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CS界の青本「カスタマーサクセス」を読んでみた!

部署移動から1年と2ヶ月、今更ながらCS界の青本とも呼ばれている、『カスタマーサクセスサブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』を読みました。自分メモ&インプットの質を深めるために、内容をまとめてみました。それでは、行ってみよう〜!

カスタマーサクセスが重要視されている背景

日本でも、NetflixやAmazon Prime、カーシェアリングなど、IT業界だけではなくあらゆる業界でサブスクリプションビジネスが展開され、利用者が増えている今日。そんなサブスク型ビジネスで最大の課題は「顧客の解約・離脱を防ぐこと」。
従来のビジネスでは、顧客との関係の"終着点"が購入でしたが、サブスク型ビジネスでは、購入は顧客との"関係の始まり”に過ぎない。顧客と関係性を築き、解約・離脱を防止するためにCSが重要視されるようになった、と本書では紹介されている。

カスタマーサクセスが重要なわけ

・チャーンの減少と管理:解約による弊害は、金銭面にとどまらず、悪い評判が拡散されたり、競合会社の製品を採用する、といったような二次的な弊害につながりかねない

・既存顧客の契約金増:顧客をサクセスに導く中で、アップセルやクロスセルにつなげることができる

・顧客ロイヤルティを生み出す:顧客と関係性を構築し、顧客ロイヤルティを生み出すことで、解約や離脱を防止するだけでなく、顧客のアドボケート化を狙うことができる

・カスタマーエクスペリエンスと顧客満足度の向上:顧客を離さず喜ばせることを一般的に二次収益と呼ぶ。この言葉を使うアドビ・エコサインの元CEOジェイソン・レムキンは二次収益によって、顧客のLTVが50%100%増加すると考えた。

【二次収益の例】

・ジョンはあなたの製品を気に入っている。A社からB社に転職しても、そこで再びあなたの製品を購入する

・ジョンはあなたの製品を気に入っていて、そのことを友達3人に話す。話を聞いた友達の一部が、あなたの製品を購入する。

カスタマーサクセスは、
「心理ロイヤルティ」を生み出すための手段

ロイヤルティは一般的に「心理(感情)ロイヤルティ」と「行動(理性)ロイヤルティ」に分けられる。ロイヤルカスタマーも同じように、そうすべきと考える人(行動又は理性の側面)と、そのブランドや商品が好きだからという人(心理または感情の側面)に分けられるが、企業としては、後者の方を大切にするべきである、と本書では述べられている。

心理ロイヤルティを抱いた顧客は高額な商品を買ってくれる可能性が高く、解約や他社との競争にさらされることも少ない。また、何より自社ブランドのアドボケートと化し、二次収益をもたらすことが期待できる。
カスターマーサクセスは、そんな心理ロイヤルティを生み出すための手段にすぎない。

カスタマーサポートとは別れて行動すべき

カスタマーサクセスとサポートは同部署内で展開され、混合されがちだが、目的も、とるべきアクションも両者には明らかな差異がある為、組織内では絶対的に分けて配置した方が良い。

一般的なカスタマーサポートの役割と指標
殺到する顧客の問題に対応、解決する役割を担い、「効率」に重きをおいた指標を用いることが多い。(完了件数/日/担当者など)
一般的なカスタマーサクセスの役割と指標
データで予測することで先回りして顧客の困難を回避するもの、サクセスに導く役割を担い、一般的にはリテンション率で測定する。

CS業務の指標はカスタマーヘルスの点数UP

カスタマーヘルスは、ロイヤルティの明確な指標であるとともに、将来的な顧客の行動の手掛かりにもなる。カスタマーサクセス業務の指標は「カスタマーヘルスの点数を上げること」が一般的、である。指標となる項目は下記などが挙げられる。

(1)総更新数
(2)純リテンション
(3)チャーン
(4)契約金額の増減
(5)サポートへの問い合わせ頻度≒自立度
(6)NSP

一般的なカスタマーサクセスの提供方法

・ハイタッチ
優れたハイタッチ型CSでは、定期的なやり取りと不定期的なやり取りの両方を事前に定めているのが一般的。企業に担当者がつき、1社1社に合わせた個別に対応をする。

< 定期的なやり取りの一例 >
(1)定義されたオンボーディングプロセス
(2)ベンダー内での部署間引き継ぎ
(3)現状確認の打ち合わせ(毎月)
(4)幹部のビジネスレビュー(半年又は四半期ごと)
(5)現場視察
(6)定期ヘルスチェック
(7)更新日前の連絡

・ロータッチ
ハイタッチモデルとテックタッチモデルの混合であり、両方の要素を程よく取り入れるのが良い。タイミングを意識する必要があるが、ある程度パッケージング化した対応が好ましい。

・テックタッチ
できるだけ対応コストをかけずに、一対多に役立つ形で効率的に対応することが好ましい。

< 一対多に役立つチャネルの例 > 
(1)ウェビナー、ポッドキャスト
(2)コミュニティ
他の顧客とアイディアを共有したり、
コミニュケーションを取ったりできるポータルサイト
(3)ユーザーグループ、カスタマーサミット
(4)メールを用いた役立ち情報の発信

カスタマーサクセスの10原則

カスタマーサクセスを実践する上で、取り入れるべき10の原則について

原則1:正しい顧客に販売する
サクセスを進める上で、自社サービスで課題解決ができる顧客にのみ販売をすることが重要。セールスがターゲット以外の顧客に無理に販売をすることがないよう、トップダウンで管理することが求められる。
原則2:顧客とベンダーは何もしなければ離れる
会社の健全性は、顧客を繋ぎ止めてチャーンを防ぐ力と直結している。
本書では、チャーンにつながる具体的な「危険信号」の例と対応策を共有している。
原則3:顧客が期待しているのは大成功だ
顧客は、ソリューションを特徴や機能を使いたいがために購入しているわけではなく、事業目標を達成するために購入している。顧客を大成功に導くために、「顧客はどうやって成功を理解しているのか」「顧客はその価値を達成しているか」「その過程で顧客はどんなカスタマーエクスペリエンスを得ているか」を把握する必要がある。
原則4:絶えずカスマーヘルスを把握・管理する
サブスク型ビジネスにとって、リテンションは生死に関わる問題であり、カスタマーサクセス部門の活動の中心に来るのは、カスタマーヘルスの現状把握と管理。カスタマーサクセス活動を行っていく中で、絶えず、必ず、実行していかなくてはならない。定着率やカスタマーサポートへの問い合わせ頻度など、健全性を計測することで、予測を立てた最善の活動が可能になる。
原則5:ロイヤルティの構築に、もう個人間の関係はいらない
顧客との関係性は、担当者の力量に任せるのではなく、仕組み化する必要がある。顧客の規模や課題に合わせた対応ができるよう、まずはきちんとセグメント化し、セグメントごとに顧客カバレッジモデル(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチなどのモデル)を決めいくのが良い。また、強固なロイヤルコミュニティを構築して、顧客同士を結びつける活動も効果的。
原則6:本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ
顧客のリテンションや顧客満足を高めていくためには、顧客の要望に立ち返り、よく練られた製品と最高レベルのカスタマーエクスペリエンスとの組み合わせが鍵になる。カスタマーエクスペリエンスの仕組み化を考えるとともに、顧客の要望と期待を満たす製品を作り続けるために、カスタマーサクセス部門は社内にフィードバックをもたらし続けなくてはならない。
原則7:タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう
購入後、顧客がサービスの価値を実感するまでの時間をタイムトゥバリューと呼ぶ。サービスの「価値」=成功の指標を定め、早い段階での価値達成に取り組む。(顧客が重視している指標を繰り返し確認をし、共通認識をもつことも重要である)
原則8: 顧客の指標を深く理解する
サブスク型のサービスが長期にわたって生き残るには、チャーンとリテンションの両方を深く理解する必要がある。チャーンとリテンションを定義・計測・理解するための5ステップとして、下記がそれぞれ紹介されている。
(1)計測方法とCMRRの要素を定める
※CMRRとは・・月単位で確認されたサブスクリプションの全定期収益に、現在処理中の契約済み案件と生産段階に入った案件を足して、そこからチャーンを引いた金額
(2)計測期間と頻度を定める
(3)CMRRの予想値とチャーンの種類を決める
(4)チャーンの疑いがある状態とまじかの状態を区別する方法を決める
(5)会社の上層部が足並みを揃えて、チャーンとリテンションの基準となる方法を固める
原則9:ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める
カスタマーサクセス部門の目的と指標を明確にする必要がある。下記のレベルに分けて進めるとわかりやすい。
(1)初期段階:担当者個人の取り組みによって、試行錯誤しながらアクションを継続する
(2)反復できる段階:原理原則を理解し、(1)で成功したアクションを繰り返す
(3)定義された段階:プロセスを明文化し、標準化できる
(4)管理された段階:計測できる
(5)最適化された段階
原則10:トップダウンかつ全社レベルで取り組む
「カスタマーサクセス」は単なる部署名ではなく、理念。導入を「スタート地点」と捉え、いかに長期的にサービスを利用してもらうか、全社を挙げて取り組むべき重要課題である。

まとめと感想

「サブスク型ビジネスでカスタマーサクセスは重要かつ緊急視する役割である」と言うこと。そして、具体的なアプローチ方法や一般的に測るべき指標について書かれていて、その中の一部はすぐにでも取り入れることができそうです。

こうして記事をまとめてみると、「CSの基本」が改めて丁寧に書かれている、と言う印象ですが、「基本事項」について、ぼんやりとしていたイメージを改めて深くインプットできたように思います。特に、自分が重要視すべきと考えていた「顧客ロイヤルティ」について、CS=顧客ロイヤルティなんや!と明文化されていたことで、少し自信がつきました。

また、カスタマーサクセスとは、単なる名称ではなく組織全体で取り組むべき「理念」である、と謳われている点も印象的でした。(考えてみれば、当たり前のことなのですが・・)

今回は「青本」のまとめをしましたが、「赤本」は、弘子ラサヴィさん著のこちら。異動のタイミングで読んだけど、サクセスとサポートの違いやCSのいろは、日本企業のCS事例が紹介されていて、ワクワクした記憶があります。


おまけ:本書で紹介される、CS事例

Apple×スティーブ・ジョブス:ジーニアスバーの開設

スティーブ・ジョブスも心理ロイヤルティが緊急の課題であるこを認識し、エレガントで美しい製品を作るだけでなく、カスタマーサクセスにも多額の投資をした。その一例が、ジーニアスバー。小売店を作ることを決めた時に、店舗に製品を並べて販売するだけでは不十分と考え、店の奥にスペースを作りカスタマーサクセスマネージャー(CSM)を配置した。ジーニアスバーのCSM達は「顧客が自社製品の価値を最大限に引き出せるように手助けする人物」を目指している。ジーニアスバーのメンバーの中には、全くジーニアスでない人もおり、顧客が不満を抱くシーンも少なくないが、ジーニアスが存在して、現実の顧客に接して手助けすること、そして最低限だとしても「関係性を築くこと」自体が心理ロイヤルティーを生み出していると言われている。

おまけ2:本書で紹介されるCS用語

・アドボケード:自社のブランドや商品を熱狂的に支持して使ってくれるファンやファン心理のこと。本文中でも紹介した。

・シェルフウェア:サービスを購入した顧客が、その後使わずに放置している状態をおもしろおかしく表した言葉

・LTV:顧客がある会社との関係を持っている間に使った(使う予定のある)金額の合計金額のこと

・リテンション率:定着率顧客が製品を使う頻度、魅力的な機能を使っているか、利用者は何人いるのか、など「継続率」・「定着率」と同じような意味合い

・トランザクション調査:サービスや商品を介して接触した顧客の総体としての評価を図るため、年に1回~2回行う調査。質問内容は20~25問程度が一般的。

・リレーション調査:サービスを利用した後に行われることの多い調査。商品を買った後やサービスを利用した後など、顧客とサービスとの接点で重要だと思われるタイミングで行う。短期間での調査になるため、顧客にとってストレスが少ない5〜10問の質問数が一般的。

・CSAT(顧客満足度):顧客の満足度を表す。5段階の数値を使う場合がほとんどだが、変えても構わない。トランザクション調査とリレーション調査の両方で使われる

・NSP(ネットプロモータースコア):製品を他の人に勧めたいかどうかの調査によって、満足度ではなくロイヤルティを測る。数値は必ず0~10の11段階。スコアの算出は9~10と答えた割合から0~6と答えた割合を引く。主にリレーション調査

・CES(顧客努力指標)比較的新しい指標。会社との仕事のしやすさを評価する。質問への顧客の同意度合いを1~7段かに分け、「問題は対処しやすかったか」と言う質問に対して「どちらかと言えばその通り」から上の回答者の割合を算出する。主にトランズアクション調査。


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