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短編小説|掌編小説

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おぼろげな夢の記憶を脚色したり、眠れない夜にしたためたもの、音楽にインスパイアされた物語など、さまざまなジャンルの短編・掌編を集めているマガジンです。気まぐれに増やしていきます。
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記事一覧

[掌編]最後かもしれないラムネのこと

 夏の花火大会は、海岸でおこなわれる。  人口二万人ほどの小さなまちでの大会を楽しみに、…

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[短編小説]魔法使いの山登り

 地を見てもきりがなく、天をあおいでもきりがない。  どれほどの間この山を登り続けている…

22

[短編小説]これは恋じゃない

   毎週金曜日の夜は、『暗黙の了解ナイト』だ。  どちらからともなく連絡をとりあって待ち…

36

[掌編小説]踏みしめて変身せよ

 今日、仕事を失った。  どうにもならない世界の動きに苛立ったところで、私の仕事が戻るわ…

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[掌編小説]つめたくはない

 小さな窓から西日がさすころ、毎日あなたはやってくる。  屋根裏の部屋が橙色に染まるとき…

12

[短編小説]彗星一景

一 <それ>は、忌み嫌われていた。  大名屋敷でも飼われるほど、猫は福を呼ぶとされてかわ…

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[短編小説]フェニックスの尾

 週末、母が倒れた。認知症の祖母の世話による過労だった。  姉からその連絡があったとき、私は上田さんと口喧嘩の最中だった。  きっかけは、パスタを茹でるために入れる塩の量だ。多いだの少ないだのといった他愛のないやりとりが悪化して、それなら自分で作ればいいじゃないのと癇癪を起こした私は、茹でているパスタをお湯ごと流し台へ放った。 「そこまですることないのに。悪かったよ。ごめん」  苦笑する上田さんに、あなたのせいだと内心で悪態をついた瞬間、いつもの悪い癖が頭をもたげてきた。男性