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事故や事件の防止をどうする・万が一発生したらどうする

ここ数年、障害福祉や介護の施設等での事故等の発生に関する報道が目立つような感があります
その背景には、障害福祉や介護に関する社会的関心が高まっているからだと思われます
関心が高いことは喜ばしい状況ではあるのですが、ひとたび事故等を起こせば、思った以上に目立ってしまうことにもなります

そんな状況・風潮を感じたのか、東京都福祉局から、事故等防止対策に関する通知文書が発出されました
この通知は、以前から出されていますが、令和6年5月9日付で新たに発出されました

今回は、この通知文書の内容についてのお話しです

参考リンク:東京都福祉局(東京都障害者サービス情報)


通知文書の概要

報道などでご存じのとおり、障害福祉の施設や事業所における事故や事件が後を絶ちません
加えて、今年度の報酬改定に伴って制度や基準の変更などがありました
それらを背景に今回の通知文書には、次のような事項が示されました

1.徹底した事故防止対策

 ①あらためて利用者に対する支援状況の確認
 ②ヒヤリハット事例の分析と事故防止マニュアルの作成及び再検討
 ③リスク管理の徹底
 ④職員研修の実施等

2.事故等発生時の報告等

 ①死亡事故など発生時の電話による速報の実施
 ②事故報告書提出フォームによる第1報の実施
 ③事故報告(続報)の実施
 ④自然災害による被害発生報告の実施

3.報酬改定に伴う未実施施策に対する報酬減算

 ①虐待防止措置未実施減算
 ②身体拘束廃止未実施減算
 ③業務継続計画未策定減算
 ④情報公表未報告減算
 ※これらについては、別記事(ココ)を参考にしてください

4.運営基準の見直し

 ①意思決定支援の推進
 ②本人の意向を踏まえたサービス提供
 ③個別支援計画の共有

これらのうち、「徹底した事故防止対策」と「事故等発生時の報告等」について、次にお話しいたします


徹底した事故防止対策

都が憂慮している事故や事件には、次のようなものがあります

  • 死亡事故(誤嚥によるもの等)

  • 入院を要した事故(持病による入院等は除く)

  • 上記以外で医療機関での治療を要する負傷や疾病を伴う事故

  • 薬の誤与薬

  • 無断外出(無断外出による事故)

  • 感染症の発生

  • 送迎車両の車内への利用者の置き去り事故

  • 事件性のあるもの(職員等による暴力事件等)

  • 保護者や関係者とのトラブル発生が予想されるもの

  • 施設運営上の事故(不正会計、送迎中の交通事故、個人情報の流出等)

  • 区市町村に通報された虐待

これらの事故等を防止するため、以下のような対応が期待されています

1.利用者の状況やニーズと行っている支援内容の精査確認

事故等につながる要因の早期察知と排除につなげます
特に、サービス担当者会議や個別支援会議の開催の機会に、利用者本人の状況やニーズの確認と支援内容の適否などとともに、事故等の要因がないかを把握するようにします

2.過去の事例やヒヤリハットなどで得られた教訓を活かした対策や手順の具体化

ヒヤリハット事象が確認された都度、それを記録し、全職員等で共有し、再発防止策などの意見の提示や交換を行うようにします
また、利用者の状況やニーズの変化に対応した対策や手順の見直しも並行して行います

3.想定する事故等リスクに対する態勢維持と意識保持

想定されるリスクを考察し、要因となる事象の防止策の検討と実践を全職員等で共有します
この際、今は発生しそうもないリスクであっても、いつでも起こり得るとの考えのもと、事故等防止に関する意識を保持し続けるように注意喚起します

4.定期的及び都度の研修の実施

以上までの施策や活動を具現化するため、定期的及び必要の都度、研修の場で全職員等に対して徹底します
また、定期的な実施が義務化されている研修については、必ず実施し、実施後は記録を作成し、その後の施策や活動に反映させるようにします

これらの施策や活動は、特別なものとして単独で行うのではなく、平素からの業務とともに・平素からの業務として行うことが肝要です


事故等発生時の報告等

事故等の発生時の都や区市町に対する報告は、その後の対処や再発防止に向けた活動につながる大切な業務です

ひとたび事故等が発生すると、平素の業務に加えて事故等の対処に多くの人員労力と時間を必要とします

  • 被害を被った利用者や職員等の保護・救命救護

  • 被害拡大(2次被害、3次被害の発生)の防止

  • 関係機関等への緊急通報

  • 保護者や関係者への報告

  • 職員等の参集と情報共有

  • 一連の活動内容の記録

  • 事故等の発生の経緯の整理や原因等の分析

  • 再発防止策の策定

  • 保護者等への説明と報道対応

  • 被害の復旧・修復

これらを同時に又は順序立てて進めなければならず、職員等のみで適切に行うことは極めて困難です

事故等発生時、行政機関に対して報告を行うことで、必要な処置などに関する指示や助言、支援を受けることができます
そのためには、報告業務を面倒・わずらわしいと思わず、適時適切に行えるように日頃から準備しておくことが大切です

特に、事故等が発生してから報告要領などを確認するようでは、業務負担が増えるばかりか、混乱を招き、正確な情報を伝えることができなくなります
よって、何も発生していない平常時に報告の手段や要領を確認しておき、職員・従業者による訓練を行うことが望ましいでしょう

参考ではありますが、事故等発生直後から報告に至る流れの一例を以下にアップしておきます
なお、アップした内容は一例であるため、施設や事業所の特性等を踏まえて独自の流れ図やチェックリスト、マニュアルを整備しておくことをおすすめします

参考資料:事故等対処のフローチャート


まとめ

今回出された事故等防止対策の徹底に関する通知は、事故や事件の発生を防止し、万が一発生した際の報告などについて述べられています

事故等が発生しない環境や態勢づくりが重要ですが、万が一発生した際に何をすべきなのかを整理し、職員等が適切的確に動けるようにしとくことも重要です

行政機関などへの報告や通報は、その中の一つの活動ですが、間違った動き方をすれば事態を悪化しかねません
そのことを全職員等が理解して必要な準備をしておくことが必要です
 
また、いつもの業務にはマンネリ化による事故等発生リスクがあります
また、災害の発生など、避けることができない事態も考えられます
それらを踏まえて、次のような結果が得られるように態勢の整備と施策の実行が必要です

①事故等の発生を未然に防ぐ
②発生しても被害を小さく・少なくする
③被害から守るべきものは守り、それ以上大きくしない
④被害から早期に復旧する

最後に、あらためて言いますが・・・
事故や事件、災害などから利用者と事業を守ることを特別なものとせず、平素からの業務とともに・平素の業務として継続することが肝要です
 

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