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DV彼氏と縁を切るには?インド旅行で自分探しは達成されるのか◆『アクト・オブ・キリング』【ぷろおご伊予柑の大預言】

対談:ぷろおご伊予柑の大預言をアーカイブしています。
収録は2023年10月です。





 ぷろおご 伊予柑



あなたが最後に演技したのはいつですか?


伊予柑:はい、木曜の読書会。公開収録第3回。今回のテーマは、『アクト・オブ・キリング』インドネシアであった100万人以上の大虐殺。その殺害を当時の実行者たちに再現してもらい、それを撮って映画にして、当時の虐殺を間接的に描いていくという、すごい社会派な映画でございました。


伊予柑:当時は雰囲気で殺していたんだけれど、今の倫理観では絶対アウト。ジャニーさんが男性に手を出していたのは当時の倫理観ではよかったかもしれないけれど、今の倫理観では100アウトみたいな話ですね


ぷろおご:いや男の子もだめだから

伊予柑:はい、だめですね


ぷろおご:だめだけど、よりだめになった


伊予柑:はい、雰囲気がね。で、そのギャップに苦しみ、自覚する。けっこう偏差値が高い映画になってます。

映画としてのおもしろいポイントは、世界でも語られることが黙されているような大虐殺について変な切り口で挑んでいったところ。コメディなシーンと暴力むきだしのシーンが交互にきて、なんだこれは?みたいなよくわかんない感じになっていくんですよ。

もうひとつの見どころは、実行者たちの苦しみがどんどん伝わってくるところだと思いますが、どうみました?



ぷろおご:アクト・オブ・〇〇みたいなのは、日常にいっぱいありますよね。殺人だけじゃない。みんなそうなんですけど個人的にすげえ嫌だったこととか、いちばん嫌なことって嫌じゃなかったことにしたがるじゃないですか。彼女振られたけど、オレはあんま気にしないよ、みたいな



いいんですよ。
僕も仕事であんまり時間とれなかったので、浮気されてもしかたないと思うんです。それ自体はべつに気にしないんですけど、人間、気持ち変わることってあるじゃないですか。

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ぷろおご:いちばん嫌いなポイントってみんな認めないんですよ。いちばん嫌だったこととか、いちばん不快なポイントとか、ぜったいにね。なぜかわからないけどここだけは認めません、みたいなところにいちばん嫌なポイントは存在してる。

おれはネット配信をするじゃないですか。音声配信で人としゃべったりすると、においがするんですよ。キリングの変数、ここだけはぜったい認めたらいけない、みたいな、そこだけは異様に避けようとするから、あ、ここにあるな・・・が見えるんです。あれはこの「殺人」に近い。


『HUNTER×HUNTER』コミックス7巻より


どうして、ほんとうに大切なことは目に見えないのか?


ぷろおご:主観的に見れば、いちばん自分の人生で嫌だったこととか悪かったことって、人生を大きく占めるじゃないですか。それが殺人だった人がいるってことですよね。そうじゃない人は、殺人以外のなにかが大きく占めているわけで、キリングと変わらないんですよ。

見たくないところ、なかったことにしたいこと、認められないものがあって、そういったものを思い出す瞬間がこの映画で再現されてた気がします。

虐殺も、いじめもそうだし、彼女にフラれたとか、親から受けた教育とかなんでもいいんだけど、遡って強制的に思い出したときに、みんなああいう顔をするよな、とおもった。そういうシーンがあったじゃないですか。ああ、この顔は見たことがあるよなあってなりましたね



伊予柑:あなたはもう、その意地悪をするためだけに生きてらっしゃるようなところありますよね




ぷろおご:ちょっとさ、再現の映画撮ってみてよ。って言うと、「べつにいいっすよ、気にしないんで。むしろ誇りに思ってるんで、」って遡るんだけど、「いや…むりかも」って、泣き出しちゃうんです。

それは殺人じゃなくてもそう。その人の人生のなかで、いちばん認めたくないことがひっくり返るとき、「やっぱなんかちがったかもしれないです。お母さんに認めてほしかったのかもしれない…」とか「お父さんと仲直りしたかっただけなのかもしれません」みたいなのががあるんですよ。

そういう流れに既視感がある。だからある意味でいえば、退屈だった。目新しくはなかった。登場人物個人のいちばんツラいイベントが殺人で、それが社会的によくない、歴史的にデカいテーマだっただけというイメージですね


伊予柑:自分のツラいことに対して、ごまかしをする、嘘をつくように演技をするというところですよね。もうひとつ、あれを見ながら思ったのが、男の「絶対に謝れない病」ってあるじゃないですか。ごめんなさいが言えない病、おっさんになるほど罹患率が高いやつなんですけど、あれにかなり近いな、と

ぷろおご:おなじ共犯者の中でもいろんな派閥がいましたね



どんな人が失敗を恐れるのか?


伊予柑:あからさまに嘘をついている。オレは見てないし、みたいなのをずっと言っていて、ぜったいに謝らない。バレバレの状況でもぜったいに謝らないんです。日常でもあれはよくあるわけですけど、あれなんだろう、とおもって、

ぷろおご:たしかに。無茶なことをするなあ、ってなりますよね。ああいう状態にあるひとって地球は平面だ、みたいな勢いで言うじゃないですか


伊予柑:しかも認めてしまえばもうよくない?ぐらいなことを表明したりするわけですよ




ぷろおご:認めたあと、こういう流れがあるっていうのが見えてれば飛び込めるけど、認めた後ってどうなるの?オレ…みたいな人はしぶりますよね。そういう恐怖心があるんじゃないですかね

伊予柑:『アクト・オブ・キリング』だと共産主義を売った新聞社のやつが、隣の部屋でガリガリに殺してたんだけど、「いや、知らないし、隣の部屋でなにが起きてたかなんて知らん」みたいなことを言ってましたね



A:ジャニーズが?まさかそんなことを?
聞いたことない…

B:いや、むりでしょうよ。あんた…


私たちは知らないうちに、演技させられている?


ぷろおご:アクト・オブ・〇〇、いろんなパターンがありますよね。たとえばクラスにいじめがありました、とかっていうとき、30人しかいないわけだから、完全になにも悟ってないやつってアスペ以外いないわけじゃないですか。おれとかは完全そのタイプだったから、「いじめあるの?キミ、いじめてたの?ダメじゃん!」みたいなかんじだったんですけど、



伊予柑:みんな空気を読むんですよ

ぷろおご:読める人はね

伊予柑:空気が見えるので

ぷろおご:あの子にしゃべりかけると、まずい!っていうのを察しあう


伊予柑:そうすると、シカトが起きるわけですよね。なんか知らんけどあいつは無視することになったらしいという噂によりみんなが実際に無視する


ぷろおご:で、それに気づかないヤツが「あのさー」って言いながら話しかけちゃう。そうすると、最近なぜかわからないけどみんな話しかけてこない。なるほどね、それの大袈裟になったパターンだ



伊予柑:スラムだと不快なのに逃れられないことを呪いと定義しましたね

ぷろおご:その人の性質とか性格もね


伊予柑:それから、自分で嘘だということが分かっているけど嘘であると言えない状態、ブラック企業を辞められない人とか、離婚したらいいのに離婚しない人とか、わかっているのに辞められない状態も呪われているといえますよね。たくさん見てきたと思うんですけど、あれはなんでなんですかね?


ぷろおご:やめられないのが?


伊予柑:呪われちゃう

ぷろおご:好きなんですよ。なんかぬくいじゃないですか

伊予柑:ぬくいの?

「執着を捨てる」とはどういうことか?


ぷろおご:ぬくいですよ。だって、すごい頭から離れないことがあったら、もうずっとそれがある状態がナチュラルなわけじゃないですか。それがない状態なんか想像できないから、それは広義でいえばぬくいですよね


伊予柑:つまり、変わることのほうがこわい?

ぷろおご:こわいっていうか、たんに「愛着」なんじゃないですか?本人は愛着って言わないですけど、絶対値的にいえば愛着だとおもう。プラスの愛着とマイナスの愛着があるみたいな言い方をすると

伊予柑:アンチがめっちゃYouTubeにコメントする、みたいな



ぷろおご:執着は愛着じゃないですか。愛着があって、そのあとに好感度が高いとか低いとかがある。それで愛着の仕方、アプローチの仕方が変わる。たとえばアンチをマイナスだとすれば、アンチ活動をして、好きな人がプラスになってファンになる、みたいな


伊予柑:そうすると、その対象が気にならないようにならないといけないよね

ぷろおご:そう。プラスに転ずるというよりは、ゼロ地点に戻ると、外から見ると呪いが解けたように見える


伊予柑:どうやって?


ぷろおご:どうやって・・・そうだな。たとえば仕事を辞められませんっていう人がいて、それはけっこういろんなパターンがあるわけですけど、仕事を辞めたい、辞めたい、辞めたい!って言って、辞めようとするんですけど、実際に辞める人って、まあどっちでもいいか、ってなってやめるんですよ。

辞めたい/辞めたくないじゃなくて、どっちでもよくない?みたいな。辞めようが辞めまいが、こういうことになるんだよね、こういうパターンだよね。じゃあ、はい、どっちでもいいでしょうってなって、そこではじめて冷静になって辞めたほうがいいか、辞めないほうがいいのかっていうのが発生するんですよ

気持ちのプラスマイナスじゃない。それがイベントとしてあって、辞めるか辞めないかきめるというところに達する。神話的なもの、そういう納得したわ、みたいなエピソードがあるかどうかですよね



伊予柑:アルコールとかでも底打ちするまでは、とりあえず依存症をやって、ほんとうにダメっていう瞬間がこないとずっと続いちゃうっていうのはよく言われますよね

ぷろおご:一種の経験を獲得する。経験すると納得にたどり着くじゃないですか。そういう追体験的な、情報量の多い体験があると、なんだどっちでもいいかってなる


「経験しないとわからない」は、ほんとう?


ぷろおご:たとえば伊予柑さんは寝る場所とかもいろいろこだわりがあるわけですよね。アスペだから。でも、そこでなければ寝られない。と、ある場所に呪われてるわけではなくて、正味、どこでも寝れますよね。だって、若いときによく海外に行っていたじゃないですか。

そのときは、しょうがない、安いところしかない…ってドミトリーの6人、8人部屋の二段ベッドだか三段ベッドのダニがいるかいないかみたいなベッドで寝たりしたこともあったはすで、それっていうのはここで寝るしかないか〜って納得が発生してたってことじゃないですか。論理ではないんですよね。呪いを解くためには、そういう儀式的なものが必要なんですよ


伊予柑:そうすると、呪いを解く鍵は身体的なものなのかもしれないですね



ぷろおご:すごい良い映画を見ると泣いちゃったりしますよね。それは身体的なレベルまでたどり着いてる体験で、そこまでいくかどうか。泣かされたりするのはけっこういいですよね

伊予柑:なるほど



ぷろおご:めちゃくちゃドパワハラを受けてハァァアアとかってなった後にスンって急に目が覚めて、なんかどうでもよくない?みたいな感じになってブラック企業をやめちゃう人もけっこういる。

逆にじわ〜ってやられるタイプのほうが呪いが解けきらないから、長くふんわり、「やだなあ、やめたいなあ、でも悪いことばかりではないし、上司ちょっと褒めてくれるし…」って。

そういうじわ〜っとしてるものは解けづらくなる。日本ってほんのり全体的にじわ〜っとした世界だから、みんな固定的ですよね。あんまりアグレッシブなことが起きない。起きたらけっこう変わるんですよ。コロナとかでみんなライフスタイル変わったじゃないですか。

ああいう経験しなきゃならないような状態に陥ると、不意にポンッてみんな変わったりする。環境が変わってないと考えも変わらなくて、それは呪いもそう



DV彼氏と別れられない友達に必要なのものは?


伊予柑:別れたらいいのに。みたいなカップルはいますよね。彼氏が暴力振るってくるのに別れない。友達に相談して、「え、別れたらいいじゃん」とか、「別れたほうがいい」みたいなことを言われてもだいたい別れない。変わらないわけですよ。でも、なんかしらんが、あなたに奢ると別れられるんですよ。あれはなに?


ぷろおご:いや、別れさせてないですよ。「えー、、」って言うだけで、

伊予柑:スッキリして別れるじゃないですか

ぷろおご:結果はね

伊予柑:なんなの?

ぷろおご:アクト・オブ・キリングです



へえ、彼氏がそんなことをするんだ。

で、なに。あなたはどうしたいの?

なるほど、あのときにされたそれが嫌だったんだね。
じゃあさ、それがもし今だったらどうするの?

伊予柑:DVの演技をさせられている

ぷろおご:演技はしてないけど、想像しないと語れないことはありますね

伊予柑:ありますね



ぷろおご:質問ってそうじゃないですか。あなたがもしこういう場合だったらどうしますか?これはもう脳内アクト・オブ・キリングですよね。

なんていうかな、より密接にやったら演技とかに近い状態になるんですかね。演技ほどそんな派手なことはしないですけど、あんまりシミュレーションしたことがないことを、あらためてシミュレーションすると、けっこうみんな身体的になりますね

いつも聞かれてることとかいつも当たり前の会話のなかで答えてることって、もうなにも脳に映像が浮かばないとおもうんですよ。あらためて考えてない。

自動再生というかChat GPTみたいに、言葉の予測変換、予測だけで言葉がでてくるとおもうんだけど、さあ…!っていう話になると、変わってくる。伊予柑さんとかいやらしい質問するじゃないですか


伊予柑:めっちゃします



インド旅行で自分探しは達成されるのか?


ぷろおご:あれは映像が浮かぶ質問なんですよ。自分の脳内にまずこれがあります。そのあとにこうなって、こうなります、さぁどうなりましたか?って言ったら、「えーっと」って頭のなかでちゃんと再生しないといけない。それは「からだ」がやってるんですよ。

意外な質問によって具体的に状況とか状態、そのときどうだったのかが想起させられて、自分が客観化されるというか。そっか、そういうシチュエーションがあるんだ。って。

そういう想像することは、映画のなかにいる自分を見るみたいなものですよね。そこにうつっているのは自分じゃないですか。自分を新しい視点で見るときに、自分ががなにに囚われているかを認識できる。そういう瞬間ってあんまり多くないから、けっこうだいじなんだろうな、って。



ぷろおご:じゃあ、どうやって新しい視点で見るんだってなるんですけど、こいつ変なヤツだなっておもう人と1時間くらいサシでしゃべったりしたら、もう新しい視点で見るしかないんですよ。だってなにを言っても通じないから。なんて言ったら通じるんだろう、ってなる。

インドに行って価値観変わりました。っていうのは、インド人がいるおかげなんですよ。インド人とコミュニケーション取るときって新しい自分になるんですよ。だって、インド人と日本人はまるでちがうから、考えてコミュニケーションせざるをえない。

そういう体験をしたうえで、ふと、日本にいたころの自分を思い出すと、「なんかここがこういうふうになってたからおかしかったんだなあ。私はこういうふうに生活を見直すべきだなあ」というふうにおもうんですよね。そういうを実感した人が、その実感を持ったまま日本に戻ったら、実際に人生は変わるじゃないですか

といっても、だいたいやらないから変わらないんですけどね。日本に帰ったらぬくいので忘れてしまう



日本ぬくいなぁ、
日本最高、、、

牛丼美味しいしテキトーに就活したほうがいいよな・・!

伊予柑:たまに彼氏は殴ってくるけど

ぷろおご:耐えればいいかってなるんですよ

伊予柑:なるほど

ぷろおご:それが切実かどうかっていうのはまたべつ


伊予柑:たしかにDV彼氏持ち女性が1週間インドに行って帰ってきたら別れてる気がしてきました

ぷろおご:そうなんです。僕はただ近場のインドやってるだけたから

伊予柑:汚らしいし

ぷろおご:雰囲気でるので。ミッキーの耳つけでディズニーランド行くみたいなものですよ


魅力とは、他者から見た呪われたあなたであるか?


ぷろおご:そういうのは儀式としてあると、話が早い気がする。殺しの演技って、現在の自分と離れた状態にトランスしないといけないわけじゃないですか。今の正常な状態じゃ演技できないからね。だから、そういうのはいいかなっておもいますね


伊予柑:それを聞いて思ったんですけど、『アクト・オブ・キリング』では、殺人をする自分の記憶をまざまざと思い出させられるわけですよね。で、あなたがやってることも、どういうDVでした?みたいに、考えたくないことをまざまざと説明しろと迫ってますよね。

たしかに俺も、彼らに対して殺人のシーンについて聞きたいですね



どう思ったの?
一般論じゃなくて、あなたがどう思ったのかききたいナ



ぷろおご:いちばん他人が気になることって、本人がいちばん思い出したくないことですよね。無神経なことだから余計なことを聞くな、ってみんな言うんだけど、ちゃんと関係性ができててそれをやる覚悟できてる人がいたらへいき


伊予柑:なるほどね。そうすると呪いを解くためには、不快を見つめるしかないんですね。そしてその方法は、「見ないふりをするな、ちゃんと見ろ」というものか、「とりあえず、インドに行け!」という、ふたつありますね。インドに行くのは距離を取ることで、不快がなくなって見ることができるからで、なんにせよ呪いを見つめるしかないってことですね


ぷろおご:いろんな見つめ方があるって話ですよね。それは就活でもそうじゃないですか。強制的にやらせてますよね


スーツを着たミッキー:ガクチカは?あなたは何のためにそれをやってたの?

就活生:エッ…わァ…アァ

伊予柑:みんながちいかわになるやつですね



ぷろおご:あれは、急にやるとやっぱ効果的ですよね。ふだん考えたことがないから、瞬発力的にでてきた出力はだいぶ参考になるじゃないですか。みんな準備してくるから、今は形骸化しちゃってるけどね。そういう状態は日常的にあまりない非日常の状態なので、呪いから外れられますよね


伊予柑:スペースであなたは「何者ですか?」ってはじめるけど、あれはあらためて答えるのってけっこうむずかしい

ぷろおご:あれはガクチカなので。あなたのガクチカはなんですか?急に聞いてくるヤなやつ


やなやつ!やなやつ!やなやつ!



水商売は、カタルシスによって成立している


ぷろおご:このあいだ誰かとキャバクラとホストってなにが違うの?って話をしてたんですけど、それを今の話で思い出しました。キャバクラとホストって明確にちがうんですけど、あらためて説明するってなるとむずかしいじゃないですか。

で、それを考えたときになんていうのかな、呪いってものがあるとして、呪いってけっこう記号的ですよね。男とか、大学生、社会的な社長とか、そういうのもの。それを外してくれるところが夜の世界だなって話になったんですよ。みんなそれを外してほしいんだろうなって

伊予柑:ありのままの私を見て


ぷろおご:そうそう。ありのままはないんだけどありのまま的なもの、ふだんの自分の扱われ方とちがう扱われ方をされたい。要はカタルシスなんですよ。

記号化された自分を壊すことに価値を感じる人たちが夜職のお世話になるわけじゃないですか。そういう人ってやっぱりふだんから呪い、つまり自分の執着とか逃れられないものを抱えてて、 そこから解き放たれる時間がほしいんでしょうね。そういうニーズが確実にある。

ボカァアンって壊れるものは、長期的にはなにも生みださないんだけど、とはいっても、息抜きになるわけですよね。呼吸ができる。そういうテーマというか、それだけ呪われてる人がいるからこそああいう産業はあそこまで大きくなってるのかなって。

海外ではあんまりホスト的なものがないわけですよね。それはいろんなコミュニティがあるからだな、とおもうんですよ。たとえば日本だったらスナックがあるとおもうんですけど、スナックとホストはちがうじゃないですか。

でも、スナックがあることで、ふだんの自分の記号から逃れられてるひとってけっこういるとおもうんですよ。よく通ってくれる謎の〇〇さん、みたいな。ふだんの扱われ方とはまったくちがうわけじゃないですか。そういうものは自分の呪いを認識するうえでは必要なのかな、とおもってて



自分を理解したければ、他者としての自分を受け入れよう


ぷろおご:それがさっき言った新しい視点ってやつなんですけど、いろんなコミュニティでいろんな立場とか、いろんなキャラクターを持っていると、自然とメタ的にふだんの自分の考え方が見えてきたり、価値観が客観的に見えたりする。あるいはいろんなコミュニティの知り合いがいれば教えてもらえたりする。

そうすることで、「あ、そっか。わたしってちょっとズレてたんだ」って気づいたりする。人と直接会って話をしたりするときに、相手がたとえば、これが苦しいとか、これがどうしようもないって言う場面があるじゃないですか。

本人はここがおかしいとおもってるんだけど、話聞いてると、どうやらおかしいのは本人が言っているところではない。あなたがおかしいのはここじゃなくて、このへんだよ。そういうおかしなところに本人はまったく気づいてないんですよね


ぷろおご:いや、それはべつに変な話じゃなくて、よくあることかもね。なんていうか、僕にはきみの腕のここがおかしいように見えるけど、

奢り客:えっ、なにいってるんですか?腕、まがってないですけど・・

ぷろおご:これはけっこうある。みんなやっぱり教える人がいないんですよね


ちょっと肩まがってるけど、気にしてそうだから、言わないほうがいいかな

伊予柑:それってさっきの話とほぼおなじですね。不快の源泉は見ないんですよね

ぷろおご:そうね

伊予柑:見れないといってもいいかもしれない



ぷろおご:それをやるために演技っていうものが機能するというのがよくわかった。アクト・オブ・キリング、わかりやすく演技を虐殺の演技をさせて、治癒じゃないけど、当時の感覚を取り戻す

おれ、高校でうつをやってるんですけど、うつより前と後でけっこう急激に自分の人格みたいなのが分離した気がしてて。最近なんかここ3年ぐらいでちゃんと接続された気がするんですよ。

なにがあったとかじゃなくて、たんに体力ができたからだとおもうんだけど、切り離しちゃった方がラクなんですよね。自分の人格じゃない、とか、自分とはちがう、べつの存在があれをやっていたとかいうふうに、セカンドシーズン!主人公変更みたいに捉えたほうがいろんな情報の処理がラクなんですよ。切り離された自分をふたたび接続するためのわかりやすい装置として演技は便利なんだなって。僕は、『アクト・オブ・キリング』にそういう感想を持ちましたね


呪いが呪いであるとき、人はそのどこまでが自分の一部なのかを知らない


伊予柑:呪い、不快を見つめられない。それを見つめる方法として演技がある

ぷろおご:そうですね。伊予柑さん演劇やってましたよね

伊予柑:やってました

ぷろおご:なんで演劇やったんですか?

伊予柑:僕はどっちかっていうと、人をコントロールしてェ…という欲望があり、演出家寄りなんですけど


ぷろおご:ひどい話だ。ひどい大人のひどい話を暴いただけだった。させる側だね



伊予柑:俺はネットTRPGみたいなのにハマってたことがあるんですけど、シミュレーションができておもしろかったからなんです。自分の人生はひとつしかないけど、別のキャラクター、ちがう立場でこういうこと考えて、こういうこと考えるとこういうことを考えなきゃいけないって山ほど考えることがあって、それがよかった。

もしも自分の性別がちがっていたら…ってみなさんに考えてもらうぐらいの話なんですけど、そしたら同じような境遇で同じ家に生まれても人生ちがうじゃないですか。そういう考えていくことにおもしろさを感じるんです



ぷろおご:おれも新しい人に会うのってそういう感覚ですね。べつの人生シミュレーターがあって、うっすらと系統はあるわけですよね。こういう環境でこういう時間、こういうエピソードにさらされて生きていると、こういうかたちになりますっていうのがでてるようなものですよね。

それを微分してみると、なんか、ああ、なるほどなっておもうところがあったりする。それはある意味で、シミュレーションを獲得するというか、新しいシミュレーション結果を得るために新しい人に会ったり、新しい演技するってことですよね



呪いを解くとは、自分の輪郭を鮮明にすること?


伊予柑:シミュレーションと演技ってほぼ同じなんですよ。「あなたが20歳だったら今どこに就活します?」っておっさんに質問するのが好きなんですけど、みんな虚をつかれて、ガチで考えるんです

ぷろおご:「あの時」よりはわかるしね。自信あるよね

伊予柑:30歳の人に、「20歳です。就活準備したいですよね、どの企業行きます?」って

ぷろおご:「気の利いたこと言いてえ」

伊予柑:10年分の知恵でいろいろなことを考えるのよ。けっこうおもしろい。これもさっき言っていたような嫌な質問、つまり想像させる質問、アクトさせる質問なんですよね。アクト・オブ・就活

ぷろおご:おそろしい質問をするね。ちなみに伊予柑さんはアクト・オブ・就活だったら?

伊予柑:中国系ゲームの企業かな。原神というゲームだったり、今、いろいろと中国系ゲームがきてるんですけど、人口を考えたり、国内メーカーは嫌でしょ〜みたいな切り口で考える。で、返ってくる答えは人によってちがうから、なんでそれを選んだんですか?ってところがまた、おもしろい

ぷろおご:それを考えることで、転職し始める人いますよね

伊予柑:いますね


このあいだ伊予柑さんにアクト・オブ・20歳をされてから、なんかヘンだな。オレは20歳じゃない……

20歳じゃないけど、40でも、ちょっとここだったら枠あるんじゃないの?


・・・やりたいよな。

てか、むしろそっちのほうが生き残りやすさまである?

むむむ、、あっちに行ったほうがいい気がする・・・

ぷろおご:40歳に呪われていた人たちが・・・

伊予柑:DV彼氏の介錯の可能性はありますね


A:あなたがもし16歳に戻ったらどの男をえらぶ?
B:うーん、〇〇君かな

A:なんで?
B:だって優しいし。そのときは刺激がなくてつまんない男だなって思ったけど、なんだかんだ一途でいい男だった

B:じゃあどうしてあなたは今△△君といるの?


A:なんか刺激的だから・・



ぷろおご:なるほどねえ、アクト・オブ・キリングだわ

伊予柑:シミュレーションですね



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