解雇規制がなくなると何が良いか

結論から言うと、解雇規制がなくなると、給料が上がったり労働時間が短くなったりします

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あちこちに書かれていることではあるのですけど、よく理解されてない方も多いようですので、整理しながら書いてみます。

解雇規制とは

そもそも解雇規制とは何かと言うと、日本では企業が正規雇用の労働者(いわゆる正社員)を解雇をするには原則として「整理解雇の四要件」というなかなかに厳しい条件を満たさないといけない、となっています。簡単に言えば「会社が潰れそうで色々やったけどもう他に打つ手がないくらいじゃないと解雇できない」ということです。

解雇規制のデメリット

そう簡単にクビにならないわけですから、労働者にとってとても良い規制のように聞こえますが、実はそうではありません。

まず会社の経営状態に応じて解雇をできない、つまり従業員を減らして人件費を抑制することができないとなると、会社の業績が悪化したときを見据え、従業員の給料を低めに抑えたり、余剰人員を抱えないようになります。

また、一度雇うと滅多なことでは解雇できないため、雇用する際は厳選に厳選を重ねる必要があります。言い方を変えると、採用活動コストが上がります。これも採用活動自体を控える要因になります。労働者の立場からすると、就職先を見つけるのが難しくなるということです。

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そうすると仕事が増えて忙しくなっても簡単には人を増やせないので人手不足になります。もちろん、今後の業績の推移予測や人員計画とにらめっこして必要に応じて人を採用するわけですが、それでも100の需要に対して100の供給とは全然いかないわけです。結果として、安い給料で長時間労働することにつながります

この需給調整役として現状働いているのが契約社員や派遣社員で、ご存知の通り景気が悪くなると一斉に契約解除されて社会問題になっています。

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ところが「こんなひどい会社辞めてやる!」と転職しようにも上述の通り、就職先は見つけづらいのでなかなか辞められない。。。

また、解雇規制があると正社員はそう簡単には解雇されないため、フリーライダーと呼ばれる、何もしない(だけならまだ良いのですが足まで引っ張る)無駄飯食いの社員が居座ることにつながったりします。それも往往にして、年功賃金制度のせいで賃金だけは高い古株社員だったりします。彼らが人件費を圧迫しているので真面目に仕事をしている人たちに適正な賃金を払うことができません。

解雇規制撤廃のメリット

では、解雇規制がないとなるとどうなるかというと、企業は極端な話「景気が悪くなったら解雇すればいいや」と人を雇えるようになります(あくまで現状と比較しての話です)。そのため、長時間労働を緩和させることができます。

また規制がなくなれば上述したようなフリーライダーのみなさんは解雇されますので、彼らに支払っていた給与をちゃんと仕事している人たちに払うことができるようになります。

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「そんなこと言っても、解雇した分の人件費は会社が丸儲けになって、わざわざ他の人の給料を増やしたりはしないんじゃないの?」と心配する向きもあるかと思いますが、大丈夫です。

先に書いた通り、解雇規制がなくなると人を雇いやすくなる(雇用の流動性が上がる)ため、仕事ができる人はより良い条件で雇ってくれる企業に転職しやすくなります。忙しいばっかりで給料が安いような待遇の低い企業は、人が流出するばかりで労働力を確保できなくなります。

それでは企業として事業を継続できなくなるため、給料含め待遇を上げざるを得なくなります。(逆を言えば、現状は待遇が低くても辞める人が少ないので低く維持できている、とも言えます)

また、企業側としては短時間しか働けない人も雇用しやすくなるので、労働者側としても柔軟な働き方ができるようになります

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もちろん、当然のことですが業績が悪化すれば現状よりはるかに解雇されやすくなるので、良いことばかりではありません。

ですが、解雇規制があるために雇用が絞られて、そもそも正社員になることができない人たちがすでにたくさん存在しているのです。解雇規制が撤廃されれば、彼らにも平等にチャンスが与えられます。

また、全ての業界において業績が悪いということは少ないので、解雇されても再就職するチャンスは現状よりずっと増えます。「解雇されても困らない」は言い過ぎですが、現状で解雇されるよりリスクはずっと低くなります。

まとめ

解雇規制があると…
・給料を低めに抑え、余剰人員を抱えない→安月給で長時間労働
・雇用の流動性が下がる→転職・再就職がしにくい
・フリーライダーが増える

解雇規制がなくなると…
・雇用の流動性が上がる→転職・再就職がしやすくなる
・待遇が良くなる(給料アップ、残業減少)
・時短勤務などの労働の柔軟性が上がる
・業績が悪くなると解雇される(ただし再就職はしやすい)

実際には上記したようにスムーズには行かず、様々な問題も起きてくることが予想されますが、トータルで見るとこういう方向に進みます。

必要なところに必要な人員が適正な賃金で雇用されるようになれば、企業の生産効率も上がり人々の生活レベルも向上します。それでも解雇規制はあった方が良いと思いますか?

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