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【目印を見つけるノート】654. この日は毎年引用しつづけるのです

数年前、一度阪神・淡路大震災のことを書きました。
『こんにちは、お昼の放送です』

『お昼の放送』を模してDJスタイルで書いていたエッセイなのですが、そこで『満月の夕』(まんげつのゆうべ)という曲を取り上げたときのものです。

リンクは上の通りですが、
noteにも置いておこうと思います。
割とまんまです。
実は去年も同じようなことをしていますが、今回はほぼまるまる引用します。

ーーーーーー以下引用ーーーーーー

こんにちは。お昼のひととき皆さまいかがお過ごしでしょうか。おがたさわです。

 今日のランチの1曲はソウル・フラワー・モノノケ・サミット(ソウル・フラワー・ユニオンの別名義)の『満月の夕』(まんげつのゆうべ……1995年)です。

 ソウル・フラワーは音楽で行動するグループだと私は思っています。「行動する」、地べたに脚をつけて、世界にまなざしを投げて、どんなジャンルの音楽も取り込んで、とにかく動いている。

 今日の1曲は阪神・淡路大震災の後に作られました。タイトルは震災の日(1995年1月17日)が満月だったことに由来するということです。余震が続く中、満月の日に大きな地震がまた起こると人々が怯えている(とインタビューで読んだことがあります)。その気持ちに寄り添うように作られた歌です。

 先日、1月17日(2019年の文章です)、神戸の新長田駅前でソウル・フラワーの皆さんがこの曲を演奏されたことを、メンバーの奥野真哉さんのツイッターで知りました。
 私は、画像ですが、久しぶりにあの駅を見ました。何てキレイな駅だろう、キレイな駅前だろう、と思いました。

 以下は個人的な経験になります。

 1995年3月と4月、私は神戸市長田区と須磨区の小学校(避難所)に炊き出しボランティアで行きました。新大阪から先の新幹線はなく、在来線もところどころ寸断されていて、電車を乗り継いで行きました。4月は復旧していた部分があったと思います。
 新大阪から在来線の車窓を見ていました。比較的日常に近い風景だったのが、川を越えた途端に一変しました。損壊した、ひしゃげた家が次々に現れて、いっそうひどくなっていく。私は窓にへばりついてそれを見ていました。
 目的地の新長田の駅を出て、私は言葉を失いました。

 がれきしかない。

 ボランティアの集合場所の地図を握りしめてしばらくぼうっと突っ立っていました。1月16日まではあったはずの目印が何もないのです。どちらに行けばいいのだろうと、くらくらしました。すると先発で入っていた知人が来て、声をかけてくれました。
「こっちだよ」
 私はその人について歩き出しました。すぐにガラスの破片がスニーカーの裏に突き刺さるのを感じました。私は足元を見ながら一生懸命先行く人について歩きました。

 奥野さんのツイッターを見て、『満月の夕』を聴いたら、あの時の景色がはっきりとよみがえりました。

 あの震災で知人も被災しました。現地で実際に被災した方からすれば、ボランティアでほんのわずかに垣間見た経験など、経験のうちに入らないでしょう。その後も日本の各地で大きな災害がいくつも起こっています。それもあって、あまりこういう類いの話はしたことがありません。

 ただ、私の目が見たものは、私だけのものです。そしてそれは私だけの、たいへんな衝撃でした。
 そして、そこから24年(今年は27年)経った今だから、小さな個人の経験でも書く意味があるように思います。

 4月は入学式で、私たちは紅白のもちをこねて新入生に配りました。もうあの子たちも30歳(今年は33歳)なのですね。

 ソウル・フラワーの皆さんはずっと被災地に赴いて演奏しています。
 深く敬意を表します。

※神戸市長田区は阪神・淡路大震災で、火災の被害が甚大だったところです。被災した場所はこちらだけではありませんが今回挙げたので付記します。当時の写真も神戸市がサイトで公開していて見ることができます。

・長田区火災総数(件)……27(全市で175)
・焼損延床面積(平方メートル)……523,546(全市で819,108)
・全焼(棟)……4,759(全市で6,965)

http://www.city.kobe.lg.jp/ward/kuyakusho/nagata/jyouhou/quake/quake03.htmlより引用ーURLが変わったようですー筆者注)

ーーーー引用終わりーーーー

毎年自分の書いた分を引用するのもどうかと思われるかもしれませんが😅

私はこのとき書いたことを、永遠に毎年引用してもいいと思っているのです。月日を重ねてトピックスとして新しい話題が増えるかもしれないのですが、この『定点』は変わらないですし、おそらくこれ以上には書けないからです。

ですので、来年も引用すると思います。

そして、今年は初めて引用するのですが、この曲は共作なのです。そのお二方のヴァージョンを。( )内の方が共作されました。

この曲が今日はたくさん流れ引用されるでしょう。私はそのたくさんの中のひとつに、喜んでなりたいと思います。

HEATWAVE(山口洋)『満月の夕』

SOUL FLOWER UNION(中川敬)
『満月の夕』

犠牲になった皆さまのご冥福を心からお祈りいたします。

尾方佐羽

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