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3dsmaxでアニメの背景美術を作ってきた ~歴史編~

最近はアニメ背景美術業界でもblenderやUE4などを活用した先進的な事例が見られるようになってきた中ですが、この記事では地味に3dsmaxでTVアニメの背景美術の仕事をしてきた際に使った技術などを、記録的な意味も込めて紹介していきたいと思います。

私が10年くらい前に初めて触った3dsmaxのバージョンはたしか3dsmax9で、3dsmax2010からTVアニメの背景美術作成の実務で使用しはじめ、現在は3dsmax2019~2022あたりを利用しています。

3D背景モデル(シーン)の作成において、モデリングに関しては昔も今も大きく変わったという印象はあまりありません。一方、大きく変わったと感じるのは「マテリアル・ライティング・レンダリング」の部分です。

3dsmaxでのレンダラー活用史

私は背景美術用のレンダラーではCoronaレンダラーが他より使いやすくて気に入っていて、ここ数年主に使用しています。ただ最近久しぶりにArnoldやVrayを触ってみたところ、以前より随分と使いやすくなった印象でびっくりしました。レンダラーは日々進歩していると感じます。

https://corona-renderer.com/getting-started/first-steps-in-3ds-max

3dsmaxのデフォルトレンダラーは今でこそArnoldのようですが、以前は「スキャンライン」がデフォルトで、アニメの現場でもスキャンラインが多く使われていたと思います。(もしかしたら今でも、、)
一説ではいわゆる「セルルック表現」に適したPencil+プラグインの存在があったのでアニメ業界で3dsmaxが多く使わるようになった、という話を耳にしたりします。

https://www.psoft.co.jp/jp/product/pencil/3dsmax/

この「Pencil+が3dsmaxのスキャンラインでしか使用できない」ということから、昔からアニメ業界では3dsmaxのスキャンラインがよく使われていたように思われます。今ではMAYAやUnityでもPencil+が使えるようになったので、選択肢の幅が広がったようです。
また、最近知ったのですが、3dsmaxでVray使用時でもPencil+のラインが出せるようでした。詳しい挙動はわかりませんが、初めて試してみたところ確かにVrayでもPencil+のラインが出せました。

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アニメの背景美術の仕事では、「美術設定」は白黒の線画で起こすことが多いため、3dsmaxで美術設定用の背景モデルを作成した場合はこのPencil+で線画を出すと便利でした。簡易な設定で交差線など含めてきれいなラインをすぐに出すことができます。
特に「Pencil+4」のバージョンになってマルチスレッド対応になってからは、ラインのレンダリングが一瞬で出来るようになり驚いた記憶があります。今現在でも、例えば現状のblenderで線画を出す際の精度・手間・速度と比べると圧倒的な違いがある、という印象があります。
とはいえ、設定用の線画を出すだけのために購入するにはやや高価なプラグインであるとも感じます。10年くらい前は3dsmaxでまともな線画を出すにはPencil+以外選択肢がなかったのですが、今ではArnoldのtoonシェーダなどでもラインを出すことが出来るようになったようですね。

https://docs.arnoldrenderer.com/display/A5AF3DSUGJPN/Toon

以前はPencil+が使えない場合は、やむなくスキャンラインに元々あるToon用マテリアルの「Ink'n Paint」マテリアルを使用して線画出しをしていたこともありました。あまり使い勝手は良くなかった印象があったのですが、試しにすごく久しぶりに「Ink'n Paint」を使用してみたところ、意外にきれいに速くラインが出たように感じました。10年前はもっと重くて使いづらかったような、、、マシンスペックのほうが進化したのでしょうか。簡易に線画を出してレタッチする用途なら「Ink'n Paint」でも良いのかもしれません。

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あとはMental Rayでtoom調で出す方法もたしかあったような気がしますが忘れてしまいました、、。当時Mental Rayでのレンダリングもかなり重かったので、なかなか頻繁には使えなかった記憶があります。アニメ背景の現場はとにかくスピードが大事ですので「一枚のレンダリングに一晩」などはちょっと実用的でないという印象でした。
なので、いかに「スキャンライン」と「Pencil+」を工夫して使ってアニメ背景調に寄せたルックでレンダリングをするか?という創意工夫が各所で繰り広げられていたのではないかと想像します。

つづきの記事では、そのようなもろもろの創意工夫について書いていくことができたらと思っております。

【追記】続き記事です


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