yoasobiと髭ダンと水彩の森
私は絵を描くときにあまり音楽を聞かない
歌詞があることで、思考が邪魔される。
特にデッサンをするときには無音でないと難しい。
しかし最近、彩色の時yoasobiや、Official髭男dismや藤井風なんかを聴くようになった。
昭和の終わりから平成の初めの頃に青春時代を送ったくせに、当時の音楽は好みではなく比較的最近の曲の方を好む。雑な感想だけれど平成期のJポップは音がロック調でも歌詞が演歌みたい。“俺とお前“、“君と僕“、“私とあなた“ の世界が重苦しいと感じていたのかもしれない。
そしてこれも私の雑な主観だけれど、最近の流行りの歌は、恋の歌にしてもあまりネチネチしていなくていいなって思う。表現が抽象的というか両義的というか、いくつかの意味を読み取れる[余白]がある気がする。だからなんとなく作業のお供に聞いても邪魔だと感じずに思うようになった。
私が水彩を描くのはひとえに風景画を描いてみたいからなのだけれど、しばらくは独学で描いていてそれはそれは酷いものだった。振り返るだけで10階のビルから飛び降りたくなる恥ずかしさだけれど、あえて載せる。
2013年から野村重存先生の教室で水彩画を習っている。最近はテレビのお仕事でお忙しくて、盛岡にいらっしゃるのは年に一回ほどになってしまったが、先生のおかげで前よりも風景が楽しく描けるようになった。
風景画といっても都市もあれば田舎もある。
その中でも木や森っていうのがとても難しいと感じる。
森や林の葉っぱを描くとき、手首を動かしながら筆を回すように動かす。「こちょこちょてんてん、くねくね」って感じのリズムで描く感じ。
葉は密集しているが、単なる点の密集ではない。でも密集には違いない。複雑だが、複雑に書きすぎると急にその部分だけ人工的になる。
画面での効果を意図して描かないといけないのだけれど意図が透けて見えるとわざとらしくなり自然さが失われてしまう。写真を完全に模写したものは細密だけど「自然でさりげない風景」にはなりにくい。正直いうと建物を描いた方が楽だと思う。複雑だったとしても人間が作ったものだから時間をかければ描ける気がする。
木や森はいつもさっぱりうまくいかない。
ところで、ある時気がついてしまったのだけれど、森の葉っぱの茂みっぽいところを描く時、たとえば130-170bpm (1分間当たり130拍から170拍)の曲をかけると、「こちょこちょてんてん、くねくね」がうまくいく発見をした(個人の感想)。
yoasobiの「群青」とか「祝福」のあたりが結構良い。髭ダンの「SOUL SOUP」なんかがピコピコ加減と疾走感っていうのかな、スピード感がちょうど良くて、気持ちよく彩色できる。(藤井風は若干テンポがゆっくりなので、茂み描くときは遅く感じる)。
しかし花の細密な仕事をしているときはだめ。最近植物画を描いているけれど、バッハの平均律とか定番で心が乱れないやつを聞くとかしている。バッハはほんとに作業の邪魔にならない。困った時はバッハ。やる気があってもなくても細密作業はバッハ。
人物ドローイングでは今のところ全然音楽を聞かないけど、テンポが良くてガリガリしたやつが合いそう。シカゴハウスとか。あ。あと、色使う時はヘヴィメタとか良さそう。不思議とジャズは好きだけど、いろんなアドリブが入るせいかテンポが乱れる感じがする。
今まで無音で描いていたのでちょっと面白い発見だった。
こうして音楽を聴きながら描く話を書いていて、「ああ、絵を描くというのは全身運動なんだな」って改めて思ったりしている。
マチスの「ダンス」(MoMA所蔵)っていう絵があるけれど、マチスも音楽をかけながら踊って描いたりしたのかな。当時はレコードも高価だっただろうから「音楽と共に描く」っていうのはなかっただろうけど想像してみると面白い。絵にも音楽にもリズムがある。
考えてみれば茂みも葉っぱも1つ1つリズムだ。
枝葉のリズムに乗って風にそよぐ感じを描けたらいいなって思った。
しかし残念ながら季節は冬である。
風にそよぐ森の、煌めく緑を見るには春まで待たないといけない。
早く外に行って試してみたいと思った。
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