売り込まない! 営業の仕組みを変える

百貨店個人営業(外商)での経験を活かして、顧客戦略に関するコンサルティングをしています…

売り込まない! 営業の仕組みを変える

百貨店個人営業(外商)での経験を活かして、顧客戦略に関するコンサルティングをしています。マーケティングとは、売り込みではなく、おのずと売れる仕組みを創ること。売り込まない、関係づくりのための活動を通して結果として顧客のライフタイムバリュー拡大を図る働き方構築をお手伝いしています。

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「経営者は現場のことを分かってないんですよ」

今年(2024年)3月21日の『毎日新聞(朝刊)』に「人を動かすナラディブ 人生をつむぐ聞き書きの力」という記事がありました。 「誰かが語る人生の物語に耳を傾け、話し言葉のまま書きとめて手作りの本にする。そんな『聞き書き』が近年、広がりを見せているという。」 こんな言葉から始まる記事でした。私も永らく労働組合専従として、職場環境の改善にむけて膨大な数の組合員の方々のヒアリングをして、その声を文章にして経営に投げ掛ける仕事をしてきたので、とても興味を持ちました。この『聞き書き

    • 【三越350年の記憶】その3:大阪三越

      「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーとして一般公開したいと考えます。 それぞれの史料に関する思い出などがございましたら、コメント欄に記して頂けると有り難いです。あわせて記録しておきたいと思います。 さて、今回も「大阪三越」です。 この写真の右奥の地上7階の建物は1917年9月に竣工した大阪三越新館だと思います。東側の旧館(仮営業所・木造一部3階建)

      • 【三越350年の記憶】その2:本店仮営業所

        「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーとして一般公開したいと考えます。 それぞれの史料に関する思い出などがございましたら、コメント欄に記して頂けると有り難いです。あわせて記録しておきたいと思います。 さて今回はちょっと複雑です。「本店仮営業所」です。 掲載の絵葉書を見つけたのですが、いつもどおり年代が分かりません。たまたま、台東区図書館デジタルライブ

        • 【三越350年の記憶】その1:催事場

          「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーとして一般公開したいと考えます。 さて、今回は「催事場」です。 掲載した史料は「御婚礼衣裳陳列会」「趣味の衣裳陳列会」のパンフレットです。この史料にも年代の記述はありません。手掛かりとしては、「四階西館」「五階西館」との催事場の位置。1923年9月1日の関東大震災で被災した三越は、10月12日に焼け跡にバラックを建て

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        「経営者は現場のことを分かってないんですよ」

          我々は此意味で学者の助力を仰ぐ ~三越の古典に学ぶ その21~

          日比翁助は「学俗協同」の精神を大切にしていた。それは、単に経営者として利益追求を目的とするのではなく、殖産興業、国の発展に貢献するのがビジネスであるとの信念だったと思う。 ********* ○商人は学者と提携せよ ◎学者を軽視する実際家 実際家は兎角学者を軽視する傾がある。 併し商人は日に日に進歩しつつある人を対手とするものである。一時一刻と雖も時に後れてはならぬ。記者が一時間に五十哩(マイル)走ると云ふ時代に東海道を籠で行くと云ふ様では到底発達する事が出来ぬ。少くとも五

          我々は此意味で学者の助力を仰ぐ ~三越の古典に学ぶ その21~

          売った後が大切なのに…顧客放置戦略をとってませんか?

          売った後こそ、大切なのに…。 そう思うことがあります。売り込むためには色々手を尽くすのですが、一度売れてしまうとその後は別の売り込みに気持ちが移ってしまっているようなのです。家電でも自動車でもそうなのですが、購入前には消費者はいろいろ調べて比較検討して商品を決定していると思うのです。 しかし、当該商品のカタログを一番真剣に読み込んでいるのは、実は商品を購入した後だ、と聞いたことがあります。消費者は高額品であればあるほど、自分の判断(商品の決定)が正しかったのか不安になるよう

          売った後が大切なのに…顧客放置戦略をとってませんか?

          先づ茲暫くは、学校出の人と経験のみで来た人の如何なる優劣があるか、試験時代である ~三越の古典に学ぶ その20~

          日比翁助専務は人材の育成・活用に大いに関心を持っていたことが伺える。特に取り扱い商品の拡大を図るにあたって、旧来からの呉服については丁稚奉公からの社員を当て、新規事業については学校卒業生を当て、それぞれの成果を認めていた。 ********* ○私の人物採用の方針 ◎経験と手腕 外国のデパートメントストーワは、極く上等な品物から台所道具に至る迄、あらゆる品物を販売して居るが、日本の現状は未だ夫れまで手広く行ふ必要もない。で私の方で先づ大別して呉服部と、雑貨部とを設けて居る。

          先づ茲暫くは、学校出の人と経験のみで来た人の如何なる優劣があるか、試験時代である ~三越の古典に学ぶ その20~

          染織業の発達に資し精粹を全国に抜かんと欲す ~三越の古典に学ぶ その19~

          伊勢丹との経営統合以前の三越の経営戦略の基本となっていたのは「顧客営業戦略」であると捉えている。耳目を集める広告で認知を高め、魅力的な催事・快適な店舗環境で来店を促し、魅力的な商品と公平な接遇で再来店を促し、生涯顧客へと育成していくというものである。1908年に仮営業所が竣工し、徐々に店内環境を整えつつあった三越は、催物についても充実を図るべく、全国に銘品を求めたと言える。 ********* ◎染織界の技巧の催進は 吾人が精巧品を全国に求むるに関連して読者の注意を乞はんと

          染織業の発達に資し精粹を全国に抜かんと欲す ~三越の古典に学ぶ その19~

          吾人は製品は広く精粋を全国に求め其優等なるものを選んで愛顧の諸君に供給せんことを期して居る ~三越の古典に学ぶ その18~

          いわゆる製造小売にはならないとの宣言なのだが、その一方で広く全国に埋もれた職人、銘品をもとめて、場合によっては育成することで精巧品を品揃えしていくという活動を繰り返していた。 ********* 第二編 商略の秘密 ○私が従来執り来りし商品の仕入の方針 ◎商店が工場を設置するの不可 商品の仕入は商家の最も重要とする所である。低廉に精良なるものを仕入るるを得ば優に市場に独歩し優勢を占むべしと雖も、不幸にして仕入品中に粗悪なるもの、不廉なるもの、若くは時勢の要求を伴はざるもので

          吾人は製品は広く精粋を全国に求め其優等なるものを選んで愛顧の諸君に供給せんことを期して居る ~三越の古典に学ぶ その18~

          其責任は我店が受けなければならぬ ~三越の古典に学ぶ その17~

          商売に苦情は付きものである。現在では、テナント販売や委託販売ばかりとなり、お客様からの苦情は直接百貨店側に入ってこない。もしくは入ってきても、取引先に苦情対応を任せてしまっていることがほとんどのようである。 ********* ◎真物を贋物なりとの苦情 是も亦近頃のことであつた。地方の客から渡邊省亭市の蓬莱山の書を注文され、早速之を郵送した。 私の店の書画は直接に筆者に揮毫を依頼したものである。其の間に贋物などの出来る理由がない。此点は私の店の誇として居るのである。然るに此

          其責任は我店が受けなければならぬ ~三越の古典に学ぶ その17~

          ポイントで獲得した顧客は、ポイントで離反する

          “経済的特典で獲得した顧客は、経済的特典で離反する” 例えば、ポイント制度。 ビジネススクール時代における研究テーマは顧客ロイヤルティでした。百貨店個人営業部門に在籍していた時に、担当者と顧客の信頼関係の重要性を現場の販売促進担当者として実感していたからです。お客様からは「担当の○○さんの成績にしておいてあげてね。」とか、「○○さんが勧めてくれるならば間違いないわね。」などとの会話が日常的聞かれていたのです。 一方で、企業としては、業績向上にむけて年間のお買い上げ高に応じて

          ポイントで獲得した顧客は、ポイントで離反する

          斯くして私は店の信用を維持す ~三越の古典に学ぶ その16~

          この事例は、日比翁助がお客様からの信頼をいかに大切にしていたのかを示すものである。 ********* ○斯くして私は店の信用を維持す ◎責任の益々重大なるを知る 弊店に来られる客の買物振を見ると私は益々自個の責任の重大なるを思はざるを得ぬ。買物にも品の大小、値の高下はある。然し最も痛切に感ずるのは貴金属部、美術部等に来られる客である。これ等の客は失礼ではあるが、質の真贋、品位の上下等を精確に鑑識される人は極めて稀である。これは客として素人として当然の事である。然るに其の買

          斯くして私は店の信用を維持す ~三越の古典に学ぶ その16~

          遽に適当の人材を求めんとしても得られるものではない ~三越の古典に学ぶ その15~

          企業に対するロイヤルティを醸成する場として年2回の運動会を開催し、寄宿舎にて将来の三越を担う人材としての教育を徹底していた。 ********* ◎店員休養法 私は是等の説明で常に店員をして精神的に業務に奮闘することを要めると共に、又其奮闘に対し休養を与ふることに努めて居る。即ち毎月二日間は仕事に都合を見て、店務に差支ない範囲内に於て交代に休養させて居る。又春秋二回には大運動会を催し平素の奮闘に慰安を与へて居る。 設備も略完全し店員一同も深く喜んで居るらしい。『夫れでは少

          遽に適当の人材を求めんとしても得られるものではない ~三越の古典に学ぶ その15~

          DXによって現場が混乱してしまうことだってあります

          先におことわりしておきますと、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」に取り組むべきではない、と言っている訳はありません。むしろ積極的に取り組むべきだと考えます。これからの時代にあって、ITの活用は不可欠であり、そのメリットを十分に活かすべきだと考えます。しかし、「DX」という名の下で、単なるデジタル化やシステム導入に留まっている事例が本当に多いのではないかと危惧しています。本来の「DX」は、IT活用を契機として、既存の業務フローを抜本的に見直し、組織を見直し、企業文化

          DXによって現場が混乱してしまうことだってあります

          如何に巨大な石のみがあつても夫だけでは石垣の堅牢を期することが出来ぬ ~三越の古典に学ぶ その14~

          いわゆる「石垣論」である。日比翁助専務は、経営者から従業員までの一体感の重要性を重視していた。 ********* ◎店主にても小僧にても責任は同じ 我三越は常に客本位を取り、客の便利を増進する為めには最善の力を用ひて居る。 従つて平常店員に対しても客の待遇に全責任を負ふことを奨励して居る。 三越を代表するのはこの日比翁助であると思ふものもあるかも知れぬ。が併し実はさうではない。諸君全体が各三越全体を代表して居るものである。成程重役と売場員や我は其の執る所の仕事は同一でない

          如何に巨大な石のみがあつても夫だけでは石垣の堅牢を期することが出来ぬ ~三越の古典に学ぶ その14~

          百貨店外商担当は、ただ商材を紹介しても売ってくれません

          先日、社会人のコミュニティで、雑貨を取り扱う経営者の方からこんなことを言われました。 「●●百貨店にポップアップで出店したことがあるんだけど、売上の35%も利益を取られたんですよ。それなのに販売員も我々が派遣して…」 私が百貨店出身だったこともあって、いろいろ話をしてくれました。 そうなのです。百貨店で商品を扱ってもらうとなると売上の30%程度を提供することを覚悟しないといけません。もちろん、百貨店側の理屈もあるのですが、故に出展業者はこうした負担を受け入れてくれる取引先

          百貨店外商担当は、ただ商材を紹介しても売ってくれません