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マルバカイドウ。(2024/03/10)

週の終わりに区切りをつけるつもりで書いていたのに、ここ数週間ばたばたしていて書けていなかった。できごとがたまる。とりあえず3月2日までをふりかえってみる。



先日、もう一度見たいと思って、「奈良美智: The Beginning Place ここから」を見に、青森県立美術館に行ってきた。平日であまり人もいないだろうと油断してたら、けっこう人がいて、うわぁ、って思う。でもここまで来て帰るわけにもいかないので、ちゃんと行く。

シャガールのアレコ」にはいつもいつ見ても圧倒される。時間を気にせずずっとあの巨大な絵をながめる日を作れたらなぁと思う。

前回来た時もそうだったけど、奈良さんの初期の作品がやっぱりとても気になった。そこにはなんだか、安易な共感を徹底的に拒絶するような、そういうものが滲んでいるような気がして、ほっとする。年表を見て初めて知って驚いたんだけど、奈良さんは石川の生まれらしい。90歳越えのおじいちゃんから引き継いだりんご畑も石川にある。へぇぇぇ、と思う。

コレクション展の方は人がいなくてゆっくり見れる。なんかやばい展示だった。美術館の仕事してるなぁぁぁと感心感激感涙する。「宣言4 田附 勝:刻み込む土地・わたし」が心に残る。六ヶ所、行きたい見たい。

総じてたのしく、でも例のごとくぐったりする。


先々週、青森市で行われたセミナーに参加する。

参加する前に、棟方志功記念館を経由する。3月末で閉館するから、間に合ってよかった。圧倒される。色が豊かな作品より、白黒で刻まれたシコウさんの作品が好きだった。「手に負う者達々の柵」がとくに。作品紹介の文を読んで、そう、かも、と思ったけど、そこにはなんかもっと黒々しいものが渦巻いていたような気がした。気のせいかもしれないけど。

例のごとくお昼ご飯を頼みすぎて、社長とアニキにヘルプしていただく。ぜんぜん学習しなくて、もう何なんだろうと思う。おいしかったけど。

午後はセミナーに参加する。農業系のセミナーだと我々は浮いちゃうんだけど、今回のようなセミナーではあんまり浮かないね、という話を社長とする。たしかにあんまりそわそわしない。

講演として中川政七商店の方のお話をきく。めちゃくちゃにおもしろかったし勉強になった。ビジネス界隈で飽きるくらい垂れ流されてきた言葉が、ちゃんとした重みをもって届いてきて、この人の中で、この会社の中で、いったいどれだけの表には出ない言葉が渦巻いているのだろうと思う。その方は入社して数年しか経っていないのに、何百年何十年前の会社の話を、まるで自分がそこを通過してきたかのように語る語り口もすごかった。中川政七商店は100年先のゴールを設定しているというお話もすごくおもしろく聞いて、居住まいが正されるようだった。有象無象の人間が通過していく株式会社という組織体にとって、100年先のゴールを設定する、それをゴールとして維持し続けていく、という営みの困難は、たかだか3年くらいしか株式会社の運営に関わっていない僕でも、ちゃんと想像できる。目標となるものにひとつ、出会った感じ。

もうひとつの講演の質疑応答で出た質問にゲンナリする。ゲンナリし過ぎて質問の途中で退席する。質問なのにあからさまに自分語りを混ぜ込んでくるのも、なんにもおもしろくないその場にいる人たちに失礼なことを言っているのに、自分の言ったことに自分で笑うのも、本当にやめてくれと思う。そしてやっぱり同年代で男。明日は我が身、アスハワガミ。

その後はとくに何事もなく、全体的にとてもたのしいセミナーだった。

2月は会社としてもいろんなところに出かけて、いろいろな人たちや業界の話を見聞きしていた。帰りがけにいっしょに働いてくれてるアニキが「今月すごい耕されました」と言っていて、うん、まさに、と思う。まだまだ不安定でお金がない小さな会社だけど、最初に掲げた理念的なところに向かって、少しずつ進んでいるような気はする。


先々週、確定申告に取り組む。

ふだん会社の経理をしているので、自分の個人事業の規模の小ささに力が抜ける。取引数もぜんぜんないから、ためこんでいた証憑の登録も思ったよりもすんなり終わる。キャッツたちのご飯代くらいは稼げただろうか。もうちょっとがんばってみたいけど、個人事業に力を入れるのはもっと先になるかもしれない。会社のことを今は一生懸命やりたいというのももちろんあるけど、個人事業としてのライティングに力を入れると沼るんじゃないかという恐怖もある。精進、ショウジン。

でも、こうやってふらふらできるのも、社長でもある妻が会社を作ってくれたからなんだよなぁ、と思い、彼女に足を向けて寝られないと気持ちを新たにする。


先々週、対話の森でお話をする。

詳しくは後ほど。でも、とても勉強になったし、楽しかった。

終了後、確定申告も終わっていたので打ち上げと称し、西弘の夕焼け小焼けで飲み食いする。肩の荷がおりてビールもおいしかったので、二人でぺらぺら、あれやりたいこれやりたいとしゃべり散らす。

キャット2(めろん)


毎週、葬送のフリーレンを見ている。

毎回見終わると、なにかしらロスってる。
今回(先々週の回)見た話もとてもよかった。最近ダイソーで手帳を買ってそれに簡単な日記をつけていて、その話を見た後にたぶん書いたんだろうけど「フリーレンを見る。イキテキタジダイガチガウッテ、ソウイウコト」とある。最近カタカナで書くのがマイブーム。

キャット1(あずき)


先週、友達が遊びに来てくれた。

もともと大館に行く予定だったけど前日の天気予報を見て大事をとり、家で遊ぶことにした。蓋を開けてみるとぜんぜん雪もふらず暖かいくらいで、なんだろうねぇ、と笑いながらスーパーで買い出しをする。

午前中りんご畑でがんばってきた妻もちょうどお昼に帰ってきて、三人で魚と野菜とスナックをつまみながらだらだらしゃべってだらだら飲む。キャット2の人懐っこさに友達は恐れをなし、ひたすら撫でている。びびりのキャット1も最終的にお気に入りの場所に四角く座ってリラックスしている。短歌のカードゲームやたほいやをしていたら、あっという間に夕方。

久しぶりに週末ナンニモシナイをして、大満足でした。



2月29日、弘前大学の講義室で行われた対話の森で、「あなたの根っこ」というテーマでお話をした。思っていたよりもたくさんの方が来てくださり、緊張しながらなんとか30分お話をした。

最初だけ原稿を用意して、それを読み終わったらその場で思いついたことをお話した。たくさんお話したいことがあった。軽く言い淀むこともあったけど、全部お話できないにせよとりあえず時間内にどこかに着地するだろうという感じの流れだった。でも途中、まったく言葉が出てこなくなった。気づくと頭の中は真っ白だった、静かだった、文字も音もなかった。久しぶりのことだった。気づくと空白に飲み込まれて、思考は停止していた。どこに行けばいいのかまったくわからなくなっていた。わからなくなった、とせっかく来てくれたみなさんに僕は言わなければならなかった。

言葉が出てこなくなる前に話していたのは「マルバカイドウ」についてだった。マルバカイドウはりんごの台木になる植物だ。りんごの木の根っこになっている部分だ。その生態について、僕たちがふだん見ているりんごの木は二つの植物がひとつになった姿なんだ、というお話をした後、僕はまったくしゃべれなくなったのだった。

みなさんに「わからなくなった」と言ったとき、話したいことたくさんあったんですけどみなさんのお顔をみていたらなんだかわからなくなりました、とも僕は言って、それはもちろんあって、でももう一つ、ちょっと落ち着いて考えてみたら、マルバカイドウというトピックが思っていたよりも巨大だったんじゃないか、ということを考える。マルバカイドウというトピックが、それをトピックとして踏み台にしてさっさと先の思考に行こうとする僕の足をぎゅっと掴んで引きづり込んで、いやいやまだおわってないでしょ、これからでしょ、と耳元で囁いていたような、そんなことを僕は考える。そう思うと、急に自分が話せなくなったことも腑に落ちる。

僕がずっとだまっているもんだから、ある方が質問をしてくれて、その質問が別の方の質問へとつながっていき、またつながって、という感じで、沈黙に沈みそうになっていた僕は、対話の森という場にすくいあげられ、みなさんのおかげで、最後まであの場にいることができました。

本当に感謝してもし切れません。

一応録音していたので、近々ポッドキャストにあげたいと思っています。

まだ怖くて、聞けていませんが。


やっと書けてよかった。
でも先週は先週でいろいろあったのではやく書こうと思う。






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