
目指すべき北極星を決める。何かあったら立ち返れる場所。
決めるときのポイントは実現可能性(高すぎず、低すぎず)、シンプルであること(複雑な目的は機能しない、前提がズレる)、魅力的かどうか(その目的を達成できたらめっちゃすごいよね!となっているかどうか/人の仕事の質を高める)

やること③ 誰に売るかを決める(WHO)
みんなに売れたらいいじゃんと思うけど、「失敗のカギ、それはすべての人を喜ばせようとすること」。みんなにいいな、って思ってもらうのは難しくてそうしようとするとうすーいものしか出来ず誰にも価値を届けられないから、誰に売るかを明確にする必要がある。戦略的ターゲットとコアターゲットにわけて考える。見つけ方は複数あるが基本的に伸びしろがあるといえるところにマーケティングコストを投下する。

コアターゲットが決まったら消費者インサイトを見つける。消費者すらも気づいていないニーズや直視したくない現実に触れることでブランドの価値を一気に高める。

やること④ なにを売るのか(WHAT)
目に見えるものではないなにかを欲している。車ではなくステータス、ドリルではなくねじを差し込む穴、を消費者は欲している。根源的な価値は何か?

自社で売るものは競合と比較するとどうなのか。ポジションを知り、どこでポジションをとるか決めることは極めて重要。ポジショニングは相対的であるので競合との比較は必ず必要。

やること⑤ どうやって売るのか(HOW)
WHATをHOWに届けるための仕掛けのこと。上流から考えようね、上流が大切だよ、と言っているがここが疎かだと価値は消費者に届かない。

一般的な考え方は4P。
プロダクト(顧客に提供するものは?)
プライス(適正価格は?)
プレイス(顧客に届ける方法/場所は?)
プロモーション(情報提供方法は?)

最後に

実務に活かせる考え方がたくさん詰まっていて実用的な本だと感じた。ただし、知っているとできるは違うし、戦略に完全正当はないという前提に立つと「知ったことをたくさん実行し、精度を高める作業」が結局大事なんだなとも感じる。知るきっかけをくれた良書に感謝。



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