見出し画像

【コラム】令和のモトコンポ?話題の電動モビリティ「タタメルバイク」って!? <後編>

オートバイと自転車用のヘルメットの製造メーカー「株式会社オージーケーカブト(以下、Kabuto)」は、さまざまな人たちを応援しています。わたしたちはまた、新機軸を生み出す「パイオニア」にも注目。今回のコラムは、近年大きなウェーブを起こしている「電動モビリティ」の中で、SNSを中心に大きな話題となっているバイクの開発者にインタビュー。最終回となる今回は「今後の展望について」をお送りします。前編はこちら)(中編はこちら

未来は僕らの手の中 「タタメルバイク」が見据えるこれから

昨今大きなトレンドになっている「電動モビリティ」の中でもひと際異彩を放つそれは、SNSを端緒に様々なメディアにも紹介されるほど、バイク業界でも新風を巻き起こしています。

開発者は、スタートアップ企業「ICOMA」のCEOである生駒崇光さん。同機を擁し、気鋭の一社としても取り上げられている中で、今回Kabuto公式noteにて独占インタビューを敢行。

後編は「タタメルバイク」の名前が世に出回り、その中でKabutoと本格的に関わるようになった2022年の活動について、さらに2023年以降の展望についてを紹介します。

バズ投稿「新機体、初お披露目です!!」

《新機体、初お披露目です!!
私生駒が自分でデザインし起業して作った駐車場要らずの“タタメルバイク”です。
試乗ではバイク乗りの方々からも好評でした!!市販化目指して開発してますのでぜひお見知りおきを。
#ICOMA #ハコベル #HAKOBELL 」》

2021年10月3日。2号機を完成させた生駒さんは、早速Twitterで報告。ナンバープレートも取得した同機には、再び1万を超えるいいねが寄せられる「バズ投稿」となりました

生駒さんによると、これはバイク目線では「驚異的」な反響なんだそうです。確かに考えてみると、MotoGPや鈴鹿8耐、バイクの日といった「お祭り」に匹敵する偉業。しかもそれを“新参者”がやってのけたのも重要ポイントです。

投稿には、さまざまなメディアの人間も注目し、記事としても取り上げられました。さらにTV番組も追随。以前から感じていた「流れ」は、ついに地上波で取り上げられることになったのです。

🏍⚡️「大久保光選手に乗せてみたらどうだろう?」

そんな当時、Webライターでもあった筆者はふとこんなことを思い立ちました。

「これに『大久保光』選手が乗ったらオモロイんとちゃうか?」

弊社フォロワーならすでにご存知かと思いますが、あらためて。
「大久保光」選手は、2021年シーズンより電動バイクの世界最高峰レース「MotoE」クラスに、アジア人として初めて参戦しているトップライダー。昨シーズンは、第7戦の「フランスGP」で初の表彰台も獲得。2023年シーズンもチームを新たにし継続参戦が決定しています。

(Photo:Rafael Marrodan @Moto_GP #Moto_E )

ちなみに参戦のタイミングの2021年より、ヘルメットのサポートメーカーになったのが弊社。「Kabutoライダー」の中でも押しも押されぬ看板選手のひとりです。

(Photo:Rafael Marrodan @Moto_GP #Moto_E )

じつは数年前、バイクではないWebメディアで大久保選手が取り上げられていた。そのメディアは、乗り物にあまり関係のない一介の情報系ニュースサイト。「アスリートのSNS発信」が声高に叫ばれるようになって久しいですが、彼は人間・大久保光のアイデンティティである「オタ活」により、何年も前から実践しているのです。

電動マシンで世界最高峰レベルで活躍するライダー大久保選手に、タタメルバイクに乗ってもらおうと打診したところ、まさかの快諾。TV番組にも取り上げられたこともあり、以前より彼もマシンに少なからず興味を持っていたのです。

そういうわけで、生駒さんが構想していた「走行試験」に、「テストライダー」として大久保選手がインプレッションを行うという形で「コラボレーション」が実現。2022年2月、千葉県柏市にあるKOIL MOBILITY FIELDにて実施しました。

🏍⚡️「…攻めれないんですよ」

当日を改めて振り返り、開発者で工業デザイナーである自身と、現役トッププロライダーとでは、見えている「世界」が全くの別物だったと語る生駒さん。

「僕の場合、『予備が少ないデモ機』というのがまず頭に入ってくるので、自分で運転すると、どうしても早めに『ブレーキ』をかけちゃうんです。攻めれないんですよね怖くて」

「でも大久保さんみたいな『プロ』の方だと、いきなり軽くステップ擦ったりで、その時点でもう全然違うんです。あの日も、タイヤが跳ねたりすることがあったんですが、ひょいっと対処しちゃったりで……僕が『ヤバイ!』と感じた場面でも“範疇”が別物なんですよ」

それもそのはず、同じ「電動バイク」といっても、大久保選手が扱うそれは300km/h近い速度を誇りますがタタメルバイクは「原動機付自転車」区分。速度は60km/h程度。見方を変えると、日本でもっとも電動バイクの「限界」を、肌感覚で精通している人物が他ならぬ大久保光選手。

なお、この取り組みについては、記事として世に送り出されているのですが、冒頭の「バズ記事」とでは、それぞれで異なる「反響」を得たそうです。

「特に『認知』の面で大きな効果があったのが秋の記事でした。『タタメルバイク』が“イロモノ”ではないことに大きく貢献してくれましたね。(講師をつとめる桑沢デザイン研究所の)生徒に聞いても、『知っています』という声が3割くらいあったんですよ」

「反対にこの記事は、『信頼』で絶大な効果がありました。お付き合いしている企業からの評判は上々でしたね。『話題性』が先行しがちな乗り物の中で、僕も『ICOMAさんって本当にバイクを作ろうとする気があります?素人集団じゃないの?』というようなことをよく言われていたので、そことは明確に『差別化』が出来たと思っています」

近年は「のりもの」に大きな変革が起き、「ICOMA」のようなスタートアップ企業が続々と参入していますが、その多くは、市場のニーズを優先した販促が主流となっています。もちろんそれは新たなマーケットを開拓するのに必要なアプローチです。しかし、製品の信頼性の向上より優先されがちなのも正直否定できません。

ただ「のりもの」というのは、利便性に目がいきがちですが、命に直結します。新しい「モビリティ」ほど、事細かな検証は欠かせないということは、業界に詳しくなくても容易に想像がつく話です。

ちなみにタタメルバイクは、企画段階から生駒さんの前職からの繋がりで得た多くの「のりもの」関係者が賛同し、様々な形で支援も行ってきた中で生み出されています。現在においては、業界出身者が「ICOMA」に入社し、中核メンバーに名を連ねています。ただ、それでいても傍流の域は出ません。

一方で、大企業ほどしがらみが大きすぎて、なかなか「冒険」ができません。マーケティング面では、得てして「無難」な施策になりがちです。

だからこそ、既存の概念を破壊する「革新」が生まれる余地があり、それは新興ベンチャーの役割でもあります。タタメルバイクとICOMAにもいえることです。

ところで、筆者が大久保選手にタタメルバイク=生駒さんを紹介したのは、「早いうちに『プロ』にあてがうことで、『本物』なのかどうかジャッジしてもらった方がいいのでは」という提案もありました。両者を結び付けられる位置にいた、というのもあります。

大久保選手との出会いは、大きなモチベーションにもなっているという生駒さん。タタメルバイクは、開発段階から多くの人間の「知恵」が寄せられ、トライアンドエラーを重ねて生まれたという背景もあり、それがプロライダーにも及んだことで、結果として、想定以上の「化学変化」が起きたのです。

「でもこれ、大久保さんじゃなきゃまず実現しませんでしたよね?(笑)」

というわけで大久保選手には、今シーズンはぜひとも「テッペン」を奪取してもらいたいものです。

MotoEクラス、ゼッケン78大久保ヒカリ選手!
MotoEカテゴリーは今シーズンから世界選手権に昇格

☺️子供たちにロマンを与えていきたい

2023年現在では7台のタタメルバイクを製作した生駒さん。「量産」と「安全」を意識し、いよいよ商品化を見据えたそれは、当時と見た目以外で大きな変貌を遂げています。ちなみにガンダムでたとえると「『ガンダム』と『ガンダムMk-Ⅱ』くらい違いますよ」とのこと。

世界最大級のハイテク技術見本市「CES2023」への出展や、カプセルトイとしての展開、そしていよいよマシンの販売開始と、「ICOMA」そして生駒さんは既に目まぐるしい動きを見せています。

そんな彼の夢は、「のりものを自然と『ロボット』にしていく」こと。「変形の美学」というアイデンティティを反映させた結果、タタメルバイクを開発しましたが、それをさらにロボットにまで「トランスフォーム」させたいそうです。

「『のりもの』を『モビリティ』という言葉に置き換えて、それが自己判断できるような機能を持たせれたら、それは『ロボット』といえるんじゃないかなと。創業当初から考えていることでもあるんですが、それって面白いと思いません?」

余談ですが、タタメルバイクと併行して、生駒さんは子供向けの「キッズバイク」も開発。タタメルバイクでイベントに出展する際には、子供向けのワークショップを同時展開しています。

そこでは、用意した「ボード」に参加した子供たちが思い思いの「デバイス」を描かせ、それをマシンへ“装着”させての「試走会」が開催。

筆者も以前足を運んだことがあるのですが、そこでは目を輝かせながら無心で描写する子供たちに、身振り手振りで熱弁する生駒さんの姿。2児の父ということもあり、さながら児童を指導する先生のよう。それは「ICOMA」の理念にも通じた取り組みでもあります。

「『ものづくりも面白いんだよ!』って伝えていきたいんです。僕自身も、子供の時に『いいな』と思った世界があってそれに突き進んできたから。『楽しそう!』『やってみたい!』って気持ちにさせて『ロマン』を提供したいですね」

📝~あとがき~「Kabutoのような企業って意外とないですよね」

さて、本稿ではさほどクローズアップの機会がなかったKabutoですが、先の試走会では大久保選手も含めてヘルメットの提供をしたり、その後随所で関わったりと少なからず応援。

直近ですと、地元・東大阪で開催された大阪・関西万博に向けた機運醸成イベント「HANAZONO EXPO」にて「ICOMA」のブース内に即席で簡易ブースを設置しています。

そして「ICOMA」の公式HPでは、トップページにタタメルバイクのティザー映像が紹介されていますが、2023年年始に新たに公開された最新ムービーではシステムヘルメット「RYUKI」が“友情出演”を果たしています。

一連の関係性には「本当に感謝しています」と生駒さん。同時に興味深い話もしてくれました。

「Kabutoのような立ち位置のメーカーって、意外とないような気がします。ガチガチに『固まっている』ようなところだと、たとえば僕のような小さな会社は、関わることがちょっと難しいです。“染まってない人”が手に取れるような『余地』がある。これって凄く大きなことではないでしょうか」

ヘルメットというのは、バイクには「絶対不可欠」なものであり、また装備によって個性を演出する楽しみを与えてくれるものでもあります。
Kabutoには「SAFETY MEETS SMILE」という企業ミッション、「かぶるヘルメットから着るヘルメットへ」を標榜するビジョンがあります。

このコラムを取材し執筆している、いわば第三者である筆者が感じるのは、両者には「垣根を取り払いたい」という共通の想いがありました。だからこそ生まれたマッチングだったのかもしれません。
【完】(取材/執筆=向山純平)

この記事が参加している募集

企業のnote

with note pro

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?