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非の打ちどころのない正しい言葉は、記憶に残らない

コロナ禍でしんどい時、元日本テレビの藤井アナウンサーの言葉が話題になりました。

今、実家に帰らず一人で家に居る方も、お孫さんに会えず我慢している方もいらっしゃると思います。
このGWに帰省や観光で移動すれば、2週間後に感染者が増えるのは、東京や大阪ではなく誰かのふるさとです。
いつか『今日の感染者はゼロでした』と全国で言えるように、私たちが私たちの未来を変えるGWが始まっています。引き続きご協力をお願いします。

またスキージャンプの高梨選手が服装の規定で北京五輪が失格になった際も、励ましの言葉が話題になりました。

「高梨選手のSNSには謝罪の言葉が並んでいます。
でもスーツの規定違反は高梨選手の『罪』なんかではありません。
自分のことより仲間の人生について思い詰める責任感があるからこそ2回目を飛んだしその責任感がなければ日本代表になるほど自分を追い込めてないはずです。

高梨さんには今、どんな言葉も届かないと思いますが
これまでのあなたの活躍でどれだけ嬉しい気持ちになったか分かりません。
北海道の皆さんのみならず、全国の人があなたを責めたりしていません。
もう、謝るのはおしまいにしてください」

藤井アナウンサーの言葉が多くの人の心を打ったのは「自分の言葉で話していたから」ではないかと思います。

例えば小学校から大学にかけて出会った先生のほとんどが授業中、教科書をただ淡々と読んでいました。その一方で、数人ではありますが強烈に印象に残っている先生がいます。

・イタリア・ドイツ統合の過程を熱っぽく語りまくっていた世界史の先生。
・おうちの植物に歌いかけている歌を披露してくれる音楽の先生。
・「一生に一度でいい、小笠原諸島に行ってみたい」と語る地学の小笠原先生(本名)。

正しいことを静かに語ることが悪いわけではありません。藤井アナウンサーの発言について「アナウンサーとしてどうなのか」と否定派の方ももちろんいたことと思います。
ただどんなに内容が間違いなくても正論は心に響かないように、既定路線というのは印象に残らないものです。

自分の中にほとばしる想い、ルーツ、生まれ持った業。どうしても止められない純粋意欲、葛藤。そうした心の中で起こる戦いのプロセスや、話す方も聴く方も真剣勝負、みたいな命のやりとりは聴衆の記憶に深く刻まれます。

これは文章も同じで「これからは気をつけようと思う」なんて心にもないまとめは読み手に何の響きもありません。朝のニュースキャスターが思いっきり棒読みで「今日は爽やかな陽気で気持ちいいですね」というようなものです。

でも「10年前に口が滑ったことを心から後悔している。だからこれからも気をつけようと思っている」など、心からそう思っている自分の言葉はきちんとこちら側にも届きます。同じ言葉でも「何日も雨が続いて今日は晴れ!いや〜待ちに待った爽やかで気持ちいい陽気ですね!」と実感のこもったキャスターの言葉は共感できるように。

私たちはどうしても誰かに何かを伝える時「正しく、非のないように」を第一に考えがちですが、伝えてもらう側からすると上手くて響かない言葉より荒削りで正直下手でもこちらに響いてくる言葉を求めるように思います。

正しい言葉より、切実な想いは響く。
会社など組織では正しい言葉が第一とされますが、自分の名前で生きていくときは切実な、渇望する想いを表現していく人間らしさの方が、人の心に届くようです。







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今日も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
明日も適当にしっかり、参りましょう。

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