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インタビュー時の「オウム返し」の技法

フリーランスでライターをしているのですが、仕事に活用できる技法をそのポイントの整理もかねてnoteにまとめました。ご参考までに。

インタビューで役に立つ技法の1つに「オウム返し」があります。別名では「伝え返し」とも言われます。

もとはカウンセリングで使われる基本的な技法です。クライエント(患者)が発したことばをカウンセラーがそのままオウム返しをすることによって、クライエントとの信頼形成やクライエントに内省を促す効果があります。

昨今では、企業で上司と部下が行う1on1ミーティングでも「傾聴」とともに「オウム返し」も技法として紹介されており、普及されているのだそうな。

冒頭に書いたとおり、ぼくはフリーランスでライターをしているのですが、オウム返しの技法は実務上、とても使えると感じています。具体的なポイントは以下の4つです。


①取材の場の速度調節

そもそもインタビューの冒頭は、応答のリズムが定まっていないのでインタビュイー(インタビュー対象者)の口調は速くなりがちです。

インタビュー慣れされている人は自分で速度を調節できますが、慣れていない方の場合、インタビュアーが何もしないと加速度的にスピードが上がります。インタビュアーが機能していない状況ですね。

インタビュイーに安心してもらうとともに適度な速度でお話しいただくために、呼吸を整える意味も含めて、オウム返しを挟むことで調節を図ります。道路の赤信号のような役割といってもいいかも。

②キーワードの掘り下げと内容の明確化

取材の場ではいくつかキーワードになる言葉が出てきます。キーワードは、インタビュイーの声の抑揚や表情の豊かさとしてあらわれます。

このとき、インタビュアーが逃さずオウム返しとして反応を示すことで、インタビュイーは興が乗りますし、より話が盛り上がるので円滑な取材の進行につながるのです。

また、内容に少しわかりにくい部分があった場合に、オウム返しの語尾のトーンを上げることで暗に補足説明を求められる、という使い方もあります。

とくに日本人は主語を明確にしないクセがあります。取材の場で「いつ・だれが」などの5W1Hを押さえておかなかった場合、後で記事を書くとき苦労します。(取材後に録音を聴いて「しまった!」と叫んだ経験が何度も!

③インタビュアー自身の短期記憶として

オウム返しで声に出すと、その内容がインタビュアー自身の記憶に定着しやすくなります。

例えば、日常生活でも同じような活用をしていると思います。スマホのワンタイムパスワードを画面で確認し、同じスマホで入力が必要な場合に、そのパスワードを声に出しながらしばし覚えようとした経験はないでしょうか?

インタビュー時におけるオウム返しも同様の効果があります。インタビュー時にノートや用紙を手に持っていても、メモとして使えないことが実はけっこうあるんですよね

例えば、企業の応接室のような場所は、ローテーブルにソファという配置が多いです。その場合、インタビュアーの目とメモには距離が生まれます。キーワードと思って書いたことを見返す機会がつくれないんです。

なぜインタビュー中に短期記憶が必要かというと、次の「要約」と関連しています。

④「要約」による再確認とファシリテーション

たいていのインタビューには章立てがあります。例えば、商品やサービスの事例インタビューの場合は、一般的には次のような章立てで、取材もこの順番で進めます。

【導入事例の章立て】
・企業紹介(省略する場合もあります)
・導入の背景
・選定理由
・導入した際の感想
・導入の効果
・今後の展望、メーカーに期待すること

インタビュアーは進行役も兼ねますので、ある程度お話いただいたら次の章へ話題を促すことが求められます。

ただ、インタビュイーが自然に話を終えることはあまりない。何かしら働きかけをしなければ、話題がぐるぐると循環するのが普通です。自分のお話に不足があるのではないか、と不安になってしまうんですよね。

そのときインタビュアーが「要約」を挟むことで、お話しいただいた内容の再確認とともに次の章へ移ることを促せます。「要約」は階段の踊り場のようなものです

また、あとで記事執筆をする際、要約した内容が「見出し」になりますので、要約をうまくできるかは記事の品質にも影響します。正直、私はまだ要約が苦手なので、イイ見出しが付けられず困っていますが(ぐへぇ)

まとめ:「オウム返し」は信頼獲得とファシリテーションに役立つ技法

ちなみに、オウム返しを多用するとインタビュイーが話しづらくなります。高頻度でオウム返しをされるとつまづくような感覚に陥るんですよね。この点には注意しています。

ただ、適切な頻度とタイミングのオウム返しはインタビュイーの信頼獲得や安心感にもつながることはまちがいありません。限られた取材時間を円滑に進めるためのファシリテーションの技法としても大いに役に立ちます。

また、インタビューの形式が対面ではなくWeb会議を経由する場合、オウム返しの技法は効果絶大です。というのも、人間のコミュニケーションは言語7%にたいして非言語が93%と言われています。

Web経由では非言語コミュニケーションが伝わりにくい分、より言葉での伝え返しが必要になる点も実務上、よく感じているところです。


以上

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