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アメリカに琵琶を持って行った備忘録④実際の運用編(2023年5月)

前回の記事の末尾、私はこう書いておりました。

“まだ旅立っていないという事実 さて、ここまで、アメリカに琵琶を持って行くための準備について書いてきたわけですが…。 そう、まだ旅立っておりませんね。 そしてここまでお読み下さった皆様はもうお気づきのとおり、私、文章を書くのに、たいへん時間がかかります。 それゆえ、アメリカで実際に起こった出来事を書き起こす頃には、既に2023年が終わっている可能性もあります。 いや、できればそれは避けたい。 というわけで、なるべく年内を目指して、運用編をまとめていきたいと思いますので、気長にお付き合い頂ければ幸いです。”

https://note.com/embed/notes/n5fcb65476cfb

これを書いたのが2023年9月。
そして現在、2024年5月。

何てことだ。半年以上も空いてしまったではないか。
しかも、この記事の出来事から既に1年が経過しようとしているではないか。
全くもって遅きに失した感はありますが、一応、これまでの経緯を踏まえて、私が実際にどうやって琵琶をアメリカに持って行き、持って帰って来たか、まとめておきたいと思います。

前回までの記事はこちら↓

預入荷物がゆえの困難

2023年5月下旬、銀色に光る琵琶ケースと、日米双方の関係各所のおかげで手に入れた書類を携え、私は伊丹空港のチェックインカウンターに向かいました。
ここから、伊丹→羽田の国内移動を経て、羽田からアメリカ・テキサス州のダラス・フォートワース空港へ飛んでアメリカに入国、さらに国内線でノースカロライナ州のローリーへ向かうのです。
そして、私が大事な琵琶のためにすべきことは以下のとおり。

①羽田空港の税関で、楽器証明書に出国のサインをもらう。
②ダラス・フォートワース空港で、楽器証明書及びアメリカの長い名前の書類に入国のサインをもらう。
③琵琶ケースを受け取り、無事を確認する。

ところで、備忘録③琵琶運搬編でも書いたとおり、琵琶は機内持ち込みができないサイズのため、堅牢なケースに収納した上、スーツケース等といっしょに預け入れる必要があります。
が、税関というのは、保安検査場を通った先にあるものです。
……この場合、どうしたらいいのか?
そこで教えてもらったのが、保安検査場の外にある、
「情報ひろば羽田」
場所は羽田空港第3ターミナル、中央保安検査場の右横です。

https://www.customs.go.jp/tokyo/content/haneda-johohiroba.pdf

イメージキャラクターの「カスタムくん」と共に、税関について分かりやすく、かつ詳しく学べる、東京税関の施設です。
そのスペースの奥には直通電話があり、税関に用事のある人はそこから税関の方にコンタクトを取ることができます。
電話口で「楽器証明書」について説明するのも若干時間がかかりましたが、何とかこちらの意図を分かって下さり、とってもセキュリティの厳しそうな扉から職員の方が出て来られて、無事出国のハンコを頂くことができました。
まあ、時間はかかるし、手間もかかるし、わざわざ保安検査場の外まで出て来て頂くのは若干心苦しいところではありましたが、無事にミッション①はクリアしたのでありました。
そこからチェックインカウンターに移動し、荷物の預け入れも完了。

最大にして最軽率すぎる凡ミス

晴れてダラス行きの飛行機に乗り、爆睡→ご飯→爆睡→ご飯…のループを完遂し、ダラス・フォートワース空港に降り立ったわけです。
ここで、主催者側から言われていたことには、
「入国審査の時に、アメリカの長い名前の書類を出して下さい。そうしたら、別室に連れて行かれますが、そこで手続きをしてもらえます」
ですが。
長旅の疲れと初アメリカの緊張でほぼ思考力を失っていた私、入国審査官に、パスポートのみを渡し、肝心の、アメリカの長い名前の書類を見せるのを忘れてしまったのです。
当然、別室に連れていかれることもなく、パスポートにハンコをもらい、"Have a nice day!" の言葉と共に通過を許されたわたくし。
あれ?何かあっさり通っちゃったけど、これで良かったんだっけ?
ですが、アメリカの長い名前の書類を発行してくれた、U.S. FISH AND WILDLIFE SERVICE(アメリカ合衆国魚類野生生物局)は、そんな凡ミス野郎を見逃しませんでした。

ノースカロライナ行きの国内線を待っている搭乗口付近に、突如、日本語のアナウンスが流れました。
「ローリー行き、〇〇〇便にご搭乗予定の、オギヤマ・フミエ(本名)様、△△番搭乗口へお越し下さい」
ん?私か?
行ってみると、ハリウッド映画の保安官のような制服に身を包んだ係官が、若干キレ気味に私を待ち構えていました。
羽田から行動を共にしていた「アニメいずめんと」スタッフの方(日本留学中)に通訳して頂き、一緒に若干怒られつつ、でも申告どおりの物品であれば大丈夫とのことで、書類にサインを頂くことができました。
しかも、なぜか、入国と共に出国時のサインも。
これについては一体なぜなのか分からずじまいですが、海外に詳しい方によると、アメリカは入国には厳しいけれど、出国は「もうさっさと出て行け」とばかりにサクサク放り出されるらしいので、ついでに手続きしちゃったのではないか、とのことでした。

いずれにせよ、今回のケース、多分、かなりイレギュラーな対応だったと思われますので、あまり参考にならないかもしれません。すみません…。

長時間の移動に耐え、ノースカロライナ州ローリーの空港に到着した琵琶は一片の破損もなく、無事に私の手元へ帰ってきました。
そして大量のコスプレイヤーに囲まれながら、怒涛の「アニメいずめんと」初参戦を果たしたのでありますが、この話はまた機会がありましたら。

帰りの行程についてはあっさりしたものです。
入国時にまとめてサインをもらってしまったので、帰りのシカゴ・オヘア空港(分厚いピザが美味しかった)では手続きなし。
羽田空港では、預入荷物をピックアップしてから、普通に税関で楽器証明書を見せて、ハンコを頂けました。

そして大決断

それから約半年。
「アニメいずめんと」主催者側から、ありがたいことに、来年もおいでませとのオファーを頂きました。
それはとてもとても嬉しいことなのですが、もう一度、あの大変な手続きをせねばならんことになります。
ならば。

手続きをしなくてもよい状態を作り出すべきではないか。

そう考えた私は、令和の世における日本唯一の琵琶専門店、石田琵琶店さんにコンタクトを取りました。

石田琵琶店さんに琵琶を預けて約1ヶ月後、帰って来た姿がこちらです。

全体像
覆手(ふくじゅ)
一の柱と糸口、糸巻の兎眼(白いポッチ)

お分かり頂けましたでしょうか。
象牙部分を全て、象牙以外の素材に替えてもらったのです。
もう私は象牙を携行しなくてもよい身となったのです。
これで次回はアメリカの長い名前の書類も必要なく、羽田空港で税関職員さんを偉そうに呼びつけなくても済み、アメリカの空港で係官に怒られることもない!
これに伴い、経済産業省発行の楽器証明書は、楽器を非象牙化した旨の書類を添付して返却しました。

アニメいずめんと2024

というわけで、来たる2024年5月24日~26日(現地時間)、アメリカ・ノースカロライナ州ローリーにて開催される「アニメいずめんと2024」に、荻山、2年連続2回目の出場が決定しました!

今年は「歌舞伎」がテーマのひとつになっているそうなので、歌舞伎と共通する演目をいくつか持って行こうと思っています。
そして、今年はどんなコスプレイヤーたちに出会えるか、今から楽しみです。

だいぶ引っ張ってしまった「アメリカに琵琶を持って行った備忘録」ひとまずこれにて終了です。
海外に楽器を持って行きたい方、楽器でなくても象牙製品等を持って行く必要のある方、少しでも参考になりましたら幸いです。
お読み頂き、ありがとうございました。

ひと仕事終えてくつろぎタイムの琵琶さん(この人は日本でお留守番です)

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