見出し画像

すがやみつる先生を観測しながら生成AIとプロ漫画家の明日を推論する #ゲームセンターあらしチャレンジ

2024年4月30日に生成AIとプロ漫画家のあいだに大きな出来事がおきました。それは、とあるツイートからはじまりました。

当初予想した「つらい思い」

まず最初に「すがやみつる先生がこれやると絶対そのあと若輩が辛い思いする流れになるな…」って直感しました。
(自Discord内で記録を取っていました)

「つらい思い」の理由は以下のとおりです。
・すがやみつる先生は誰よりも技術を使いこなす可能性がある。
・どれぐらい使いこなすかと言うと、教科書漫画を描けるぐらい。
・すがやみつる先生が上手に使いこなしたとすると「ちょっと使える人」からすればつらい思いをするレベルに使いこなす。
・すがやみつる先生が上手に使いこなしたとして、それが反AI派の目に留まると、いかなる形でもネットリンチが始まる。
・(プロの中にも一定数居る)AI肯定派の人々や、関係者の方々が嫌な思いをする
・単に(使う技術に関係なく)画作りを極めたい若手が萎縮する

なお、私は「ゲームセンターあらし」や、その前から書かれていた戦時小説、そして「こんにちわマイコン」からのすがやみつる先生のファンです。


実際に起きたこと

完全にエンタテインメントとして成立していました。
そこそこに味のあるシーン描写を得意とするDALL-E3の実力もあって、なかなか面白い表現がたくさん出てきました。













過去作

余談ですが、Twitterをやる暇がなかったのでそっと描いていた自分の「ゲームセンターあらし・令和女子版」は、こちらのカバーアートにしていました。

ちょっと未来的なゲームパッドと、ロゴがいっぱい入ったeSpors風の野球帽がかっこいいかなと。出っ歯の代わりに上がった口角がお気に入り。

最初から対話する気マンマンだった
すがやみつる先生

プロ漫画家を中心とする表現者が「画像生成AIに描かせた」ということを明示することで起きる、新しい表現の世界。

ここに掲載した画像は(他の方もそうですが)、画像系生成AIに描かせたものであることを明らかにしています。自分が描いたものだとは主張していません。

 また、明らかにどなたかの絵をコピーしたものだとわかれば、掲載しません。違法な画像や個人が特定できる画像についても同様です。

 このような使い方でも問題はあるでしょうか?

 *****

 私はマンガで生計を立てるようになって50年以上になりますが、半世紀もの長きに渡って生き延びてこられたのは、デジタル作画やネットワークなどの新しい技術にも抵抗を示さず、かえって積極的に採り入れてきたからだと信じています。

 それでも、年齢相応に視力や体力の衰えを感じていたこともあり、そろそろ退き時かなと思っていたのですが、ここにきて生成AIを体験したことで高揚感を覚え、新作の構想などにも取り組んでいるところです。

 違法な使い方はもちろん論外ですが、そうでなければAIは、新しい表現を拡張するツールになると考えています。

 20年ほど前には、デジ絵に対する拒否感を示す人もいましたが、いま、メディアの仕事をするうえにおいて、デジタルが使えなければ仕事になりません。生成AIについても、同じようなことになるのではないでしょうか。

https://twitter.com/msugaya/status/1785679826516595021


最初から対話する気マンマンだったのではないかなと推察します
それが証拠に、「ムーンサルト」や「炎のコマ」を自分が頑張って「画像生成しました」という流れではなく、みんなが素晴らしい作品を作って「いいぞもっとやれ」をエンタメとすることで、「本当に面白いものをつくるのは誰か」「他人のアイディアを工夫して表現することによってもっと面白いものが生まれる」を可視化したかったのだと思います。


関連:タイムラインは流れていってしまうから保存…

「漫画家の場合、絵だけでなくあらゆる漫画技術を著作物から抽出、即席的に模倣利用され、自分が手描きで漫画を作る速度の何万倍、何億倍という量産性で自身の作風を利用した漫画が大量生産されるような事態を想定されると肌感覚として分かりやすいのではないか」

 すみません。こんなことが起きたら、痛快で、喜んでしまいそうです(^_^)。おかしいですか? もちろん学習するのは自分の絵と許諾が得られた人の作品だけに限定しますが。

 多くのマンガ家(とりわけ高齢のマンガ家)がAIに望んでいるのは、少し前に「少年チャンピオン」に掲載されたAIによる『ブラック・ジャック』のような方向だと思います。
引用
いかぽん@『朝起きたら探索者~』3巻、2024

https://twitter.com/msugaya/status/1785931382855958545


コメントをありがとうございます。ここには「学習の本質」が潜んでいると思います。

 すでに書いたことですが、私が学んだ教育工学の分野では、絵を描く技能は、話す・歌う・踊る・自転車に乗るなどと同様に「運動スキル」であるとされています。

 その習熟課程のスタートは「模倣」で、その後「巧妙化→精密化→分節化→自然化」という段階を経ます。いろんな「技(わざ)」を身につける課程を考えれば、頷いていただけるのではないでしょうか。日本の「能」の世界で言われる「序破急」にも似ています。

参照:ブルームの目標分類学 (タキソノミー:Taxonomy
https://gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/2Block/04/04-1_text.html

 この技能を身につけていく課程で必要なことは「反復繰り返しの練習」です。当然、長い時間や年月が必要です。

 そのようにして身につけた技術によって描いた絵が、勝手に収集され、無断で使用されることが、フリーライド(タダ乗り)されたと感じ、激しい抵抗感を覚えているのではないでしょうか?

 それはすごく理解できます。自分でもやってきた自覚がありますので。

 ただし、学習されることに対する気持ちの部分と、収益が得られない経済面の部分については、切り離して議論した方がいいとも思います。

 というのも、どんなクリエイターであれ、先達が積みかさねてきた表現や技術が基礎になっている場合がほとんどだからです。この自覚を抜きに権利を主張すると、どうしても傲慢に受け取られてしまいます。

 このあたりも考えたうえで、AIに対する反対や抗議活動をしてください。そうすればAI推進派の人たちも、もっと耳を傾けてくれるように思いますし、どのような方向に進めたらいいのかといった対話も可能になるかと思います。

https://twitter.com/msugaya/status/1786281460586225897

そもそも漫画におけるパクリとは


パロディに関連してですが、島本和彦さんとマンガのパクリについてトークイベントをしたことがありました。そのときのスライドを紹介します。

https://twitter.com/msugaya/status/1744297777897828509

これは資料価値が高い…



もちろんこういう意見もわかる

すがやみつる先生は反AIの方々でも一定のディスカッションになりそうなツイートはリツイートされています。
私も「反AI」を標榜されている方の意見も視界に入ったら拝読しています。
ただ攻撃的な方は御免ですし、私がいいねしたりリツイートしたりすると要らぬ軋轢も衝突も摩擦も生まれるかもしれないので、祈りながら拝見しています。

これはタイムラインで見かけた貴重なご意見です。

まとめ:バンザイしているわけではないし、絶望させたいわけでもないと思うけど

こちらの講演でも発言させていただきましたが、
描きたいひとは手で描くと思います。
私もブログはLLMを使わずに書いています。年間700本。

若者は「努力したいんだ」と思います。それは自由です。
正確には「努力して、その先にある何か」を手に入れたい。
多くのおじさんたちは「努力は大事」としか言わないけど、「それって楽しかったんだよね」ってちゃんと伝えましょう。
1行で表現すると……

若者は努力……の先にある「ワクワク」を求めている。

これを尊重していけるといいですよね。

努力も学習もしたくないひと…は、いち読者、いち消費者として外野でどうぞ、という感じではあります。

そのような方々は「そもそも作品を消費している」のであって、作者様が著作者人格権を振りかざせば振りかざすほど、作品には関係のない「想い」が見え隠れしてしまいます。
作品によってはそのような作家性の現れが好ましくない作品があります。

「すごい作品を読みたい」けど
「どうやって作ったか」について知る必要はない、そんな優しさも作家には必要では?と思うのです。


予想:8月ぐらいには景色が変わっているはず

理由:このペースで議論が進むと以下のような現象がおきると予測します

・この調子で現役プロ/プロシニア層がどんどん生成AIのプロ漫画へのパイプラインに組み込んでいく
→大手出版社などで連載中の有名な作家さんが、陽のあたる場所での活動として生成AIを当たり前のように使っています。
(実際にそういうお仕事をお手伝いしている側なのでこれは確かな実感)

・同人界隈で、もっと邪悪な作品が出てくる
→具体的には表紙から中まで全編画風完コピ、ルール無視のどちゃくそエロい二次創作が出る。しかもかなりしっかり売れていることが可視化・認識される
→それを見た真面目に同人を描いている、例えば「どちゃくそエロい二次創作(グレーゾーン、もしくは限りなくアウト)」をやっている人たちの中で「おれたち人気になりたいんだっけ派」と「俺は描いて楽しみたい人と楽しみたいんだ(原理的同人)」が内部分裂を起こす

・真面目に「反AI」を掲げている人たちが溶けてなくなる
→お気持ちはわかるけど、お気持ちを理解されたあとに何かが残る要素や対話可能な組織がなにかあるのかなという視点を持っています。

・炎上愉快犯が飽きる
おめーらいいかげんにしろよルサンチマンが
 小中学校の教室、街のプログラミング教室でお子さんたちや、シニア向けアート講座などでこれらの技術が当たり前に使われる時代がやってくるので、そこに石を投げたり油を注いだりしている人たちがどんな存在なのか、自省が効いているひとはそろそろ飽きると思います。

・プロの炎上屋が摘発される
 KDPなどで明確に足はつくので、いままでの積算被害額をベースに訴訟、そこから反社会的勢力への資金流入などが明らかになる。

・国際的なツールでの標準化が進む

たとえばAdobe Max 2024が10月にマイアミビーチで開催されます。

この頃には Adobe Stockでの合法なクリエイター収益エコシステムの規模も可視化されるだろうし、C2PRや、PremiereでのOpenAI Soraなんかも出てくるので、そろそろ日本の炎上愉快犯が、「ただの過去のガラパゴス的な笑い話」になっちゃうフェーズがやってくるんだろうなと思います。

企業やプロの方々が学ぶフェーズです。
私の会社では、プロの方々からの画像生成AI活用のお問い合わせは毎日のように受けていますし、みなさんが気が付かないレベルでの「不可能を可能にする成果」も出始めています。

「誰も職を失ったりは、しない」そういう強い意志が持てるクリエイター三たちに向けて、慎重に導入を進めています。

以下はAICUのお仕事関連の紹介です

すべきでないこと

  • 他者の迷惑になること。

  • 技術的な可否と法律上の可否とマナーやモラル、過去の常識やリスクや感情を混ぜて混乱させること。

  • (スキルがあるからといって)他者の作品を上から目線で批判すること。

  • 画像生成 AI だから安いとか、自動だとか、無償で何かを作れるとか「楽して儲かる」など世間を誤解させるようなこと。

すべきこと

  • 楽しむこと。作品を作る情熱を持ち続けること。

  • わからないことは自分で調べて、共有し、コミュニティや Issue で共有すること。

  • あいさつ、返事、お礼、質問を具体化、質問時は「わからない」だけでなく詳細な情報、進行具合を報告するなど誠意、他者に対するリスペクトや理解する姿勢を持つこと。

  • 「ぬくもりティ」だいじ。オープンソースコミュニティの開発者には敬意をもって接しよう。


後日談

ほんとお疲れが出ませんように…

この年齢まで生きてきた巨匠の方々を顔も見たことない個人が、つぶやき程度で考えを変えることもないだろうし、「俺にも言わせて」のついでにタコ殴りにしている状況、よくないですね。

最初はすがやみつる先生や森川ジョージ先生を推していた彼らが手のひら返して「ガッカリした」「見損なった」「もう買わない」みたいな事を言ってるのですよね…。

我田引水したい気持ちはわかるけど、巨匠の威を借りたって、手を動かすなり、魅力的なお仕事を提案するなり、原稿料をお支払いするなりしないと、ただのかまってちゃんでしかないですよ。

粘着するなら、作品と著作者の人格、その後の人格まで愛してねという気持ち。

私自身やっぱり辛い思いをする

私に対して粘着してくる方がいらっしゃったんです。なんというか稀有な才能ですね。

普段、生成AIを学びたいプロの漫画家さんに接しているように、書籍を買って読んでいただいて、それでもわからなかったり、分かりづらかったり、より多くの読者にとって糧となる交流の機会があれば、参じていって教えて欲しいことは教えていますが、殴られるような事はしていないつもりなんですけど。

⭐️もちろんまだまだプロの漫画家のお客さんと生成AIの理解者には隔たりがあるから、静かに静かに進めている面も多くあります。

最初は無視しようと思いました。
無視するのがいちばんいいですよね。
無視してました。

でも私も傷つき、そして作品が作れなくなりました。予定の時間がこの議論で精神と時間を持っていかれる。クリエイターとして恨みの気持ちを持ちました。どうしてこんな攻撃的な気持ちを抱けるんだろうって。

Twitterのフォロー/非フォローで知り合いの大学の先生がいらっしゃったので、相談して打ち明けてみたんです。辛い、苦しいって。

そうしたら、なんと。その人の卒業大学や学科、人となりも見えてきたんです。
設定しているアイコン、ID、過去のつぶやき、
大学の課題、生成AIを使って成果を上げる同期、キラキラした就職先に行く彼ら…。

こんなふうに他者への怨恨で非論理的で非破壊的な気持ちを抱いてしまうのは仕方ないですよね。
恨んできたのは本人だし、学んでこなかったのも本人ですが、選んでその人生なんだし。

社会人なら自分のやったことや発言には責任を持たねばですね。
せっかく就職できたのに、刑事事件で告発されたり、知らないうちに上司や同僚から距離を置かれたりしたら、かわいそうだけど…学んでこない人が選んだ人生ですよね。
私はこの2年で何冊も本を書いて毎日ブログを書いてきたけれど、この人は他者の攻撃に人生の限りあるリソースを使っているんだから…。

好きなら指くわえて石投げるより
はやく楽しんだ方がいいんだけどね


でも私自身も反省しているので髭を落としました。

ちょっと気になっているのは、この手のアカウントさんたちが「いいね」している先に「反AIによるAI肯定派へのリンチ」とか「それを娯楽にしていい」と言っている方々とか、陰謀論とかで活躍する情弱ビジネスの手法が見え隠れしているところですね。まあでも論理的に物事を捉えたくないんだからそれも仕方ないか…祈ります。


愛を持って続きます

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?