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ジャズバーの財務モデルを考える 第一回

以下3点をゴールにジャズバーの財務モデルを作成していきます。
・財務モデリングに入門する(基本的な財務モデルが組めるようになる)
・財務三表の数値が、それぞれどのように連動するかを理解する
・ジャズバーなど一般的な飲食店における経営改善の勘所を掴む

財務モデリング未経験の筆者ですが、IT企業でのデータ分析と、ジャズバーでアルバイトをしていた経験を活かしつつ、学んでいきます。

第一回は、
・架空のジャズバーを想定
・来店者数などのKPII(重要業績評価指数)を仮定で設定
・簡易的な年間利益算出モデルの作成

第二回以降はその年間利益算出モデルから出た実績を使って、財務三表の作成や簡単な感度分析などを行っていく予定です。

なお、今回はこちらのGoogleスプレッドシートで作成しています。

想定するジャズバー

・オーナー店長
・場所は都内近郊の駅近く
・賃貸月15万円、キャパ30人程度
・年300日営業
・近所のジャズ好きな大学生がアルバイターとして入っている
・1店舗のみ。店舗の拡大は考えていない

KPIツリーの作成

今回は税抜利益をKGI(向上したい目的の数値)と設定し、KPIツリーを作成します。

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書籍を参考に、一般的な飲食店におけるKPIツリーに分解しました。最下段がKPIになります。
今回は、売上に紐づく顧客数・顧客単価をそれぞれ「バー時」「ライブ時」で分解しています。

これは、ライブを頻繁に行っているジャズバーにおいてはバー営業時、ライブ営業時で大きく顧客単価が変わってくるからです。
もちろん店舗によって異なりますが、ライブ営業時に来店する顧客は飲食がライブが目的なので、食事は別で済ませてきてドリンク1-2杯程度の注文で終わってしまう顧客が多くなります。
ライブにおけるミュージックチャージ(M.C.)はほとんどがミュージシャンへのバックになるため、バー営業時よりも顧客単価は低くなります(今回のモデルではM.C.は全額ミュージシャンにバックと仮定するため、M.C.は考慮外とする)。

KPIの値を仮定

なお、今回実績のデータはないので仮定の値を入れていきます。
ある年のKPIの値をパラメータとして設定し、そこからツリーにおける上部の値を算出していきます。

まず営業日300日からバー営業、ライブ営業の日数を仮定します。
今回は、

バー営業日数:150日
ライブ営業日:150日

としました。基本的にかきいれどきの金土日はなるべくバー営業。他平日はライブ、というイメージです。

次に、売上に関係する指標をバー営業時、ライブ営業時別にイメージしやすい1日あたりの平均として埋めていきます。

バー営業時来店数:8人/日
ライブ営業時来店数:10人/日
バー営業時顧客単価:5,000円/日
ライブ営業時顧客単価:2,000円/日(今回M.C.は考慮外)

なお、この指標は私の感覚で繁盛しているジャズバーを想定して設定しています。ちなみに、M.C.は店にもよりますがセミプロのライブで1000円-2500円、プロのライブで2500-5000円という感覚です。

最後に費用に関係する指標を同じように埋めていきます。

飲食原価率:20%(主にドリンクなので一般の飲食店30%より低く設定)
一人あたり人件費:4,500円/日(時給900円を5時間と仮定)
従業員数:1人/日(平均アルバイト人数。基本的にオーナー店長も動く)
賃料:150,000円/月
償却:50,000円/月(適当)
その他費用:50,000円/月(適当)

仮定したKPIから年間のKGIを出す

まずは年間の売上を以下の通り出していきます。

バー営業日売上/年 = バー営業日数 × バー営業時来店数 × バー営業時顧客単価
ライブ営業日売上/年 = ライブ営業日数 × ライブ営業時来店数/日 × ライブ営業時顧客単価/日
売上/年 = バー営業日売上/年 + ライブ営業日売上/年

次に費用も同じように出していきます。

飲食原価/年 = 売上/年 × 飲食原価率
..,
費用 = 飲食原価 + 人件費 + 賃料 + 減価償却 + その他費用

上記で仮定したKPIで算出した結果、

売上:900万円
費用:615万円
利益:285万円(税前)

となりました。

まとめ

今回、来店者や顧客単価を仮定して売上を、飲食原価率や従業員数などの指標から費用を算出し、ジャズバー経営における簡易的な利益算出モデルを作成しました。

実際にライブバーを経営している人から見ると、かなり緩い値を設定しているとは思いますが、年間利益額(≒オーナーの想定収入)は300万円弱となりました。
現状コロナ渦でジャズバーはかなり厳しい経営状況が続いていると思われますが、実際にシミュレーションしてみるとその厳しさがよりわかります。

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