岡島克佳

約40年のサラリーマン生活を、組織開発という視点で振り返りながら、その時々に思うことを…

岡島克佳

約40年のサラリーマン生活を、組織開発という視点で振り返りながら、その時々に思うことを綴っています。 https://office-okajima.jimdosite.com/

マガジン

  • 1人から始める組織開発

    組織内個人が輝けるには、どうしたら良いのだろうか? 周囲の関わり方は? 自分自身の在り方は? 研修講師として様々な企業にかかわってきた経験から、徒然なるままに綴っていきます。

最近の記事

レジリエンス力を求めて不安を増大させない組織開発

科学は、あらゆる事象を合理で解決しようとする思想とも言えるでしょう。だから進化論に依拠した生態観察は、「必ず何かの役に立っているはずだ」という視点で推論されます。しかし、わかっていない部分に対しては、何の解答も用意されていません。にもかかわらず推論を重ね、「こうすれば良いはず」と思い込み、それに振り回されているように思われます。 例えば、ヒトは、なぜ不安を覚えるのか。人類史においては、ヒトは狩猟・採集社会から農耕社会に進化したと説明されています。ここで、狩猟・採集時代に生きた

    • 誰かの“できない”からチームを成長させる組織開発

      一般論として、大学受験の家庭教師として東大生を選ぶなら、志望校が東大でなければ意味がないと言われます。もし、学校の授業についていけないから家庭教師を雇うのだということであれば、東大生を選ぶことほど無意味なものはないと言うことです。なぜなら東大生には、「なぜ、わからないのかが“わからない”」からです。だから生徒は、「わからない」と言うことを諦め、双方のコミュニケーションが失われていき、結果的に学力は向上しないということになるのです。 このような状態に陥った生徒に寄り添うためには

      • “会社”を取り戻すための組織開発

        会社とは、本質的には、経営者がビジネスのアイデアを出し、資本家がそこに投資することから始まります。ここから資本家の役割は、実態のないビジネスに、会社という実態をもたらすものだと言えるでしょう。そうであれば、会社が資本家のものか、経営者のものかを論じることは、「鶏が先か卵が先か」の議論と同じことになるでしょう。ただ、この論理では、会社が、会社という実態に集まってきた従業員のものではないということだけは確かなように思われます。 欧米では、この構図が現代もなお、明確に息づいているよ

        • 『ガラスの天井』から視線を逸らして管理者を増やす組織開発

          近年の若年者には、出世欲がないと言われています。ある調査では、20歳代前半の男性の場合、2017年には4割程度に出世意向があったのに、2024年調査では25%に満たなくなったそうです。ただ、この傾向は若年者に限らないようです。2017年では、30歳代より緩やかに出世意向が下がり、40歳代で25%程度になって以降は横ばいたのに対し、2024年では、40歳代前半まで横ばい(25%程度)で、40歳代後半から急落しています。 一方、女性で出世意向を持つ人の割合は、20歳代前半から一貫

        レジリエンス力を求めて不安を増大させない組織開発

        マガジン

        • 1人から始める組織開発
          32本

        記事

          「理想的な職場は作らない」という組織開発

          現代の若者が考える働きたい理想的な職場とは、「安定し確実な事業成長を目指している会社で、評価の良し悪しによって給与があまり変化せず安定的な収入が得られ、会社の持つノウハウや型を学ぶことで自らが成長でき、どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身に付く職場」となるようです。一方で、正反対な(最も嫌われる)職場は、「リスクをとりチャレンジングな事業成長を目指している会社で、評価の良し悪しによって給与が大きく変化し、個人が試行錯誤を行うことで自らが成長でき、その会社

          「理想的な職場は作らない」という組織開発

          「イチかバチか」ではなく、グラデーションの中で進む組織開発

          人類が最初に作った道具は棒と言われ、二番目に作ったのが縄と言われるそうです。ここで、棒は相手(危険)を遠ざける道具であり、縄は欲しいもの(獲物)を近づける道具とも解釈されます。このような、遠ざけるか、近づけるかの二者択一的発想、つまり二項対立という発想は、人間の根元的なものなのかもしれません。しかしM&Aを例に挙げれば、対立と融和の間には、完全なる吸収だけでなく、100%出資子会社として存続、議決権ベースでの間接支配、資本提携、業務提携と、その手法はグラデーションのように存在

          「イチかバチか」ではなく、グラデーションの中で進む組織開発

          管理しなくても自由意志で貢献に向かう組織開発

          誰しもが、自由でありたいと思うでしょう。しかし、自由とは「自ずに由る」ということであるなら、従うべき確かな自分が無ければ、必然的に自由ではいられないということを示している言葉だとも受け止められます。例えば安部公房は、その著『砂の女』で、蟻地獄のような砂の穴の外に出ること(自由になること)と、砂の中に安住すること(自由を放棄すること)の選択を迫ることで、自分を取り戻すこと、自分が自分であり続けることの困難さを著しました。ありていに言えば、管理下で従順にいるほうがラクであり、自分

          管理しなくても自由意志で貢献に向かう組織開発

          ハラスメントに怯えず、孤独を“ひとりマグマ”に換える組織開発

          人には、不安を和らげたいという欲求があります。これは、現代がVUCA時代あるいは格差社会と呼ばれているから生まれた欲求だったり、あるいはSNSに象徴されるバーチャル社会に対する反動であったりするかもしれませんが、本来的には、多くの動物にも共通して備わっている欲求であって、それは本能と言っても良いものだと理解されています。 そしてこのような欲求は、人を通じて安心を感じること、すなわち人と安心できる関係を持つ(人と繋がる)ことで満たされると考えられています。単純に言えば、「一人じ

          ハラスメントに怯えず、孤独を“ひとりマグマ”に換える組織開発

          “お友達”ではない心地良さを生む組織開発

          新卒一括採用は、日本的雇用形態の典型として挙げられます。そして、多くの企業の人事・教育担当が、4月、それに付随して行われる新入社員研修に忙殺されるのも、日本の風物詩でしょう。その良し悪しは別として、様々な企業の新入社員だけを比較できるこの機会は、アンケート調査とは違った実態を垣間見ることができます。 研修につきもののグループ・ディスカッションでは、忖度を知らない自由な発言が飛び出してきます。そこから、その企業が、どのような視点で人材採用をしているのか、少しおおげさに言えば企

          “お友達”ではない心地良さを生む組織開発

          ハラスメントに怯えた“分断”を“進歩”に換える組織開発

          ピストルを持った何者かに襲われたとき、相手を立ち上がれないほどに殴りつけると過剰防衛と言われます。一方で、相手を射殺してしまったときは、正当防衛となる…。この違いは、「かわいそう」にあるような気がします。前者の場合は、包帯にまかれてベッドに横たわる姿を目にすることができますが、後者の場合は、感情を寄せる対象そのものが消失しています。このことが、第三者の評価に影響を与えるのではないでしょうか。昨今のハラスメントに対する取り扱いにも、同様のレトリックが存在するように思われます。す

          ハラスメントに怯えた“分断”を“進歩”に換える組織開発

          不適切発言が人と人の関係の質を高める組織開発

          瞑想では、「呼吸を感じなさい。そして、指先、つま先へと、全身を感じなさい」と諭していきます。このとき導者は、相手(瞑想体験をしている人)が五体満足であることを前提にしています。しかし、そのことを指摘し、“炎上”させる人はいないでしょう。 多くの者に語りかけるとは、“一般論”を語ることと理解される場合が多いのではないでしょうか。そのように理解すれば、一般論はマジョリティに準じるものであって、“すべて”は対象にしていないという方便が想起されます。すなわち、それを否定するなら、全

          不適切発言が人と人の関係の質を高める組織開発

          武士道に憧れずVUCAを乗り切る組織開発

          合戦に臨む武士を奮い立たせた概念は、「命を惜しむな、名を惜しめ」だったと言います。つまり、後世の人が「意味のある死だった」と認めるような死に方をすることが、武士の生きる目的だったわけです。「武士道とは、死ぬこととみつけたり」という言葉も、そのような発想から生まれてきたように思います。 人が何かを作るときには、必ず目的があります。だから、今、在るものには、すべて存在理由があるはずだと考えます。武士であれば、自身は主君のために存在していると考えたでしょう。そしてその理由とは、周

          武士道に憧れずVUCAを乗り切る組織開発

          “タイパ”を無視して効率の良い会議を実現する組織開発

          「総論賛成、各論反対」という場面は、よく目にするところではないでしょうか。そして、各論においてディベートが行われ、誰かが勝つことになるのでしょう。しかし、ディベートで得られた結果に満足する人は少数です。負けて納得することは稀で、大抵は悔しがるものだからです。そこで、このような場合の対処方法としては、一度、総論に戻ること、すなわち、総論の根元にまで議論を遡ることが求められます。その上で、改めて各論に向けた議論を展開し、新たな方向性を見つけることが必要でしょう。 この時、対立が

          “タイパ”を無視して効率の良い会議を実現する組織開発

          部下理解の呪縛を解き、部下信頼を可能とする組織開発

          突然ですが、「1+2+3+…+∞=-1/12」という等式を見て、どのように感じますか? 正の整数を無限個足し合わせた結果が、負の12分の1になることを納得できる人は、おそらく少数でしょう。しかし、この等式が正しいことは、証明されています。そして、これだけの説明で、「そうなんだ」と納得する人が少なからず存在するからこそ、アインシュタインを超える理論物理学とも言われる超弦理論の研究が続いているとも言えます。 20歳代社員の説明を聞いても「本当か?」と思ってしまう40・50歳代の

          部下理解の呪縛を解き、部下信頼を可能とする組織開発

          理屈に合わないからこそ思考する組織開発

          Microsoft は頻繁にWindowsの更新を行っています。更新メッセージに従えば、より便利になるのかもしれませんが、更新するたび、自分なりに構築してきた便利さが失われてしまうことには辟易とするものがあります。とくに、自分にとって不要な技術の更新のために、このような苦行を強いられることには抵抗を感じます。それでも、マニア化したユーザー以外は、プラットフォームがコモンとして存在していない以上、『サポート』を経済合理性で解決するために生じる不便には、抗いようもありません。この

          理屈に合わないからこそ思考する組織開発

          “憧れる”から生まれる「知識と経験」を活かす組織開発

          長嶋茂雄氏が現役を引退したのは、38歳でした。しかしダルビッシュ有選手は、42歳までプレーすることを前提にパドレスと契約しています。生命科学の進歩によるものではありますが、それでもそれを実現することは、前人未到の山中に分け入るもののようなものでしょう。 前人未到の山中に分け入るとき、「この岩は迂回できそうだ」という判断は、経験からくるでしょう。また、「この崖は頑丈そうだ」という判断は、知識からくるものだと思います。つまり、経験と知識の積み重ねが、将来を切り拓く術になるのだと

          “憧れる”から生まれる「知識と経験」を活かす組織開発