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歌詞というもの#4ー松本 隆4

「東京メルヘン」木之内みどり/作詞:松本 隆

もうじきに もうじきに 春が来るんですね*
もうじきに もうじきに 春が来るんですね

あなたにとって私など ただの心の道草でしょう
さむいポッケで二人の手 暖めたのもおとぎ話ね

冷たい人ね くちづけてても 肩越しに遠くを見てる
どこか乾いたあなたの胸を 涙でそっとぬらしましょうか

もうじきに もうじきに 春が来るんですね

恋人達の街角を 耳をおさえてただすりぬける
あなたの腕に抱かれてた 想い出だけにおびえる私

冷たい人ね サングラスへと 街影を映したあなた
古いブーツを投げ出すように 私の心 捨てるのでしょう

冷たい人ね 冬のコートを 着せかける無口なあなた
見せかけだけの春が来たって 風が身体を吹き抜けるでしょう

もうじきに もうじきに 春が来るんですね

松本 隆がアイドルに書いた作品といえば、
太田裕美、松田聖子が浮かびますが、
もちろん、アグネス・チャン、岡田奈々、ザ・リリーズも
忘れてはいません、
まずは、木之内みどりです。

1976年の作品。「です・ます調」の歌詞が
「ザ・フォークソング」という感じです。
例えば、松田聖子の「赤いスイートピー」のような
「映像喚起力ある詩」の場合、
その喚起力で、女の子をキャラクターを想像させて、
男の子の胸を「キュン」とさせる=ファンにさせるといった
仕掛けとなりますが、
この作品には、そういった要素はなく、
男同士のフォークデュオが歌ってもいいような
内容となっています。
そういう意味でも「ザ・フォークソング」です。

キモは、最初の小節目「春が来るんですね」(*の部分)は、
メロディがあがっており「疑問形」になりますが、
残りの「春が来るんですね」は、すべてメロディが下がっており、
「断定形」になっているところでしょう。

作曲は吉田拓郎。
編曲は石川鷹彦ですが、
想像するに拓郎あたりの入れ知恵でしょうが、
レゲエ歌謡曲になっています。
ピンとこないかもしれませんが、
ボブ・マーレィ&ザ・ウェイラーズは、
1972年にメジャーデビューし、
1974年には、エリック・クラプトンがカヴァーした
『アイ・ショット・ザ・シェリフ』が全米第1位になっており、
レゲエは、日本でも認知されていた分野なのです。
もともと職業作家の作品でなく、ニューミュージックと呼ばれる
ジャンルのアーティストの作品を多く歌ってきた
木之内みどりならではと言えるでしょう。

ちなみに、のちに高田みずえのデビュー曲となった「硝子坂」
(ダウンタウンブギウギバンドのオフィスにいて、作品を提供し、
80年代にプラスティックスを作った島 武実が作詞した名曲)は、
木之内みどりがオリジナルです。

※2006年5月初出


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