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日立製作所は変わる意思を持って変わった【就活する前む企業研究】


株式会社日立製作所(以下、日立製作所)の公式サイトのグループ会社一覧のページをみると、「日立化成」の名称がありません(*1)。

日立グループは大規模再編に着手し、それは日立御三家と呼ばれた名門企業の売却も含むものでした。

日立グループの今がどのような状態になっていて、今何を目指しているのか探っていきます。

記事中のデータは2022年12月現在のものです。


*1:https://www.hitachi.co.jp/about/corporate/group/index.html


活動内容と概要


今の日立グループを象徴するのは、御三家の影響力の低下です。

御三家とは、日立化成、日立金属、日立電線のこと。

日立化成工業株式会社は名称を日立化成株式会社(以下、日立化成)に変え、日立製作所はその後、日立化成の株式を昭和電工株式会社に売却。日立化成は社名を昭和電工マテリアルズ株式会社に変えたことで、「日立化成」の名称が消えました(*2、3)。

日立金属工業株式会社は日立電線株式会社と合併し、今は日立金属株式会社(以下、日立金属)を名乗っています。日立製作所は今はまだ日立金属の大株主ですが、2023年にも日立金属株を売却する予定です(*4、5、6、7、8、9)。

つまりこの3社は、ビジネスはこれまでとおり継続しますが、「御三家」を背負える状態ではありません。

では、日立グループが優良企業を手放しても得たかったものとはなんだったのか。それは、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフです(*10)。


*2:https://www.mc.showadenko.com/japanese/information/2020/n_200623q9x.html

*3:https://www.mc.showadenko.com/japanese/company/history.html

*4:https://www.hitachi-metals.co.jp/corp/corp03.html

*5:https://www.hitachi-metals.co.jp/corp/corp01.html

*6:https://www.hitachi-metals.co.jp/ir/library/gh.html

*7:https://www.hitachi-metals.co.jp/ir/library/pdf/jh/85y.pdf

*8:https://jp.reuters.com/article/hitachi-idJPKBN2IF0F

*9:http://www.hitachi-metals.co.jp/ir/ir-news/20220926jb.pdf

*10:https://www.hitachi.co.jp/IR/library/stock/hit_sr_fy2021_4_ja.pdf


会社概要


事業を紹介する前に、日立グループを率いる日立製作所の概要を紹介します(*10、11)。


■日立製作所の会社概要

●本社住所:東京都千代田区丸の内一丁目6番6号

●代表:社長兼CEO、小島啓二

●設立:1920年(創業1910年、明治43年)

●資本金:約4,617億円

●連結従業員数:368,247人

●東証プライム市場に上場

●連結売上高:10兆2,646億円(2022年3月期)

●大株主(多い順): 日本マスタートラスト信託銀行(18.79%)、日本カストディ銀行(6.52%)、ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニー(2.36%)日本生命保険相互会社(2.07%)、日立グループ社員持株会(2.02%)


「日立」の歴史は明治時代にまでさかのぼり、今は東証プライム市場に上場する10兆円企業にまで成長しました。

ただし、日立製作所の時価総額は約6兆円で、国内20位です。時価総額ランキングでは、トヨタ自動車やソニーグループはもちろん、ユニクロのファーストリテイリングや東京ディズニーランドのオリエンタルランドよりも下位に位置します(*12)。

ただ現状は「産みの苦しみ」のさなかにあるといってよく、これからIT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5つの領域で巻き返しを図っていきます。


*11:https://www.hitachi.co.jp/about/corporate/hitachi/index.html

*12: https://strainer.jp/companies


日立のIT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフとは何なのか


日立グループが大規模再編をしてでも注力することにしたのは、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5つの事業です。5つとも広大なビジネス領域を持ちますが、日立グループが取り組む具体的な事業は以下のとおりです(*10)。


■日立グループのITとは

●デジタルソリューション●コンサルティング●ソフトウェア●クラウドサービス●ITプロダクツ●ストレージ●サーバーなど


■日立グループのエネルギーとは

●原子力●再生可能エネルギー●火力●パワーグリッドなど


■日立グループのインダストリーとは

●産業・流通ソリューション●水・環境ソリューション●産業用機器など


■日立グループのモビリティとは

●ビルシステム●エレベータ●エスカレータ●鉄道システムなど


■日立グループのライフとは

●生活・エコシステム●家電●空調●計測分析システム●医療用機器●バイオ●半導体など


このように並べると新日立の姿がみえてきます。

上記の5つの事業の順番は、日立製作所の有価証券報告書に書いてあるとおりに並べました。このような場合、重要なものから先に書いていくのが通例です。この理解が正しければ、日立グループが最も力を入れるのはITといえます。

社長の小島啓二氏も「日立は最新のIT×OT×プロダクトを組み合わせて(中略)持続可能な社会の実現と人々の幸せの両立に挑戦していきます」と述べています。

日立のITを深掘りしていきましょう。


日立のITとは


日立グループがITに最も力を入れているのは、これが大きなビジネスになるだけではなく、日立グループ内のその他の事業のデジタル化にも寄与するからです(*13)。

経済産業省は企業に対しDX(デジタルトランスフォーメーション)化を促しています。ITやデジタルでビジネスを強化しないと世界の競争に勝てないからです。

したがって、日立グループが顧客企業にITサービスやDXサービスを販売していくのは素直な流れです。

そうであれば、日立グループ自身もDX化していかなければなりません。DXをビジネスにするなら、自身が最新のDXで武装していなければならないからです。日立製作所のIT部門は、他の事業部門のDX化を進める役割を担っています(*13)。


日立製作所はDX強化策の一環として2021年にアメリカのシステム開発大手、グローバルロジック社を約1兆円で買収しました(*14)。

グループ内の優良企業を売却して得た資金でIT企業を買う構図になっています。「1兆円」は日立製作所の本気度を示すのに十分な額であり、IT企業に転身する不退転の決意とみることもできます。


*13:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC15BKY0V10C22A7000000/

*14:https://jp.reuters.com/article/hitachi-us-buyout-idJPKBN2BN0OG


総合力をあえて捨ててインフラに注力

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