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関西の茶碗展2023より(初代長次郎 黒樂茶碗 面影、二彩獅子 樂美術館)

この夏から秋にかけて関西の多くの美術館で「茶碗」にまつわる展覧会が開催されています。会期が残すところわずかとなっている展示もあり、この機会に作品を取り上げたいと思います。
2023_cha-discount.pdf (kyohaku.go.jp)

初代長次郎 
二彩獅子(重要文化財)、黒樂茶碗「面影」 樂美術館

二彩獅子像(重要文化財)
文化財オンラインHPより
黒樂茶碗「面影」
茶道具辞典HPより

まずこの二つの作品を見比べていただきたい。一つ目は、迫力のある実に躍動的な獅子像。もう一作品は、どっしりと落ち着いた印象の黒樂茶碗。
私はこれらの作品を創ったのが一人の陶芸家だということを知り、驚きました。作風があまりに違う。

作者の名は?

作者の名前は長次郎。千利休の命を受け、それまで大陸からもたらされた陶磁器が至上であるとされた価値観を覆し、茶を点てることに特化した和物茶碗を作り上げた伝説的な陶工です。

長次郎には謎が多い。生まれた年も死没した年もはっきりとしない。ただ、どうやらそのルーツは大陸にあり、長次郎の父は唐人、阿米也という人物であるということは文献からたどることができるそうです。そしてこの人物が中国から三彩陶の技法を伝えたらしい。

その技術を受け継いだ長次郎の最初期の作品が二彩獅子像であり、天正2年(1574)作であることが腹部に彫られた銘文から読み取れます。千利休の求めに応じて樂茶碗を作り出したのは、それから数年後の天正7年(1579)頃だと考えられていることから、この獅子像は長次郎による樂焼きの成立時期を明らかにした学術的価値から重要文化財に指定されました。

樂茶碗が、轆轤を使わず手捏ね(てづくね)で成形を行なうことも、もともと彫刻的な陶芸にルーツをがあることを考えると合点がいくように思います。

今回の樂美術館の展示では、贅沢にもこれらの作品を同時に鑑賞することができます。ぜひこの機会にご覧になられてはいかがでしょうか。

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