振返り休日
新緑の季節です。
「振替休日」と云う一日を以って世間では大型聯休と呼ばれる休日も過ぎましたが、今年も例によって別の日に代休を戴く事で仕事をしておりました。
尤も業者が軒並み休みなので仕事も早くに上がる日もあり、そうした日は近所を散歩して静まり返った地元を眺めてみるのもまた一興であります。
さて、そんな「休日」を振り返る「振返り休日」と致しまして、さゝやかな初夏の空氣を愉しんで參りました。
今年もこれを見られてよかったです。
地元の川に毎年掛かる鯉のぼりでございます。
どこか遠くへ行かないと、なかなかこうした大きな鯉のぼりが見られなくなりました。
東京はどこを向いても雑居ビルやマンションか狭小住宅ばかりなので鯉のぼりも泳ぐのが難しくなりつゝあります。
そんな中でもこうして雄大な姿を見せてくれるのは本當にありがたい事です。
風情の無くなっていく昨今、今年もより多くの子供達に悠々と泳ぐ姿を見せてくれたらと願うばかりです。
この川は今年の春に櫻を見に行った場所と同じ所であります。
あの頃は櫻色に染め上がっていた木々も今は青々とした初夏の彩を見せております。
その若葉生い茂る木に心地よい風が吹き込んできます。
葉が風に吹かれてさわさわと音を立て清々しい初夏の香りを運んできます。
この時期にこの様な並木道を通ると子供の頃に毎回夢中になって観た『コナン』を思い出します。
私にとって『コナン』とは「名探偵」ではなく断然「未来少年」なのです。最終回迄家族みんなでテレビを囲んで樂しんだ漫画であり、演出にこの高名なお二方が揃い踏みなのも昔は豊かな時代だった事を物語っている様であります。
歌の前のオープニングが毎回怖くて西暦2008年の7月に本當に世界が滅びるんだろうかと思っていました。
子供の頃は怖かった未来の西暦2008年…。今となっては懐かしいのが不思議です。
思い出のこの場所の景色も移ろいゆく季節の中で様々な姿を見せてくれます。
そして、そのそれぞれの姿に懐かしい思い出は蘇ってきます。
私は散歩をすると自然と懐かしい場所へ足を運ぶ習性があります。
そこには子供の頃から変わらぬ新緑の時期の草の匂いがします。
こうした自然の匂いや音、温度等を敏感且つ的確に捉える事が出來るのは實は世界的に見ても珍しい能力らしく、我が民族の持つ誇るべき性質ではなかろうかと存じます。
私も例外ではなかった事をとても嬉しく思っております。
こうしたものは大事にしたいものです。
途中で昔からやっている喫茶店へ入るのは最早お約束です。
安っぽいチェーン店では絶對にしない「喫茶店」の匂いがそこには在ります。
この雰囲氣を愉しむのが職人さんの淹れてくれた珈琲を味わうとともにひと時の清涼なのです。
この日は少々暑い一日でありましたのでチーズケーキとアイス珈琲等を戴きます。
幸運にも一日8個限定の自家製チーズケーキを戴けました。
こう云う一寸した幸せを幾つも持っておくと何かと荒廃した現代社會も樂しく生きてゆけます。
お茶と柏餅と愛用の煙管で一服致します。
バルコニーから眺める櫻の木。いつの季節もここは特等席であります。
この時に淹れたのが一寸珍しいごぼうのお茶。
旅先で手に入れた品物ですが、確かにごぼうの風味がして面白い味わいです。
こうした眺めはとっても大事なものです。
どこを向いても人工物ばかりの「インダストリア」に居れば尚の事であります。
このお茶はお通じが良くなる様でございますが、お便所も夏仕様に衣替えです。
勿論、お風呂も然り。
菖蒲湯は時節を愉しむ為に毎年欠かさず入っております。
その菖蒲は魔除けの為にこうして軒先に吊るしておく風習があるので私もそれに倣っております。
折角、素晴らしい季節のある日本。そして古來よりそれと普遍的に触れ合ってきた日本人。
こう云う一寸した事が思いもよらぬ力になっていくのだと思います。
確かに今は「未来」なのかもしれません。
そんな中だからこそ、こうした季節の風情を大切にしたい性分なのです。
さて、一寸早起きをしてしまったからには今日も出勤前に雨の匂いでも嗅ぐと致しましょう。
〽生きているか~ら~♪
明日があるか~ら~♪
…仕事が廻ってい~る~か~~ら~~♪
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