あれが〇〇の真の姿だ
たとえばひとつの石がある。
室内で見るとき、日光の下で見るとき、暗闇の中で見るとき、サングラス越しに見るとき、それぞれ異なる色をしている。
どれかひとつ本当の色というものがあって、それ以外は偽物の色なのだろうか?
ある人物が、それまで自分の思い描いていた人物像とかけ離れた言動をしたとき、
「本当はこんな人間だったのか」
「今まで見せていたのは偽りの姿だったのか」
と嘆き、それまでの評価を180度転回する者は少なくない。
だが人間も石と同じように、時と場合によってさまざまな色になる。
どんなに優れた人格の人間であっても、程度の差こそあれ、卑劣さや愚かさや残酷さを持っている。
(もし自分は違うと思う者がいるとすれば、それは自分を真剣に見つめたことのない人間だろう)
ある場面の、ある言動だけを切り抜いて
「あれがアイツの真の姿だ」
と判断するのは、日光に照らされた石を指して
「あれがあの石の真の色だ」
と判断するのと変わらない。
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